第4話 レジスタンス
「ちょっ...ちょっと待ってくれよっ!」
柄にもない大声を出して、僕は何処かへ行こうとしている彼女達を呼び止めながら駆け足で近づいた。
彼女が更に不機嫌そうなのは、顔を見なくても察知できた。
「何っ!?関わらない方が幸せだっつってんでしょ!」
彼女は歩く速度を全く緩めてくれない...。話しかけているのだから少しくらいは歩み寄ってくれてもいいのに...。
これ以上距離を開けられると、もっと大声を出さなければいけなくなるので僕は仕方なく少し小走りをして体力を犠牲にした。
「僕も一緒に同行させてほしい!」
この時は勢いと好奇心だけでこの大事な選択肢を決めてしまったが、のちの僕はこの選択をどう思っているのだろう?。
まあ、少なくとも後悔はしていないだろう。
なにせ決めたのは誰でもない自分自身なのだから。
「なんだおめえ、まさかミリーに惚れたのか?だったら止めときな、なんせ俺の娘だからなぁ」
そういいながら逞しそうな男は彼女の肩に手を置いて大笑いしている。
自分の言葉でここまで笑える人もどうかと思うのだが、もちろんそんなことはシワの一つですら表に出せなかった。
我ながら演技の才能があるんじゃないかと、うぬぼれてしまう程である。
そしてそんな訳ないのにさっきより不機嫌そうな彼女が不機嫌な眼光で睨みつけていた...。
仕方がないのでこの演技に自信を持ったばかりの僕が、本当に焦っている状態で焦っている演技をしつつ言い訳をさせてもらうことにした。
「ちっ、違う違う!君たちのやる事に興味が湧いたんだ。それに僕は毎日やる事ないし...。」
「暇だからついて来ようとしてんのっ?だったら尚更どっかいけバカっ!!」
彼女は見た目の割には口が悪い。
まあ両方とも悪いよりはましかな、と思いつつもたいして親しくもないのにバカはやめて欲しいなと僕は更に思った。
・・・・そして今更ながら先ほどの会話に引っかかる言葉があった気がしたので、
頭の中でR2ボタンを押して過去ログを確認する。
「あれっ・・・?さっき娘って言いませんでした?」
「おう、言ったぞ?コイツは紛れもなく俺の自慢の娘だからなぁ~。はっはっはっ!」
どういうことだ!? 親子だとしたら明らかにおかしい・・・。
・・・そう・・・全く似ていないと言うのは後にして、
「何で触れる程の距離にいるのに爆発しないんだっ?」
僕が興奮気味に大きめな音量で問いかけたのは、先日の【アレ】を目の当たりにしたからだと思う。
そしてその【結果】が今ここで起こるかもしれないという焦りもあるだろう。
まるで【食べ物を沢山見つけた蟻】の様に僕が一人であたふたしていると、
その自慢の娘とやらが哀れな視線を僕に突き刺しながら口を開いた・・・。
「まあ、驚くのも無理はないでしょうけど・・・そんなに慌てなくても・・・。」
そういうと彼女は微笑しながらそれをごまかそうと俯いた。
笑われるのは好きじゃないが、笑ってもらえるのは嫌じゃないなと思ったのはこの時が初めてだった。
それとも相手が彼女だったからなのかは解らないのだが、
少なくともすぐに隠そうとしたあの顔はいい印象だった。
彼女の小さな咳払いで場の空気がリセットされると更に話を続けた・・・。
「あたしたちレジスタンスはパレントじゃないんだよ。だからチップ管理も爆弾もないの。」
「俺たちゃあ正真正銘、愛し合って家族を作っていく『HEARTSハーツ』てんだ!最高だろっ?」
なにが正真正銘なのかは解らなかったが、それ以外もよく解らなかった・・・。
「愛し合って家族を作っていくってどういうことだ・・・?」
解らなくて当然だった・・・だって【知らない】のだから・・・。
人は教わってないことは知らなくて当然であり、解らない。
だが教わっていない事を知らない時でも、場合によっては解らないからといって責められたりする事もある。
だが、そんな時知っているフリをするよりも、
正直に解らないと言えた方が僕は好きだ。
某国のパレント オハラ @bobwall
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