第5話 無口&暴力エルフと王都オルガーへ

短い間だったが今日でじいさんとはお別れだ。お別れではない、また会いにくればいいんだ。


 今俺の隣には暴力エルフことルシアと無口エルフが絶賛殺意放出中で歩いている。


 経緯はこうだ・・・


「ヘデン、オルガーという王都へ行くがいい。あそこには多くの種族が暮らしていて、お前の見る世界が拡がると思う。これまでの鍛錬で戦い方は十分会得しているし、お前が持つ珍しいスキルについてもうまく開花したようだしな。」


 げっ、もしかして瞬間移動のことか?


 王都オルガー、ずっと森の中だから色んな種族が行き交う場に行ってみたい意欲はある。だが不安だ、だって色んな種族って、宇宙人みたいなのがいるんだろ?


 怖い思いはあるが、行ってみようと思う。



「という事なんだが。今日でフィーナたちとはお別れだな。」


 俺は王都に行く事をエルフたちに報告しにきた。今までいやいやだろうが魔法練習に付き合ってくれたルシアにも感謝しないとな。まあ殺意に怯える日が終わって寂しくなるような・・・


「お前も王都に行くのか。偶然だな。実はこの二人も近々王都に行かせる予定だったんだ。一緒に行くといい。」


「ぐっ・・」


 ビックリして喉から変な音が出た。件のエルフだちはもう目が点になっている。


「なんで?この二人はエルフの森の防人なんじゃ?」


「そうだが、防人は100年単位で交代する。この二人は150だ。一定の年齢を越すと、森を出て冒険者を目指したり、旅に出る者もいる。それか、家族を作り穏やかに過ごす者もいる。」


 へえ、なんか少し感動したわ。歴史を感じるような。エルフは偉大だな。


「王都に行くってことは、二人とも冒険者に?」


「彼女たちは冒険者志望だ。ルシアが冒険者になりたいと言ったらアルフィーも付いて行くと言ってな。」


 ルシアは顔を赤くしてプンプンしているが、無口なアルフィーは顔を赤くしてクヨクヨしていた。


「俺も冒険者になってみようかな。」


「真似事をするな、虫唾か走る!!フィーナ様の言いつけだから王都までは付いてきてもいいが、到着したら解散だ。」


 そんなはっきり。なんでいつも怒ってんだろう。更年期障・・いやいや、やめとこう。


 じーさんは俺に眼帯と高価そうな金属の槍を餞別としてくれた。スキル発動の時に左目から漏れ出す青い炎を隠した方がいいとのこと。そして槍はじいさんの現役時代の戦利品で、スキルや魔法を槍と連動して使えるとても便利な武器だ。


 そんな経緯があって今ここに至る。


「・・・」

「・・・」

「・・・」


 無言である。そんなに嫌わなくても・・・


「あのさ、王都までどれくらいかかるんだ?」


「三日」


「・・・」


 会話は以上だ。


 二人ともブスっとしていると勿体ない気がするが。エルフが笑うってどんな時だろう、てか笑うのか?見てみたいな。


 エルフ二人組は水浴びをしに湖へ言った。俺は一歩でも動いたら殺すと死刑宣告。


 エルフは決して他の種族の前では露出しないらしい。高潔で潔癖、見惚れてしまうほど美しいか・・。そう思いながら、睨みつけてくるルシアとクヨクヨしているアルフィーを思い浮かべた。やましい事は考えていない、それは本当だ。


「モンスター?」


黒い影が見えた、二足歩行でゆっくり移動中。っておい!そっちはルシアたちが水浴びしている!あいつらの純潔を守るために行くしかない!!


 ようやく発揮できると、短剣を投げ瞬間移動を試みたのだが、移動のタイミングが遅すぎて湖に落下。もうその後の事は覚えていない。


 気付いたら俺はマントで簀巻きにされ木に縛りつけられていた。


「て、天国?俺死んだのか」


「外道は所詮外道だ。水浴びを覗くには飽き足らず飛び込むなんて。」


「最低・・」


 アルフィーがしゃべった?!顔に合っておとなしい声だな。


「待ってくれ、何かがいたんだ。二足歩行で黒っぽくて見えなかったが。信じてくれって」


「ゴブリンの事か?」


「はい??????」


 これは今日一番盛り上がった会話だ。


 俺はゴブリンのせいで簀巻きにさせられていると言うのか。もうどうにでもなってしまえ。何をどう言おうと俺は今日この簀巻き状態で夜を越すのだから。



「起きろ外道。」


 簀巻き解除。


 昨日の事は何も言ってこないし、俺抜きで楽しく会話しているようだ。


 何処までも続く森の中、風が背中を押す感じ、なんだか心地いいな。生まれて初めて覚えた感覚だ。エルフ二人組の背中を眺めながら、彼女たちの未来を想像してみる。


 800歳以上は生きるんだよな、じゃあ他の種族と友達になったり、恋人同士になったりしたら先にいなくなってしまうって事だよね、そしてそれが彼女たちの長い人生の中のごく僅かなひと時。どんな風に悲しむんだろうな。



二日目三日目と些細な事での口喧嘩で会話は弾んだ。モンスターというとゴブリンなどすぐに倒せるモンスターくらいしかいなかった。


「ここがオルガー。」


 大門をくぐり抜けそこには、俺が今までにみた事のない光景が広がっていた。


「う、宇宙人?!」


「うちゅうじん?間抜けな声を出すな!」


耳!

尻尾!

牙!

デカイ!

小さい!

とんがり帽子?!


コスプレイヤーなのか??誰か俺に砂糖を。脳がもう働いていない・・・。

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