第43話 宿命と冒険者 1-1.5

* * * * *


 お――て――――ださ――――――――。


 声が聞こえた。

 何もが存在し、存在しない虚無の果てから聞こえた気がした。

 有であり無でもあるこの世界において、肉体とは即ち全てであり、全ては肉体だった。

 自分も他人も光も闇も境界は何処にもなく、何もかもが同じだった。

 だがオカシイ事が一つある。

 全てが一つであるのに意識が、思考が、心が確かにそこにあった。

 無であるはずの世界に、有るべきでない有があった。

 

 『お願い、目を開けて!』


 ハッキリと聞こえた。

しかし先ほどとは違う場所から。

心は、思いは声へと向かって進んでいく。

まるで月に吠える狼のように、まるで太陽に向かう翼のように

瞬きが無いはずの瞳を突き抜けていった。

手が、足が、体が、頭が、次々に光に照らされて姿を現す。


 『これで終わりなわけがない、そうだろ!』


呼ぶ声が聞こえる。

声が呼んでいる。

行かなければならない。


「――要望を受諾します。」


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