第13話 称賛と死の匂い

魔族1人をあっさりと片づけたライは、

先に進んだエマリアの跡を追い小屋の中に入って行った。


「ふむ・・・さて、どこに仕掛けが?」


そうライが呟き視線を泳がせていると、

小さなテーブルの上に在る花瓶が目に留まった。


「・・・まさかとは思いますが・・・これですかな?」


ライは花瓶が置かれているテーブルを見た時、

何度も花瓶が擦れた後を見つけたのだった。


それに従うように花瓶を回転させると、

ゴォゴォッ!と言う音と共に、奥の壁が上へと開いて行った。


「・・・隠す気があるとは思えませんね」


そう呟くと、エマリアを追う為に先へと進んで行った。



壁の先には大人2人分が座れる小部屋があり、

その先には地下へと延びる階段があった。


ライは足音を立てずその階段を下りて行った。


(ふむ・・・無駄に長い階段ですね)


そう心の中でボヤきながらその長い階段を下りて行くと広い空間に出た。


松明で多少明るくはあるがその独特なカビ臭さに、

ライは少し顔を歪ませた。


(・・・ここを使う者達は満足に掃除も出来ないのですかね~?

 ここの主の程度が知れてしまいますな)


再びそうボヤきながら、ライは鉄の扉がある場所まで移動すると、

そこから微かに伝わってくる振動をキャッチしたのだった。


(おやおや、どなたかが言い争っておられるようですが・・・?)


ライは心の中で呟くと、その冷たく硬い扉に触れトラップの有無を確かめた。


(警戒も何もあったものじゃありませんな~?

 これじゃ~素人さんも簡単に侵入出来てしまいますね。

 再教育の必要性を感じますが・・・

 私には関係ありませんので、どうでもいいですがね・・・)


そう心の中で呟きながら、ライはインビジブルの魔法とスキルを使用し、

冷たく硬い鉄の扉をすり抜けて行った。


そしてその少し先の広間でライが見たモノは・・・。


(こ、これはっ!?)


円形状になったその広間をぐるっと囲むように、

攫われた子供達が鉄格子の中でぐったりとしていたのだった。


(これは・・・牢獄のようですな。

 何と愚かな事をっ!)


顔を顰めそう感じながらも、ライは姿を消したままその牢を一通り見て回り、

現状を把握すると、視線をその奥へと続く通路に向けていた。


(今の所、命の危険がある幼子はいないようですが・・・

 流石にこの魔族の私でも引いてしまいますな)


ライは訝しい顔をしつつも、エマリアを追ってその通路へと浸入して行った。



そしてここはその通路の奥にある広間・・・。

その広間の重い天井を支える大きな4本の柱があった。


(・・・この空間には子供達は居ないようだけど・・・

 あの2人・・・一体何を言い争っているのかしら?)


エマリアは「パーフェク・サインブロック」を使用すると、

気配を完全遮断し、その大きな柱の1本に身を潜ませていた。


「だいたいお前がだなっ!」


と、1人の青白い肌をした魔族がもう1人の魔族に怒鳴り声を挙げていた。

しかし怒鳴られていた魔族の男はヘラヘラとただ笑っていたのだった。


「へいへい、言いたい事はわかったよ~・・・。

 だけどよ~・・・ガキ達がこんなに居るんだぜ~?

 たかが数人チョロまかしても、プレハ様は怒らねーって・・・」


(プレハ・・・この魔族達のボス・・・と言う事なのかしらね?)


少しの間、2人の魔族の口論を聞いていたエマリアは、

ダダ漏れなその情報を頭の中で整理していった。


(なるほどね~・・・かつての魔族のように、統率はとれていない・・・と?

 時代の流れと言うのを感じますね)


言い争う2人の魔族を他所に、エマリアはその2人の背後にある大きな扉と、

この広い空間の隅に在る、小さな扉に目が止まった。


(・・・扉が気になるところだけど・・・)


そう思いながらもエマリアは、

2人の魔族が口論している為、未だ動けず唇を噛み締めていた。


そんな時だった・・・。


パーフェクト・サインブロックで気配を完全に遮断していたエマリアに、

背後から突然声がかけられたのだった。


「おや~?貴女はどちら様なのでしょうかね~・・・」


「っ!?」


エマリアは突然背後から聞こえてきた声に、

声にならない声を挙げるとその声から距離をとる為飛び退いた。


そしてその余りにも突然な声に、

スキルを無意識に解除してしまい、

口論する魔族達にその身を晒す事になってしまった。


(ちっ!しまったっ!)


エマリアの存在に気付いた2人の魔族は、

睨みつけ指をバキッ、ボキッっと鳴らし威圧を放って来た。


そしてエマリアを喰い見ると、その醜く歪めた口を開いたのだった。


「女ぁ~・・・どこから入った?」


「おやおや~・・・どこの子猫ちゃんなのかな~?」


エマリアに威圧しながらそう言って歩み始めると、

エマリアが身を潜めていた柱から、1人の魔族がゆっくりとその姿を現した。


そしてその男のその姿は・・・ガリガリに痩せアイマスクをした男・・・だった。


(ど、どうして・・・わ、私の存在がっ!?)


思考が停止したエマリアに、

そのガリガリに痩せたアイマスクの男はニヤリと笑みを浮かべた。


そしてその存在に気付いた2人の魔族は、

ニヤけながらも軽口で話しかけていった。


「お前~・・・そんな所に居たのかよ?

 そんな所で遊んでねーで、しっかり仕事しろよっ!」


「ハッハッハッ!見かけないと思ったら・・・」


笑みを浮かべつつそう言って声をかけると、

2人の魔族は視線をエマリアへと戻し、薄ら笑いを浮かべていた。


「ってなところで~・・・女ぁ~・・・お前何者だ?」


「何者かなんて、俺は別にどうでもいいんだけどさ~・・・。

 このまま生きて帰れる・・・な~んて甘い事は考えない方がいいよ~?」



そう声が発せられ2人の魔族が一歩踏み出した瞬間、

エマリアは流れるように駆け出すと短剣を抜き攻撃に移った。


「シュッ!」と、短剣を振り抜く風切り音が聞えたが、

2人の魔族達には掠りもせず、エマリアの奇襲攻撃は失敗終わってしまった。


「ちっ!」


そう舌打ちした瞬間、またしてもエマリアの背後から声がした。


「フフフフフ・・・いけませんね~?」


その声に咄嗟に反応示したエマリアは振り向き様に短剣で斬りつけたのだが、

「ガチッ!」と、言う小さな音を立てると、

その短剣は軽く素手で受け止められてしまい、困惑で顔が歪んだ。


「バカ・・・なっ!?」


そう声を挙げるのがやっとだったエマリアの背中に、

2人の魔族からの強烈な衝撃波が炸裂すると、

「かはっ!」と、息を吐き出しエマリアは吹き飛んで行ってしまった。


「ズシャァァァッ!」と、顔面から荒れた石畳の上を滑り、

その動きが止まると、「うっ、うぅぅ」と、唸り声を漏らしながらも、

エマリアは立ち上がろうとしていた。


そんな様子に3人の魔族達は高笑いを始めると、

そのガリガリに痩せたアイマスクの男が静かに口を開いた。


「・・・貴女が何者なのか、教えてもらえませんかね~?

 そうすれば・・・楽に殺して差し上げますよ~?」


そんな声を聞きながらも、エマリアは立ち上がろうと藻掻きつつ、

頭をフル回転させていった。


(あ、あの男にどうして・・・い、居場所がっ!)


そう考えた時だった。

ガリガリに痩せたアイマスクの男は、まるでエマリアの思考を読んだかのように、

口を醜く歪ませながら話し始めた。


「驚いているようだね~?

 フッフッフッ・・・私はね~、生まれつき盲目なのだよ~・・・

 そのおかげで生命の気配は敏感になりましてね~?」


(だ、だからって・・・わ、私のスキルを・・・)


そう考えていると、その男は再び薄気味悪く笑みを浮かべると、

テンションを上げながら独特の口調で話し始めた。


「あぁ~・・・貴女のスキルが見破られた事を考えているのですね~?

 フッフッフッ・・・では、お答え致しましょう・・・。

 それは、脳細胞が発する微弱な電気信号を私は感じる事が出来るのですよ~

 まぁ~、こんな私でも相手から意識を逸らさなければ・・・。

 と、言う制限があるのですがね~?」


(そ、そんな電気信号までっ!?嘘でしょっ!?)


地面に這いつくばり顔を伏せていたエマリアの顔は、

その発言に驚き戸惑っていた。


(つ、つまりそれって・・・思考も・・・?)


そう考えた時だった。


「ええ~・・・今、貴女が何を考えどう動こうしているか・・・

 それすらもこの私には手に取るようにわかるのですよ~♪

 ヒャッハッハッハァァァッ!」


ガリガリに痩せたアイマスクの男の奇声とも取れる笑い声が、

その広い空間に木霊したのだった。


「ま、まだ・・・よ。

 まだ終わる・・・わけ・・・には・・・

 そ、それに・・・」


エマリアはそう言いながら手元に落ちていた石コロを拾うと、

指で「パチン」と弾き、離れた場所でその石コロが、

「カチンッ!」と音を響かせて落ちた。


(それにまだ・・・手がない訳じゃ・・・

 み、見て・・・なさいよっ!)


エマリアは薄く口角を上げると、全身に力を入れ立ち上がり始めた。

その様子に口論をしていた2人の魔族が互いに顔を見合わせ笑みを浮かべると、

手をかざしエマリアに対して言い放った。


「女ぁぁぁっ!死ねやぁぁぁっ!」


「・・・バイバイ♪」


バシュッ!と言う射出音を、この広い空間で響かせながら、

2人の魔族が放った火炎がエマリアに迫る。


「くっ!ま、まだよっ!ブースト2《ツー》っ!」


「ドォンッ!」


エマリアは己の態勢もかえりみず、

無理矢理スキルを使用し、火炎を間一髪回避して見せたが、

その代償は高く付き、自慢の足の筋肉が痙攣し限界を迎えたのだった。


「うぐっ!」っと声を漏らすも、エマリアは回避出来た事に胸を撫で下したが、

火炎の黒煙が立ち昇る中、まだ安堵の息を漏らすには早かった。


「チッ!外しちまったなぁ~?」


「ハッハッァァ!粘るじゃんっ!いいね~♪」


そんな声がエマリアに届いた瞬間だった・・・。


「また~・・・油断・・・しましたね~?」


突然再び背後から聞こえた声に、

エマリアは刹那に地面に両手を着き倒立すると・・・。


「それはあんたよっ!ブースト3《スリー》っ!」


「なっ!?」


「私はっ!あきらめないわっ!

 喰らいなさいっ!裏・黒狼瞬脚陣こくろうしゅんきゃくじんっ!」


突然倒立したエマリアの両足から研ぎ澄まされた魔力が鋭利な黒い刃に変わると、

自ら身体を捻り回転し斬り裂いた。


「シュパッ!」


「!?」


「ブシュゥゥゥッ!」と、魔族の血液が噴き出す中、

エマリアが着地した後、「・・・ね、狙っていた・・・のか?」と、

ガリガリに痩せたアイマスクの男の首が、「ポトリ」と石畳の上に転がった。


転がったその首に視線を落としたエマリアは、

その首の言葉に対して少し口を歪ませながら答えた。


「ええ、勿論狙っていたわ。

 要するに・・・私の思考を覗かれないようにすればいいんでしょ?

 そうと分かれば話は簡単よ。

 あんたの意識を他に向けさせればいい・・・ただそれだけの事よ」


顔を苦痛で歪ませ、脂汗を浮かべそう答えたエマリアに、

石畳の上に落ちた首は笑顔を向け声を挙げた。


「だ、だから・・・石コロ・・・を?」


死んだと思っていたその男が突然口を開いたその首に、

エマリアは驚きの表情を浮かべるが、

両足の激痛で再び苦痛に顔を歪ませながらもその口を開いた。


「・・・ま、まだ生きてた・・・のねっ!?

 それにしても・・・自ら弱点を口にするなんて・・・ね。

 甘く見過ぎでしょ?」


「・・・ハハハ、だ、だよね~」


首だけになりながらも苦笑いを浮かべた男に対して、

エマリアは何かを思い付くと、それを尋ねて聞いてみた。


「最後に聞いてあげるわ・・・あんたの名は?」


「アイ・・・」


「アイ・・・?」


「アイマスク・・・だ」


この瞬間、エマリアの中で「パキンッ!」と何かが弾け飛び、

その激痛に顔を歪ませつつ叫び声を挙げながら足を高く振り上げると・・・。


「見たまんまじゃねぇーかぁぁぁぁっ!」


「ドカッ!」


っと、エマリアは普段からユウナギに刷り込まれた突っ込みを披露すると、

まだ痙攣する足で、「アイマスク」と名乗った首を力一杯蹴り飛ばした。


「ふぉごぉっ!」と、声にならない声を挙げながら飛んで行き、

「ズシャャッ!」と遠くの壁から音が響いて来ると、

エマリアはその足の激痛に再び膝を折り蹲ってしまった。


「くぅぅぅぅっ!!いたたたたたたたた・・・。

 つ、ついユウナギ様のように・・・わ、私とした事が・・・」


エマリアは痙攣する足を掴みながらそんな事を言っていると、

2人の魔族から怒声が響いて来た。


「てめぇぇぇっ!いい加減にしろぉぉぉっ!」


「・・・遊びは、ここまでとしましょうか?」


その声にエマリアは何とか自力で立ち上がろうとするが、

その激痛に再び膝を折ってしまった。


「うぐっ!・・・ヤ、ヤバッ!

 ちょ、ちょっと・・・む、無茶しちゃったみたいね?

 ハ、ハハハ・・・痛っつ、つつつつつ・・・」


そんな事を言いつつも、エマリアはその思考をフル回転し始めるのだが、

その激痛により思考が間に合わないどころか、

それよりも早く、2人の魔族は行動に移したのだった。


「今度こそ・・・死ねやぁぁぁっ!ハァァァァッ!」


「・・・消えろっ!」


気合と共に放たれたその火炎魔法に、

エマリアは絶望を見せずに、迫り来るその火炎を睨みつけていた。


「わ、私は・・・負けないっ!

 まだ・・・あきらめないわっ!」


そしてその迫る火炎魔法がエマリアへと命中する瞬間、

エマリアの前に黒い壁が突然姿を現したのだった。



「その心意気・・・見事ですな♪」


その聞き覚えのある声に、思考が一瞬停止したのだった。


そして再びエマリアの思考が戻った時、

先程まで迫っていた火炎魔法は、跡形もなく消え、

エマリアの前に男が立って居た。


その男はこちらに振り返る事なく、そして誰に言うのでもなく・・・。

ただ、誰かの為にその口を開いた。


「我が主のおっしゃった通りに・・・なりましたなぁ~?

 フォッフォッフォッ♪流石で御座います・・・我が主様♪

 2人・・・ふむふむ・・・なるほど♪

 フォッフォッフォッ!お見事で御座います♪」


その男の背後で未だに蹲るエマリアを気遣う事もなく、

ただ、「我が主」に対し敬意を示すその男は笑っていたのだった。


そして肩越しにエマリアを見ると、その男の瞳が笑っているかのように思えた。


「あ、貴方は・・・一体っ!?」


そうエマリアが口を開いた時、2人の魔族が苛立ちその怒声を挙げた。


「てっ、てめぇぇーっ!一体何者だぁぁぁっ!

 邪魔しやがってぇぇぇっ!ぜってぇぇにっ!許さねぇからなぁぁっ!」


「俺達の邪魔をしようと言うのなら・・・ご老体、容赦はしませんよ?」


そう声を挙げた2人の魔族に、ライは眉をピクリと上げると、

2人の魔族に手をかざしながら重く響く声で口を開いた。


「黙りなさいっ!この下郎げろうがっ!」


そう一喝すると、2人の魔族にかざした掌を返すと、

指を2本真上へと跳ね上げた。


「うがっ!」


「か、から・・だ・・・が・・・」


2人の魔族は全身金縛りになり、

声すらもまともに発する事か出来なくなっていた。


そしてそれを確認する事もなく振り返ると、

エマリアの様子を伺いながら、穏やかな口調で声をかけた。


「ふむ・・・かなりキツそうですな?」


呆気あっけに取られながらエマリアは茫然としていると、

再びエマリアの様子を確認し・・・説明し始めた。


「お嬢さん、ご自分ではお気付きになられておられないようですが、

 あのアイマスクとやらの毒で全身が進行形で腐敗して行っておりますな」


その言葉にエマリアは「えっ!」っと声を漏らすと、

自分が吐いた息から血の匂いがする事に気付いた。


「ははは・・・そ、それはまずい・・・です・・・ね」


引きつり血の気が引いて行くエマリアの顔を見たライが、

少し考えるような素振りを見せると、

エマリアの口から一筋の血液が流れ始めた。


「おやおや・・・お嬢さん。

 かなり無理をしておられるようですな~?」


「こ、これくらい・・・た、大した事・・・では・・・

 そ、それに・・・まだ・・・私には・・・」


強がる言葉にライは微笑むと、エマリアの口から流れ出た血液を、

その白い綿の手袋で救い上げ、「クンクン」と匂いを嗅いだ後、

その血液を「ペロッ」と舐め取った。


そして口の中で暫くの間、まるでワインのテイスティングのように吟味すると、

何度か頷きながら視線をエマリアへと再び向けたのだった。


「ふむ・・・なるほど。これはなかなかやっかいな毒ですな~?」


そうライが声を漏らした時、エマリアは薄く笑いながら声を発した。


「フフフ・・・そう・・・ですか・・・。

 で、ですが私は・・・まだここで・・・終わる訳にはいかないのです」


そう言いながらエマリアはガクガクと膝を揺らしながらも、

必死で立ち上がろうとした。


「わ、私の・・・私の仕事はまだ・・・お、終わっておりません。

 例えこの命が尽きようとも・・・あきらめる訳には・・・

 わ、私は・・・ユウナギ様の期待に応え・・・なければ・・・」


そう笑みを浮かべ呻くようにエマリアが答えた瞬間、

「ゴフッ!」っと、今まで堪えてきた血液が、

口から溢れ出してきた。


薄れゆく意識の中、倒れたはずのエマリアは、

ライによって支えられ、微かにその声が聞えてきた。


「・・・その忠誠心は称賛に値しますな~♪

 それにこの私は、お嬢さんの事を我が主より頼まれておりますので、

 このままみすみす死なせてしまう事は出来ません」


そしてライはエマリアを抱きかかえたまま、

手を額へとかざすと・・・。


「エクストラ・キュア」


ライの白い綿の手袋が赤黒い光を放つと、

血の気が引いたエマリアのその顔に赤みが差したのだった。


そして今の状態を確認したライはエマリアを抱えると、

少し離れた場所に移動し、ゆっくりと横たわらせたのだった。


「ふむ、もう心配いりません。

 お嬢さんはここで暫くの間お休み下さい。

 後はこの私が・・・我が主よりオーダーを承った、この・・・冥界の・・・」


そう言いながら立ち上がり、

ライによって未だ金縛りになっている魔族達に向き直ると、

先程までとは打って変わって、

体中から赤紫色のおびただしい魔力を放出させ始めたのだった。


そして魔族達がそのケタ違いの魔力にガタガタと奥歯を鳴らせていると、

先程言いかけた話の続きを力強い口調で言い放った。


「この・・・冥界の・・・獣の王・・・ライトニングが・・・

 我が主の為、全てを塵に帰すと・・・誓いましょう。

 フフフフフフッ・・・ハッハッハッハッ!」


赤紫色のその魔力に、2人の魔族は死の匂いを感じるのだった。

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