第71話


「クーデリア様、役に立たない元貴族院は閉鎖する方向で動いてもかまいませんか?」

「ええ、もちろんです。それと同時に官庁の閉鎖も公表しますわ」


廃国のすでに動いていない官庁なんて、正しく王都で動いている官庁の邪魔になるだけです。レヴィリア領はモーリトス国から独立するつもりはないのですから。


「明日、正式に元貴族たちの貴族籍を廃籍とします。同時に三日間の猶予を与え、領主である私の下で平民として生きるか拒否するかを選択させます。ここは国ではなく領地です。彼らが今まで私腹を肥やしてきた領地は、サンジェルス国の崩壊と共にモーリトス国の王領地となったのです。王都では不法占領として手続きをしています。王領地の生産や納税のすべてを、何の権限を持たない者たちが横領していたのですから」


私の言葉に皆さんも厳しい表情で頷きます。彼女たちの実家を含めて、国の崩壊と同時に爵位を返上した貴族もいるのです。その方たちは、王領地で今までの爵位を暫定的に使用することが許されました。そして今までの領地で変わらない領地経営を行なっていただきました。

王領地が私の領となったときに再び爵位を返上されました。


「こういっては何なんですが……。きっと半数近くの元貴族が拒否されるでしょうね」

「その場合、王都へ旅立っていただくことになりますわ」

「転封と勘違いして喜んでいきそうですわね」

「クーデリア様。元貴族たちに仕える者は、自らの意思で残れるようにしたいのですが」


たしかに長年主従関係だったとしても、貴族ではなくなるのですから従い続ける必要はないですよね。


「そうですわね。まず、家族で王都へ向かっていただきましょう。理由は……」

「三日間考えていただき、異を唱えたいのであればこちらが用意した移動方法で直接王城へ……」

「そうすれば、こちらで着飾って向かうため侍従侍女の介添えも不要ですわ」


様々な意見がでてきました。それを精査して当日の段取りも確認しました。あとは受け入れてもらう王都側にこちらの計画を伝えて瑣末な流れを確認するため、王城に遠話をかけました。

遠話の魔導具は一辺五センチの立方体で、真ん中に小さくて丸い魔石が入っています。魔力を流せば魔石がピンク色に輝き、掛けたい相手や場所に置かれた遠話の魔導具に声が届くのです。ちなみに遠話相手の魔石は水色に輝きます。

遠話に出られたのは出産後と育児を理由に公務を控えられているイリアお義姉様です。明日の着任の挨拶と共に、サンジェルス国の官庁の閉鎖と、領地全域に貴族の廃籍を宣言することも伝えました。


「それで、貴族から離れられない方たちをそちらに送りたいのですが」

「あら、だったら闘技場コロセウムはどうかしら。あそこなら広いし、が開けるわよ。どんな滑稽なステップを踏まれるのか、今から楽しみだわ」


ホームパーティーに土足で乗り込んでぶち壊した貴族かれらをイリアお義姉様は許しておりません。たぶんきっと、間違いなく……そのことも加味されるのでしょう。

────── イリアお義姉様の不敵で素敵な笑顔が脳裏に思い浮かびますわ。

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