第37話 召喚蜘蛛と魔道具発明家・中編
冒険者ギルドで見つけた怪しい男を追う為、
シャルンと別れ1人・・・後を着けて行った・・・。
(ったく・・・寝付けないから朝の散歩と洒落込んだだけだってのに、
何でこんな事に巻き込まれてんだよ~?
あっ!?も、もしかして・・・お、俺って巻き込まれ体質なのかっ!?)
ユウナギはそう独り言をブツブツと言いながら、
男と一定の距離を保ち尾行していたのだが、
よりにもよってこんな時に、会いたくない人に出会ったのだ・・・。
「あら~?ユウナギちゃんじゃないのよ~?」
「・・・ぬぉっ!?」
突然背後から声をかけられたユウナギは驚きの余り、
数十センチほど浮き上がった。
恐る恐る振り返ると、そこに居たのは・・・
「なっ!何だよ~・・・誰かと思ったら、
オカマ・バー「カマ・バサミ」のフーシュンさんじゃないっスか~?
こんな朝っぱらから・・・どったの?
店潰れた?それとも~・・・ま~た男にフラれたの?」
※ 説明しよう・・・。
このルクナの街でオカマ・バーを経営しているママさん。
身長2.20cmのガチムチで、元・Aランクの冒険者。
武器は両手鎌と言う、冒険者の中でもとても斬新な武器を手に、
魔物や魔獣を狩りまくっていた凄腕の冒険者だったのだ~。
因みにだが・・・。
フーシュンさんは数カ月前、このルクナの街に越してきたので、
俺の正体は知らねーんだ。
説明終了っとっ!
「ちょっとぉ~♪私の店が潰れる訳ないでしょ~?
いや~ねぇ~♪
そ・れ・に~♪彼氏とは順調に愛を育んでいるわよん♪」
「へいへい・・・そりゃ~良かったっスね~?」
渋い顔をしながら心の中で、(朝からとんでもないヤツに捕まったな~)っと、
そう思っていると、フーシュンがユウナギの背後を見ながら質問してきた。
「ところでユウナギちゃん?
あんたこそ、一体こんな朝早くから一体何やってんのよ?」
「・・・あっ、忘れてた」
慌てたユウナギは背後を振り返ると、
尾行していた男が不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
「げっ!?・・・って言うか、
まぁ~バレるはずないから別にいいんだけど・・・」
頭を掻きながらそう呟くと、フーシュンが視線だけを下に落としながら口を開いた。
「・・・あんたひょっとして、その男を尾行してんの?」
「まぁ~ちょっと今は説明出来ねーがな?
訳あってあいつを着けてんだよ・・・」
「ふ~ん・・・それでスキル使ってるって訳ね~?」
「あんなヤツに俺の隠ぺいがバレるって訳がないんだがな~。
まぁ~そんな訳だからさ、
フーシュンさん、また今度店に寄らせてもらうわ~」
ユウナギは背後に居るフーシュンに掌をヒラヒラとさせると、
その場を後にして立ち去った・・・。
「ちょっっっとっ!待ちなさいよーっ!」
・・・ユウナギは立ち去れる事が出来なかった。(乙)
「ガシッ!メキッ!ゴキッ!」
「ぐおっ!?」
フーシュンはユウナギの頭を鷲掴みにしたためその怪力によって、
嫌な音を立てながらユウナギの首が曲がったのだが、
背後に居た男に気を取られていた為、
それに気付く事なくフーシュンはユウナギを無理矢理に引き寄せた。
「ちょっと待ちなさいてっーのっ!
あの男・・・最近この辺りでよく見かけるわね・・・」
「・・・・・」
「って・・・ちょっとユウナギちゃんっ!?
私の話を聞いてんのっ!?・・・って、あ、あれ・・・?
ユ、ユウナギ・・・ち、ちゃん?
・・・く、口から魂がぁぁぁっ!?
い、いやぁぁぁぁっ!ユウナギちゃんの首がぁぁぁぁっ!?
あ、在らぬ方向にぃぃぃぃっ!?
い、一体な、何がぁぁぁぁっ!?」
ユウナギの首が在らぬ方向に折れ曲がっているのだが、
その原因がまさか己である事には気付かなかった。
それどころか・・・。
「ユ、ユウナギ・・・ちゃんっ!
よ、よくも私の可愛いユウナギちゃんをっ!
お、おのれぇぇぇっ!
い、一体誰が私のハニーを殺ったのよっ!?
オカマの名誉の為にも、こ、この私がっ!
ルクナの「白い恋人」こと、フーシュンが絶対に犯人を見つけてやるっ!
「じっちゃんの・・・。じっちゃんの真実はいつも1つ!」
ユウナギを抱きかかえながらそうドヤるフーシュンの顎に、
突然強烈な打撃を喰らった。
「ベキッ!」
「うがっ!?」
「ドーン」と言う音が響く中、倒れ込んだフーシュンの周りに土煙りが舞っていた。
「い、痛いわねーっ!?
一体誰がやりやがったぁぁぁっ!ぶっ殺すぞぉぉぉっ!
おらぁぁぁぁっ!さっさと出て来いやぁぁぁっ!」
顎を押さえながら上半身を起こしたフーシュンが怒鳴ると、
目の前には首が在らぬ方向に曲がったユウナギが、
薄気味悪い笑みを浮かべ立って居た。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?お、お化けぇぇぇぇっ!?
チャ、チャダ子が・・・で、で、で、出たぁぁぁぁぁっ!?
うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
※ 再び説明しよう・・・。
チャダ子とは、この世界に恐れおののかれている魔物で、
基本的に井戸に住んでいる。
姿を現す時は、住居である井戸を自力で登り、
井戸から出た途端・・・這いずって来るのだっ!
そ、その時速はなんとっ!120kmにもなるのだーっ!
ここで注意点として伝えておくぞ~?
チャダ子は決してっ!ジャパニーズ・ムービーの・・・
あのっ!す、素敵な女性ではないので、
そこんところ・・・間違えないようにっ!
いいか~?コレ・・・テストに出るからな~?
ってなことで、説明終了っ!
「誰がチャダ子だっ!誰がっ!?失礼なオカマだぜっ!」
「・・・えっ!?
だ、だって・・・あ、あんた・・・く、首がっ!?」
「・・・首?
あぁ~・・・忘れてた・・・。
どうも視界が変だと思ったぜ~・・・あらよっと♪」
ユウナギは両手で自らの頭を掴むと、
「ゴキッ!」と音を立てながら、首を正しい位置に戻し始めた。
そして「ゴキッ!バキッ!」とまたしても恐ろしい音を立てながら、
首を正しい位置に戻すと、顔を盛大に引きつらせているフーシュンに、
引きつった笑みを見せていたのだった。
「・・・あわわわわわ。
あ、あんた・・・ど、どうやって治したの?
って言うか、どうしてあんな状態で生きてんのよっ!?」
「・・・俺を勝手に殺すんじゃねーよっ!
まぁ~、どうしてって言われても困るんだけどよ~?
ん~・・・まぁ~、気合・・・的な?」
「き、気合的なって・・・。
気合でアレがどうにかなるなら、回復魔法なんてモノはいらないわよっ!?」
「まぁ~そこを何とかするのが、この俺・・・
嵐をたまに呼んじゃう風雲児・・・的なぁ~?
ってな事で、俺なら何とか出来んのさ♪」
ドヤ顔を見せるユウナギに呆れ押し黙ってしまうと、
何故か急に怒り出し、再びユウナギから怒声が飛んで来た。
「つーかよっ!そんな事はどうでもいいんだよっ!
やいっ!フーシュンっ!
さっきから人が黙って聞いてりゃ~いい気になりやがってよ~?
フーシュンっ!やいっ!このビッチっ!」
「ビ、ビッチっ!?」
「いつ誰がてめーのモノになったんだよ・・・あぁ~んっ?」
「え、えっ・・・と・・・だ、だって・・・。
こ、こんな時じゃないと、い、言えない事じゃない?
だからこれを利用して、私とあんたが恋人って事を~
周りにアピールしておけば~・・・
あんたの周りに居る小娘共に一泡吹かせられる的な~?
な~んてな事を思っちゃったりなんかしちゃって~♪」
そう言いながらフーシュンは、握り拳を口へと持っていくと、
所謂・・・ブリっ子ちゃんポーズを取って見せた、
「・・・それって、ボクシングのファイティング・ポーズか?」
「ファ、ファイティング・ボーズっ!?」
「い、いや~だからよ~?
筋肉マッチョのごつい身体したオカマの化物にそんなポーズされたらよ~?
誰だってボクシングのピーカブー・スタイルに見えちまうだろうが?
それともナニか~?
今からデンプシー・ロールの練習でもしようってか~?」
「ち、違うわよっ!?
だ、誰が好き好んでピーカブーのポージングなんかすんのよっ!?
おまけにデンプシーなんちゃらなんて、する訳ないでしょっ!?
こ、これは~、私って、か、可愛いでしょっ!って、アピールしてんのよっ!」
「アピールって、全然アピールしてねーよ?どこがだよ?
むしろ見せられた側にとっちゃ~、威圧以外何者でもねーわっ!
つーか・・・全然可愛くねーよっ!
それどころか・・・キモいし、怖いし・・・恐怖でしかねぇーよっ!」
「・・・きょ、恐怖って・・・ひ、ひどいっ!」
「こんなの全然ひどくねーよ~?
てめーに比べたら俺の物言いなんて、神からの真言に等しいからね?
いやまじでっ!もうそのなんだ~・・・俺の言葉が神っ!
とか思っちゃうくらいだからね~?
それよりもよ~?・・・てめーはさっき、とんでもない事言ってたよな~?
何だっけ・・・?
ル、ルクナの「白い恋人」とかそんな事言ってたよな~?」
「・・・「ルクナの白い
い、言ったけど~・・・それがどうしたのよ?
この街に私以上の美白なんて居ないでしょ?」
「あ、あのな~?まじで言葉の響きがキモいんだよっ!
ルクナの「白い恋人」っだってっ!?
てめーが言うと全然違う意味に聞こえんだよっ!
それになんだ~?
てめー以上の美白って・・・フーシュンさんよ~?
バカな事言っちゃいけねーぜ~?
てめーのは美白つってもよ~・・・それ石灰を塗りたくってるだけだろうがっ!」
「せ、石灰なんて誰が好き好んで使うのよっ!
わ、私が使ってるのは、「死線童のBAKU」よっ!
そ、それに違う意味の「白い恋人(こいひと)」って・・・
い、いやん♪ユウナギちゃんたら~♪こんな大勢の前で~♪
しかも~・・・こんな朝早くからなんて事を~♪うふん♪」
「ん?今最後に・・・「バフン」つったか~?
まぁ~「馬糞」ならそれはしょうがね~な~?
でもな?
ま、まじでキモいんでそう言うのやめてもらっていいですか~?」
「馬糞じゃないわよっ!?「うふん♪」って言ったのよっ!?
一体あんたどう言う耳してんのよっ!?
そ、それに・・・あんた、ま、またキモいって言ったぁぁぁっ!?」
ヨヨヨとしなだれ地面に座り込むフーシュンに、
ユウナギは盛大に顔を引きつらせながら更に言葉を続けた。
「だいたいてめーっ!
さっき更にとんでもねー事を言ってたよな~?」
「・・・さ、更にって・・・こ、今度は一体なんなのよっ!?」
「な、なんだっけ?お、思い出すのも嫌なんだが・・・。
た、確か「じっちゃんの・・・。じっちゃんの真実はいつも1つっ!」って、
どこかで聞いた名ゼリフを吐きやがってよーっ!?」
「べ、別にいいじゃないっ!
わ、私のオリジナルなんだからっ!」
「よくねーよっ!どこがオリジナルなんだよっ!
つーかよ~・・・。
そのセリフ・・・色々と混ざってんだよっ!
しかもっ!じっちゃんの真実はいつも1つってっ!
もはや意味わかんねーよっ!」
そう怒鳴りつけたユウナギに、
何故かメラメラと瞳の中の炎を燃やしたフーシュンは、
勢いよく立ち上がると拳を「ベキバキ」と鳴らしながら怒りに震えながら叫んだ。
「そのセリフの一体どこが悪いってのよぉぉぉっ!?
あぁ~んっ!?
私のじっちゃんの真実は・・・。
私と同じオカマだってぇー事を宣言しただけじゃないのよぉぉっ!」
「・・・せ、宣言してんじゃねーよっ!
でも、まさかの・・・ま、まさかだよな~?
てめーの一族がまさか・・・オカマが遺伝だったとはっ!?」
「そ、そうよっ!先祖代々からの遺伝なのよっ!」
「あぁ~・・・遺伝だったのか~・・・って、ボケェェェェっ!
どんな遺伝なんだよっ!?
よくそんな家系で子孫残せたよなっ!?
アレですか~?ひょっとして、お相手はオナベでした~とかっ!
そんな家系が何代も続いてたまるかっ!?
どんな呪いだよっ!どんなっ!?」
ユウナギがそう発言した時、フーシュンは何故か唖然とし、
真剣な眼差しを向けて来たのだった・・・。
「・・・ユ、ユウナギちゃん・・・どうして私の家系の事、
そんな詳しく知ってんのよ?
ま、まさかあんた・・・わ、私と血が繋がって・・・」
「繋がってねーよっ!?
そんな恐ろしいモノと繋がってたまるかよっ!
い、いやでも・・・ま、まじ・・・だったのか・・・(南無)」
と、言う正直どうでもいいようなトラブルがあり・・・。
周囲に居た見物人達の仲裁があってですね・・・。
めでたく和解したのですが・・・。
ってな事で皆さんまたまたお会いしましたね♪
この話のナレーションを務めます、香坂 三津葉 25歳独身です♪
あっ、それと只今・・・彼氏募集中で~す♪
「おっ、おいっ!ナレーションのねーちゃんよ~?」
は、はいっ!?
ユ、ユウナギさん・・・何ですか?
「てめーの自己紹介なんざいいからよ~・・・。
とっとと話を進めてくれや~?
もう軽く大量の文字数を使っちまってんだぜ~?
いい加減本筋に戻さねーと、読者様方がお怒りになるじゃねーかっ!」
は、はいっ!わ、わかりましたっ!了解でありますっ!
香坂 三津葉25歳独身、只今彼氏募集中は仕事に戻りますっ!
「い、いや・・・いちいちぶっ込まなくていいからな?」
と、言う事で、本編再開致します♪
「げっ!?あ、あの男・・・い、いねーじゃんよっ!?」
ユウナギが辺りをキョロキョロと見渡しながら、
再び盛大に顔を引きつらせたのだった。
「あの男って・・・さっき居たあの長身の?」
「あ、あぁ、そうだよ・・・。
てめーに突っ込み入れてたら、見失っちまったぜ・・・」
ユウナギは項垂れて「あぁ~、どうしよ?」とブツブツ言い始めると、
「それなんだけど~・・・」と、フーシュンが話しかけて来た。
「な、なんだよ?」
「あの男って最近この辺りでよく見かけるわよ?」
「ま、まじかっ!?」
「え、ええ・・・。
この街の城壁の外に無許可で商売している連中がいるじゃない?」
「あ、あぁ~・・・でも確かその連中って、みんなとっ捕まっちまったんじゃ?」
「あんな連中なんてしぶといからすぐに湧いてくるのよ~。
でね?その無許可の連中の中に~、
あんたが尾行してたあの男が居たと思うんだけど?」
「・・・ほぅ~」
ユウナギはフーシュンの話を聞くと、その場で考え込んでしまったが、
すぐに視線をフーシュンへと向けると、
「サンキューっ!助かったっ!」と言葉を残し立ち去ろうとした。
「ちょっと、ユウナギちゃん・・・どこに行くのよ?」
その言葉に立ち止まったユウナギは「why~?」と口にした。
「ほ、ほわ~い・・・?って・・・?
ま、まぁ~いいわ・・・。
あの長身の男が向かって行ったのは真逆でしょ?」
「・・・あっ、そっか・・・。
でもどうして真逆に向かったんだ?
まぁ~でも、そのうち外壁んとこに戻って来んだろ?
とりあえず城壁の外で待ってみるしかね~な?」
「やれやれ」と言うそんなポーズをして見せたユウナギに、
フーシュンはニヤリと笑みを浮かべた。
「ふっふ~ん♪こんな事もあ・ろ・う・か・と・思って~♪
ジャジャーン♪コレな~んだ?」
フーシュンはそう言いながら、ものごっっっつい手を広げて見せると、
「・・・凶器?」と真顔で答えたユウナギは、
気が付けば頭から地面に埋まっていた。
「い、痛い・・・誰か・・・た、助けて・・・」
地面から無事引き抜かれたユウナギは正座しながらフーシュンの話に耳を貸すと、
その手の中にキラキラと光る糸が見えた。
「・・・それって、何だ?
ひょっとして・・・蜘蛛の糸か?」
「ええ、そうよん♪
そのタネ明かしをしてあげるから、 ユウナギちゃん見ててよ~♪
フッ・・・召喚っ!ラブ イズ スパイダー♪」
このセリフを発したその瞬間、
地面にピンク色の妖しい魔法陣が浮き上がると、
強烈な異臭を放ちながら、その何とも気持ち悪い魔法陣の色合いに、
周囲に居た人達が一斉に嘔吐したのは言うまでもなく、
その後の清掃のおばちゃん達が大変だったとか・・・。
そしてフーシュンが召喚した一匹の蜘蛛が姿を現した時、
ユウナギの片眉がピクリと吊り上がった事に気付かず、
フーシュンはご機嫌に口を開いていった・・・。
「さぁ~♪ユウナギちゃん♪
私が召喚したこの蜘蛛・・・あ・げ・る♪うふっ♪
だからこの蜘蛛の糸を辿ればあの男はすぐに見つかるはずだから、
案内してもらいなさいよ~♪」
そう言いながらユウナギの手の中に黒で赤いラインが入った蜘蛛を降ろすと、
ユウナギはその蜘蛛の背中を見て、青筋をたてながら怒り始めた。
「あげるって・・・あ、あのな~?
つーか・・・おいっ!こらっ!フーシュンっ!」
「なっ、何よっ!?
また急に・・・い、一体今度は何に怒ってんのよっ!?」
「な、何にってっ!?
いくらてめーが召喚した蜘蛛だからってよ~?
蜘蛛の背中に紫色で「LOVE」なんて文字書いてんじゃねーよっ!」
「べ、別にいいでしょっ!?わ、私の蜘蛛なんだからっ!
そ、それにその文字は暗闇でも飼い主にしか見えないようになってんのよっ!」
「そんな事知らねーし、いい訳ねーだろっ!?
動物愛護団体からクレームが来るだろうがっ!」
「飼い主しかわからないんだから他所様は関係ないでしょっ!?」
見えないから関係ないと言われたユウナギは、
紫色で「LOVE」と書かれた蜘蛛を見ると、
溜息を吐きつつも納得するしかなかった。
「ま、まぁ~、別にそう言う団体から睨まれねーならいいんだけどよって・・・、
別にそれでいいとは思わねーが・・・。
なぁ~、フーシュン?
つーかよ?この蜘蛛の糸って切れたりしねーのか?」
掌に乗る蜘蛛を見ながらユウナギはそう問いかけると、
フーシュンは「うふっ♪」と言いながらウインクして見せた。
「フフフ♪そんな心配なんていらないわよ♪
その蜘蛛の糸はか~な~り丈夫に出来ていて、
ファイヤーボール程度の熱にもビクともしないのよん♪
それに並みの攻撃にだって、その糸は切れたりしないんだから~♪」
「・・・まじでか?」
そんなこんながあり、ユウナギはフーシュンから手渡された蜘蛛を使って、
長身の男にくっつけておいた糸を辿って行くのだった。
それから暫くの間、蜘蛛の糸を辿って行くと、
糸を出し続けていた蜘蛛が、ユウナギの方へと振り返り、
前足で「あそこっ!」と可愛らしくアピールしてきたのだった。
その仕草にユウナギは(あっ・・・ちょっと可愛くね?)と、
思った事はここだけの話だったりします♪
(あっ!あの野郎・・・こんな所で一体何してんだ?)
長身の男を追って辿り着いた先は、
地下の下水道へと続く扉にもたれ周囲を警戒しているようだった。
ユウナギは身を隠しながら様子を伺っていると、
突然もたれていたドアから「カチャ」と金属音が鳴り、
長身の男は周囲を再び警戒しながらドアの中へと消えて行った。
(あいつ・・・あんな所に入って一体何をしようってんだ?)
ユウナギは咄嗟にスキルを使用しようとするが、
風に揺らめく蜘蛛の糸の強度に期待しようとスキルの使用を止め、
掌の中に居る蜘蛛に「お前を信用してるからな?」と告げ笑みを浮かべた。
そしてユウナギは真顔に戻りシャルンへと連絡すると、
状況を説明し合流する事となった・・・。
それから5分後・・・。
やって来たシャルンが合流すると、再び隠ぺいのスキルを使用し、
地下の下水道へと続くドアの中へと入って消えて行ったのだった。
~ ルクナの地下 ~
下へと続く階段を降りたユウナギとシャルンは、
蜘蛛の糸を頼りに足音を消しながら辿り、
少し先で暗闇を照らす灯りを見つけ接近して行くと、
こんな会話が聞こえ始めた。
「なぁ~、クレベールはん・・・。
ワイら2人だけで例のアレ・・・捕まえる事なんて出来るんかいな?」
「ん~・・・それな~?
まぁ~僕ちゃん達にとっちゃ~結構キツいよね~?
でもさ~・・・ベンソン
ルーズベルト様がそう言うんだから、しょうがないじゃない?
あの人って1度言ったら聞かないしね~?」
「まぁ~・・・確かにせやね?
でもな?その魔獣の話を聞くところによるとやな?
なんやめっちゃ狂暴や~って言うやんか?
そんなんにワイらだけで何とかなりますのんかいな?」
「・・・まぁ~あ?そこは僕ちゃんが何とかするしかないでしょ?」
そんな会話を聞いていると、突然「ガサゴソ」と、
衣服でも脱ぐような音が聞こえて来た。
(なんだ?着替え・・・てんのか?
んー・・・ツラの1つでも見ておかねーとな~?)
そう思ったユウナギは後ろを振り返りながら、
頭上を指差しシャルンに念話を送った。
(なぁ~、シャルン?
お前って、吸着のスキルって持ってたよな?)
(え、えぇ・・・持ってるけど?
それがどうしたの?)
(いやな?ちょっとヤツらのツラが見たくてな?)
(ツラね~♪フフフ♪いいわね・・・それ♪)
ユウナギとシャルンはニヤりと笑みを浮かべ蜘蛛を肩に乗せると、
スキルの1つ・・・「吸着」を使用して、地下トンネルの壁を登り始めた。
そしてトンネルの上からヤツらが居る所を覗いて見ると、
男達は既に覆面をしており、顔は分からなかったのだが・・・
((・・・えっ!?))と2人は驚きの表情を浮かべ、
一番驚いていたのは何故かユウナギだったのだ。
(・・・んんんっ!?
あの丸っこいモコモコしたヤツって・・・
ま、まさか・・・ぎ、擬体の機能とかって・・・
あははは・・・ま、まさかだよな~?
ぎ、擬体なんて作れる天才って・・・
こ、この世に、お、俺様くらい・・・だ、だよな~?)
顏を引きつらせながら困惑するユウナギを他所に、
その連中の会話は続いていったのだ。
「ふぅ~・・・。
まぁ~僕ちゃんのこの発明品があれば、
今世間を騒がせている冥界の
ど~にでも出来ちゃうんだけどね~♪」
「フッフッフ・・・せやね?
天才魔道具発明家のクレベールはんやったら、
お茶の子さいさいでおまんな~?♪
今回もワイ・・・期待しとりまっせ~?」
「ぐふふふ・・・ぬふふふ・・・ははは・・・わぁ~はっはっはっ!
ベンちゃん♪僕ちゃんの事、もっと誉めて~♪
ぐふふふ・・・僕ちゃんに不可能はないのだよ~ベンソン君♪
この天才魔道具発明家が居れば、
怪盗レディ・テンバイヤーに敗北の二文字はないのだーっ!
ぬわぁ~はっはっはっ!」
ルクナの地下道にある広めの空間で、
その男達の高笑いを聞きながら、妙な闘志を燃やすユウナギだった。
(ん?い、今・・・あいつ・・・転売屋っつったかっ!?
ま、まじか~・・・まじでか~?
もうあいつら・・・世の中の敵じゃねぇーかっ!?
地球での恨み・・・晴らさでおくべきかっ!
つーか、今はそんな事よりも・・・
ク、クレベールとかってヤツが・・・今、なんつった?
あぁ~ん?天才魔道具発明家だぁ~?
あ、あんにゃろーっ!いい度胸してやがんなぁーおいっ!?
こ、この俺を差し置いて・・・誰が天才なんだよっ!?
天才は俺だけでいいっつーのっ!)
自然と拳に力が入るユウナギに、シャルンが宥めるが、
一度着いた火は消せないようだった。
(ユウナギっ!?あ、あんたちょっとは落ち着きなさいよっ!)
(うっせーバーロイっ!
こっちは発明家としてのプライドがかかってんだよっ!
あぁ~んっ!?
あんな何処の馬の骨だかわかんねーヤツにっ!
この容姿端麗、頭脳明晰の超絶かっこいい、
こ、この俺が・・・このユウナギ様がっ!
あ、あんな・・・ハハハ・・・不細工に負ける訳・・・な、ないじゃんよ)
(・・・ど、どうしていきなりシオシオになってんのよ?)
(い、いや~まさかこの世界に、俺と同じ発明家が居るだなんてな~?
ハハハ・・・だ、だがな?
俺は元・・・勇者としてあんなヤツに負けるなんてっ!
断じて負けは認めねーしっ!ま、負けない・・・もんっ!)
(も、もんっ!って・・・、どこまで動揺してんのよ?)
この時のユウナギは動揺の度合いがレベル・マックスになっており、
己自ら自爆していた事に気付かなかったのだった
(ったく・・・。
それにしても・・・元、勇者とはね~?
通りであんたに会う度、そんな雰囲気を感じていたのよね~?
フフフ・・・♪)
そんなユウナギに呆れながらもシャルンは男達を鑑定するのだが、
ステータス阻害魔法により、確認出来るモノは少くなかったのだった。
クレベール 男 32歳独身 180cm 58kg (自称)天才魔道具職人
怪盗レディ・テンバイヤー一味 武器 自ら製作した魔道具
ルーズベルトとベンソンは幼少からの幼馴染
ベンソン 男 独身 160cm 120kg (自称)世界一の怪力
怪盗レディ・テンバイヤー一味 武器 クレベール製作の魔道具
ルーズベルトとクレベールは幼少からの幼馴染
この鑑定結果にシャルンは・・・。
(え、えっと~・・・つまり、仲良し三人組って・・・事で、い、いいのよね?)
苦々しい表情を浮かべたシャルンとは対照的に、
ユウナギは怒りの炎を燃やすのだった・・・。
(どっちが真なる魔道具発明家かっ!
てめーのその魂にっ!刻み込んでっ!
も、もう・・・ギッタンっ!ギッタンにっ!)
今・・・ユウナギの怒りは頂点に達したのだった。
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