第34話 通販ってほんっとに便利よね~♪
一夜明けてここはユウナギ邸の居間・・・。
アスティナはソファーで横になりながらお菓子を食べ、
TVで朝の情報番組を見ていた・・・。
って、この世界にもTVってあるんですね~?
そう思ったのはここだけの話・・・。
朝からせわしなく働くエマリアやハインリヒを横目で見ながらも、
だらだらと過ごしていると・・・。
「ういーす」と、気怠≪けだる≫そうにユウナギが2階から降りてきた。
「・・・はよう」っと挨拶をするも、ユウナギは「チラッ」っと一瞬見ただけで、
リビングを横切って行った。
TVの音が聞こえる中、ドアが開けられたままのリビングから声が漏れ、
アスティナは何気にリビングの方へと視線を移した。
「ういーす・・・腹減った~・・・」
「おはよう御座います、ユウナギ様・・・。
いつでも食べられますから座って待っていて下さい」
「うーすっ」
「ユウナギさんおはようっスっ!
あっ、そうそうっ!
カートさんから昼過ぎにでもギルドに顔を出してくれって、
連絡がありましたよ?」
「えぇぇ~・・・まじかよ~?
用があるなら自分が来いってんだっ!
ったく~・・・面倒くせーなぁー・・・」
そんな会話がリビングから流れて来ると、
アスティナは再び視線をTVへと戻しつつも物思いにふけっていた。
(ん~・・・ユウナギには今回色々と世話をかけちゃったわね~?
一応のお礼は言ったものの~・・・ん~・・・)
お菓子をボリボリと食べながらもそんなことを考えている時だった・・・。
情報番組のCM中・・・こんなCMが流れていた。
~TVCM~
「はいっ!TVの前の皆さ~ん♪
最近疲れが溜まって日々の生活に不満を抱いていませんか~?」っと・・・。
登場した女性が朝からハイテンションで突然始まったCMに、
アスティナはあくびをしながら見ていると・・・。
「あぁ~確かに最近私もですね・・・」っと、
その女性の問いに答えるように男性が口を開いていた。
そしてその女性はその男性の説明に、
「うんうん♪疲れがたまってしまっているのですね?」っと、
頷きながらもカメラ目線で続けざまにこう言ったのだ・・・。
「TVの前の皆様も恐らく同じではないでしょうか?
ですが・・・皆様・・・安心して下さいっ!♪
そんな疲れた身体を癒す商品を今回・・・ご紹介させて頂きますっ!♪」
「おぉ~♪」と言う観覧席の人々からの声と共に、
隣にいた男性が食いつくように「ほ、本当ですかっ!?」っと、声を挙げた。
この時アスティナはそのCMを見ながら・・・。
「この手の演出って、今も昔も変わらないわよね~?
どうしてかしら?」
などと、虚ろな目でブツブツと呟いていたが、
CMはここからが本番である。
「さて、今日ご紹介致しますのは・・・この商品♪
我がヘルス&ヘル社が総力を上げて開発した・・・
この・・・「ヘルマッサージャー・快眠くん」ですっ!」
再び観覧席のお客さん達から「おぉ~♪」と言う声を聞きながらアスティナは、
「・・・こ、これだわっ!」と言いながら勢いよく身体を起こした。
そしてそのマッサージャーなる物の説明を食い入るように見ながら、
「ふむふむ・・・そ、それでっ!」と、
TVに話しかけていたのだった・・・。
そんなアスティナを横目に見ながら、
ユウナギは食事を済ませ再び2階へと戻り、
エマリアは洗濯物を干しに行き、ハインリヒは・・・トイレに籠った。
ユウナギ一家のそんな日常が送られて行く中、
アスティナは1人・・・TV通販に夢中になっていた。
「こ、これよっ!これしかないわっ!
これをアイツにプレゼントをすれば・・・ふっふっふっ♪
今回アイツに作った借り・・・チャラに出来る・・・
い、いえ・・・それどころじゃないわね・・・。
チャラどころか・・・。
逆に私に何か美味しいモノでも食べさせてくれるかもしれないわっ!
お~ほっほっほっ♪
一体どんなモノを食べさせてくれるか楽しみね♪」
元はユウナギに対しての「お礼」をする為に・・・。
そんな趣旨の元思い悩んでいたアスティナだったが、
この時そんな趣旨も忘れ私欲に心を震わせていたのだった・・・。
アスティナはTV画面に表示された番号へとかけるべく、
通信用の魔石を取り出しながら、
慌ただしく自室のある2階へと駆け上がって行った・・・。
※ 因みにですが通信する番号などがある場合、
頭の中でその数字を思い浮かべるだけで相手へと繋がるのである。
この時、丁度用事を済ませたライトニングが戻っており、
アスティナと同じ居間に居た事にも気がつかないようだった・・・。
「ヘルス&ヘル社・・・?
はて・・・?以前どこかで聞いたような・・・?
あぁ~・・・そう言えば・・・」
ライトニングは少し眉間に皺を寄せながらも肩を竦め、
慌ただしく2階へと駆け上がったアスティナに胸のざわめきを感じたのだった。
「何事もなければ宜しいのですが・・・」
そう一言漏らしたライトニングは、軽く首を左右に振りながら、
エマリア達の仕事を手伝っていくのだった・・・。
そして3日後・・・。
早朝よりエマリア、ハインリヒの2人はそれぞれ仕事で家を空けており、
ユウナギ本人もカートラルとの打ち合わせで家を空けていた。
ユウナギ邸に残っていた者はアスティナとライトニングの2名・・・。
ライトニングはエマリアが不在の為、家事全般をこなし、
アスティナはと言うと・・・。
ここユウナギ邸の自室がある2階にて、朝から部屋の中をウロウロとしていた。
「あぁーもうっ!いつになったら私の荷物が届くのよっ!?
イライラするわね~・・・まったくもうっ!」
朝から機嫌悪くしているアスティナに、ライトニングは構うことがなかった。
そんな様子で時間が流れ、時は昼間へと差し掛かろうとしていた時だった・・・。
「ピンポーン・・・。ユウナギさーん・・・お届け物でーす」
そんな声を聞いたアスティナは物凄いスピードで階段を駆け下り、
玄関でドアを開けようとするライトニングを押しのけた。
何事かと目をパチクリさせるライトニングに構う様子もなくドアを開けると、
「おっっっそいわねっ!」と配達員に悪態着きながら荷物を受け取った。
「ありがとやした~」と配達員が去り、
荷物を受け取ったアスティナは「うふふ♪」と上機嫌だった。
「アスティナ様・・・。随分とご機嫌ですな?」
「ふっふ~ん♪だって~心待ちにしてた荷物が届いたんですもの~♪」
「ハハハ・・・それはよう御座いましたな」
先程までとは違い過ぎるアスティナの様子に苦笑いを浮かべながらも、
ライトニングは視線を荷物へと向けられた・・・。
「おや・・・?」
「・・・ん?ライ・・・この荷物がどうかした?」
「いえいえ・・・」
「そう♪私は上へ行ってるから、何かあったら声をかけてね♪」
「承知致しました」
上機嫌で荷物を抱えながら2階の自室へと戻って行くアスティナの背中を見て、
(・・・ヘルス&ヘル社・・・ふむ、何やら胸騒ぎが致しますな)
そう思いながらもライトニングはどこかへ念話を送ると家事へと戻って行った。
2階へと戻ったアスティナは包装紙を破り中身を確認していった。
そのマッサージ機は床やベッド等に敷いて使用するとタイプで、
誰でも気軽に簡単に・・・と、そんなチラシも同梱されていた。
一通り中身を確認し終えたアスティナは手を伸ばすと、
中にある製品の説明書を取り出した。
「ふむふむ・・・なるほどね~。
このマッサージ機は家庭用の魔石で動くのね~♪
なるほど、なるほど~♪ほんっとに通販って便利よね~♪
って言うか・・・まずはちょっと試してみようかしらね♪」
浮かれ気分なアスティナは家庭用の魔石を取り出すと、
製品内にある魔石ボックスへと入れて蓋を閉じニヤニヤと笑みを浮かべていた。
※ 再び因みにですが・・・。
この世界では電力は存在しません・・・。
家電などの製品は全て魔石を使用しております。
一般家庭用は「白」、業務用は「緑」など、用途によって区別されています。
「これでよしっと~♪さ~て、早速使ってみますか~♪」
そう上機嫌でそのマッサージ機に横たわろうとしたのだが・・・。
「はっ!ダ、ダメよ・・・。
これは一応アイツへのプレゼントだもの・・・。
やっぱり一番最初に使うのはアイツよね?
あぁ~・・・でもっ!お礼の品ではあるんだから、
わ、私が最初にモニターとなって使用感などを確かめないとっ!
い、いやでもっ!これはアイツに・・・。
うぅぅ・・・一体どうすればいいのよぉぉぉっ!」
などと、何度もそのやり取りをしていたのだが、
そんな時だった・・・。
「ただいま~」っと、下からユウナギの声が聞こえてきた。
その声に「ハッ!」となったアスティナは急いで階段を駆け下りて行った。
ユウナギ邸の居間にて・・・。
「ったくよ~・・・
どうしてこうも俺に、面倒臭せ~仕事ばかり迷い込んで来るのかね~?
しかもカートのヤツ・・・俺にどんだけ借りを作るつもりなんだよっ!
ちゃんと返してくれるんだろうな~?」
帰宅するなりそう愚痴り始めたユウナギにライトニングは微笑みを見せ、
「おかえりなさいませ」と頭を下げていた。
「はっはっはっ!それはカートラル様含め、ギルドの職員の皆様が、
ユウナギ様を信頼されているからではありませんか?」
「・・・信頼・・・ねぇ~?」
ユウナギはライトニングにジト目を向けながら、
気だるそうに頬杖を着いていると、
「ドタドタ」と慌ただしく階段を下りて来るアスティナへと顔を向けた。
「ユウナギーっ!やっっっと帰って来たわねっ!」
(あ~・・・このテンションのこいつって、
すっげー面倒臭い時なんだよな~?
帰って来たばかりで疲れてんだから少しは気を遣えってんだよ・・・。
あ~・・・面倒臭せ~・・・よしっ!シカトだなっ!シカトっ!)
ややキレ気味でそう口を開くアスティナに、
ユウナギはシカトを決め込む為そっぽ向いて見せた。
そんなユウナギの態度にアスティナの片眉がピクリと反応すると、
怒りを滲ませながら声を荒げた。
「シ、シカトしてんじゃないわよっ!
あんたに大事な用事があるんだから、ちゃんと聞きなさいよっ!
って・・・聞いてるのっ!?」
「あぁ~もう帰って来るなりうるせーな~・・・」
素っ気ないその態度に少し「カチン」と来るアスティナだったが、
グッと堪えつつも恥ずかしそうに声をかけた。
「そ、その話の事なんだけど・・・。
ユウナギ、ちょ、ちょっとい、いいかしら・・・?」
「・・・き、急に何だよ」
「え、えぇ~っと~・・・ね?」
先程とは打って変わって、アスティナのその態度に苛立ちながらも顔を向け、
面倒臭そうに言葉を続けた。
「で?何だよ・・・話ってよ?
聞いてやるからちゃっちゃと話せよ」
「えぇ~っと~・・・ユ、ユウナギ・・・。
あ、改まってい、言うのもな、何だけど・・・ね」
「・・・ん?」
「こ、この前は~・・・い、色々と~・・・せ、世話をかけたわね?」
「この前の事って・・・お前が勝手にスキルを使用して、
勝手に負傷したことか?」
「う、うぐっ・・・。
か、勝手、勝手って何度も言わないでよっ!
いちいちうっさい男ね~っ!」
本当の事を言われたアスティナは、いつもの癖で逆ギレしたのだが、
当の本人も逆ギレしている場合じゃない事はわかっていた。
「・・・え、えっと~・・・実は・・・そ、そのお礼・・・?
お、お礼と言ったらなんだけど・・・って・・・あっ!?」
「・・・はい?」
「ちょ、ちょっと待っててねっ!」
「お、おいっ!ちょっと待てこらっ!ちゃんと説明しろーっ!」
アスティナはお礼の品・・・プレゼントを自室に置いたままである事に気付くと、
ユウナギの言葉も聞かずに自室へと戻って行った・・・。
「ったくよ~・・・なんなんだよ・・・あいつはっ!」
「ハッハッハッ・・・アスティナ様らしいそそっかしさですな~♪」
「・・・笑いごとじゃねーぜ・・・ったくよ」
ブツブツと愚痴を言いながらユウナギは、
いつの間にか目の前に置かれていたコーヒーを口にするのだった・・・。
そして慌ただしく2階へ駆け上って行ったアスティナは、
何やらゴサゴソとし始めたらと思ったら、
再び「ドタドタ」と慌ただしく居間へと戻って来た・・・。
「はぁ、はぁ」と息を切らせるアスティナにユウナギも溜息を漏らすも、
アスティナはユウナギの前に大きな荷物を置いた。
「こ、これ・・・なんだけど?」
「な、何だよ・・・これ?」
「え、えっとね?あのね?こ、これはその~・・・」
何やら言いにくそうに顔を赤らめながらモジモジし始めると、
それから暫くの間、ただクネクネしているだけだった・・・。
そしてそれなりの時間が過ぎ、
「お、お前・・・い、いい加減・・・に・・・」と、
ユウナギのイライラも頂点に昇り詰めようとした時だった・・・。
「ユウナギ様、アスティナ様はこの間の借り・・・コホン。
この間のお礼をと思い、プレゼントをユウナギ様にと・・・」
突然そうライが話を切り出し、
アスティナが驚いた様子で目を丸くし固まってしまっていた。
「なんだ・・・そんな事か?
別にそんな事今更どうでもいいのによ~?
つーか・・・。それを言うだけでこんなにモジモジしてんのかよ?
呆れたっつーか、なんつーか・・・」
溜息混じりにそう言い始めたユウナギに、
再びアスティナの片眉がピクリと反応した。
「どうでもいいってっ!
そんな言い方ってないでしょっ!?」
「・・・はい?」
「って言うかライっ!
どうして私が言う前にバラしてんのよっ!?
サプライズが台無しじゃないのよっ!
ってか、何でプレゼントの理由まであんた知ってんのよっ!?」
怒鳴るアスティナにライトニングは微笑みを絶やす事なく、
穏やかな口調で答えていった。
「ハッハッハッ・・・あれだけ大声で言われておりましたので、
まさかサプライズ的な意味も含まれているとは、
私めも気が付かず大変申し訳御座いませんでした」
穏やかな表情をしながらも深々と頭を下げるライトニングに、
アスティナも言葉を詰まらせ何も言えなくなってしまった・・・。
そして何とも言えない空気の中、
「ただいま~」「今戻りました♪」と声を挙げながら、
エマリアとハインリヒが仕事から戻って来たのだった・・・。
「あれ?皆さん・・・どうかされました?」
「・・・な、何っ!?こ、この空気っ!?」
居間へと入って来たエマリアとハインリヒは、
その何とも言えない空気に言葉が出なかった。
「はぁ~・・・ったくよ~・・・。
わ~ったよ・・・。
アスティナ・・・お前の気持ちは素直に受け取っておくよ」
ユウナギの言葉にアスティナは顏を赤らめながら黙って「コクリ」と頷くと、
何を勘違いしたのかハインリヒも顔を赤らめ興奮しながら声を挙げた。
「ま、まさか・・・まさかぁぁぁぁっ!?」
「なっ、何だよっ!いきなりてめーはよっ!?
まじでびっくりしたわっ!」
心臓の辺りを手で押さえ声を挙げるユウナギに、
ハインリヒはニヤニヤと笑みを浮かべながら、
ユウナギが座るソファーへと駆け寄った。
「ちょっと、ちょっと~ユウナギさ~ん♪
この、この、この~♪
とうとうアスティナさんと引っ付く事に決めたんスか~?
よっ!このモテ男~♪にくいねにくいね~♪」
「「「・・・・・」」」
ハインリヒの冷やかす言葉に一切反応を示さないどころか、
余計に不穏な空気が張り詰めていった・・・。
「お、お前ね~・・・?
この空気・・・一体どうしてくれんのよ?」
「・・・え、えっ!?」
ユウナギ、アスティナ、ライトニング達の伏せた顔を見たハインリヒは、
慌てて振り返りエマリアを見てみると、
そのエマリアは静かにただ、首を左右に振るだけだった・・・。
「え、えっ!?エ、エマリアさんは・・・わ、わかるのっ!?」
「は、はい・・・だいたい・・・ですが・・・」
「う、嘘んっ!?」
こうしてアスティナのサプライズ的なプレゼントは、
「えっと・・・じゃ~・・・これ・・・」と静かに手渡され、
さっさと2階の自室へと戻って行ったのだった・・・。
バツの悪い空気が部屋に立ち込める中、
ユウナギは手渡されたプレゼントを見て、ポツリと声を漏らした。
「・・・マッサージ機か・・・アスティナのヤツ・・・」
そう言いながらユウナギは今から見える階段へと視線を移し、
寂しそうな背中を見せたアスティナの姿を思い出すのだった・・・。
「・・・な、なんか・・・す、すんません」
ハインリヒの呟いた言葉が妙に響いていたのだった・・・。
次回35話「通販で買う時は、その会社にも気をつけろっ!(仮)」を、
宜しくお願いします♪
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