第73話
「ルルティカはそのままでしたら全身を骨折していましたわ。精霊魔法の『衝撃転嫁』をかけていましたから、暴行を受けてもルルティカにはいっさい痛みも傷もありませんわ。ああ、ここにルルティカがいないから空いた穴に自分が加われるとお思いでしたか? 先程私に向けて『殺されたくなければ発言を撤回しろ』と仰ったあなたが?」
私のいった通りだったのでしょう。唇がワナワナと震えたまま左右を見回して仲間を探そうとしたようです。ですが、周囲から大きく距離をとられて孤独感を抱えた状態で床に膝をつきました。
『衝撃転嫁』は攻撃した者に攻撃された相手が受けるはずだった衝撃が戻るものです。それがいつ戻るのかはわかりません。ただ早くて翌日、遅くても三年後。軽症や重傷など問わないようです。ただ共通しているのは、攻撃した者が幸福を感じたと同時に発動するようです。
「あ、あの……。それでは今、領主様に婚約者様はおられないのでしょうか?」
「ええ、私に婚約者はおりませんわ。必要ありませんから」
「ですが、領主である以上、配偶者は必須です!」
あら、浅ましい。今度は私の夫の座を自分の身内に座らせようって魂胆ですか。『配偶者は必須です』って、あなたたちの方が必死じゃないの。
「フフフ。王妹である私に、あなたたちの推す平民を娶れ、とでも仰るのかしら? それに、何なのかしら。最初から好き勝手に発言しておりますが、私はいつあなたたちに発言を許可したの? 貴族じゃなくなったあなた方でも一般常識くらい身につけていますよね?」
自分たちがすでに平民だと言われていたことを思い出したようで顔を青ざめました。最初から発言をせず、この醜い騒動に加わっていない常識を持つ方々の表情は少々疲れているようです。
そろそろ、この茶番劇を終わらせましょう。
「まったく、これは領主からの決定事項の報告であって、発言の許可を持たないあなたたちが黙っていれば二十分で解散できたことです。戦乙女の皆さん、申し訳ございませんがよろしくお願いします。では決定事項は覆りませんので、三日以内に
解散宣言をすると、戦乙女の方々がルルティカの伯父や初日に領主宅へ乗り込んできた男たちを連れて出ていきました。暴言を吐いた男たちのうち、内容に悪意を含む言葉を発した者も連れ出されました。このまま
困ったことに、解散を申し渡してもほとんど動こうとしません。お互い、王都へ行くか残るかを話し合っているのです。今まで一族で王都へ向かった方々が転封だと自慢していた事実もあるからでしょう。ここに残れば平民として生きていくことになり、王都へ行けば貴族に戻れて拝領もされる、と思っているのです。
一部は、どうしても私に婚約者を与えたいようですね。私には婚約者は不要だと目で見て理解してもらう必要があるのでしょう。
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