第3話
処分に納得出来ずに手続きを拒否した場合も、修了式前日付けで放校処分となります。
さすがに今年度は別々のクラスに分けられたお二人でしたが、各クラス担当の事務職員が昨日直接学院を去るつもりか残るのかを確認したら、どちらも文句を言っていたそうです。
結局、このまま学院をやめたり手続きを拒否すれば二日後には放校処分になり、経歴に大きな傷が残ります。特に王太子殿下は『進級できない者』というレッテルを貼られた現経歴でも十分恥ですが。そのため放校ではなく『学年を落とされた者』というレッテルを選んだそうです。
そのような王子が、このまま王太子の立場でいられるはずがありません。兄たちを差し置いて王太子でいられるのは、正妃の子だからです。
残念な話ですが、廃嫡される危機感が王太子殿下ご自身には御座いません。
「王族として相応しくない」と国王陛下が仰られたら、廃嫡手続きが始まります。手続き期間中に、出される料理のどれかに『死ぬまで子が出来ない薬』を混ぜられます。廃嫡される本人には廃嫡手続きに入った事は伝えられないため、警戒されることはありません。そして手続きが完了すると、料理に睡眠薬を盛られ、眠っている間に後宮の奥にひっそり建つ『
この宮ではすべての魔法が効かないため、逃げ出すことは出来ません。
王太子殿下が廃嫡された場合、ウーレイ男爵令嬢も王太子殿下を廃嫡に追い込んだ罪を問われて、男爵が廃嫡手続きをするでしょう。そうなっても、お二人は常世の宮で『これで誰にも邪魔されなくなった』と喜ぶ姿が思い浮かびます。
ちなみに常世とは死後の世界を意味します。ここに入れられるという事は、世間一般では死んだこととされ、二度と
そして、いつ『病死』させられるのか怯えて生きていくことになります。ほとんどは譲位前に死を賜ります。前王の負債を新王に持ち越さないためです。
もちろん死者のため、手を下した者が罪に問われることはありません。遺体も……どこかに運ばれて焼かれて、骨は砕かれて捨てられます。
『存在しなかった者』なので、埋葬されないのです。
私が意識を別の場所に飛ばしている間も、目の前では、王太子殿下が下卑た笑みを浮かべたウーレイ男爵令嬢を抱きしめた状態で、私の罪とやらを笑顔で並べ立てていらっしゃいます。
お二人が現れる前から一緒に談笑していた親友の皆様も、扇子で顔の殆どを隠しながら冷ややかにお二人を見ています。私たちを遠巻きに囲む皆様も、驚きの後は私の親友たちと同じように女性たちは扇子で目以外を隠し、お二人に冷ややかな視線や軽蔑の視線を送っています。お二人の背後で見ている男性たちは見えないのを良いことに、お二人に向けて女性たちと同じ視線を送っています。
会場の人たちからこれほどの視線を受けていても、お二人は気付かないようです。
残念ながら、周囲より目立つのが大好きなお二人です。
脳内変換がお花畑で埋もれているため、「皆様から注目されてるぅ~。舞台の主役として頑張らなくっちゃ!」と張り切っている可能性が高いでしょう。
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