これからも、ずっと
それから、1月ほどが経ち、辺境伯の屋敷の整理も済んだので、私たちはそちらに生活の拠点を移している。
屋敷に勤めていた使用人に関しては、私が直接面接なり面談をして問題がなさそうな者だけを残した。さすがに新しい領主が私、と言うか若い女性だからと見下すような者を雇う理由はない。なので、そのような使用人にはさっさと退職していただいた。お金の無駄だしね。
それで、先ほどまで新しく辺境伯になったことを領民に知らせるための演説を行っていたのだけれど、本当に疲れた。いや、気疲れと言うか、精神的に辛かったと言うのが正しいかしらね。
「疲れたわ、ロイド」
「いや、疲れるのは最初から分かっていたことだろう?」
「そうだけど。視線がね」
確かに、こんな娘がいきなり領主になりました、なんて言われてすんなり受け入れられる訳もないのだから当然だけど、演説している最中の疑惑の目が辛かった。まあ、その後のパフォーマンスで魔法を盛大に放ってからは、疑惑は多少改善されたようだったからよかったのだけど。これは今後の課題と言えるわね。
「まあ、それは今後の努力でどうにかすればいいんだよ。レイアにはそれをする力があるんだからさ」
「うん。ありがとう」
慰めるように私の頭をロイドが撫でる。もう、これだけで疲れが吹き飛びそうだけど、やっぱりこれだけでは足りない。なので、今夜はもっとロイドに甘やかしてもらうことにしよう。
とりあえず今後は領主として、所有することになる領地の経営を進めて行かないといけない。当たり前だけど私には、領地経営の知識はないし、ロイドも持ってはいない。
そのため、国王のコネでその辺りの教師と執事、メイドを兼任できる人材を1人ずつ見繕ってもらっている。さすがに国王の紹介なのでこの2人は人格に問題は無いことはわかっているのでそのまま採用した。と言うか、おそらくこのまま行くと、執事長とメイド長も兼任することになるかもしれないわね。
「ロイドの方にも教育係が付いているけど問題なさそう?」
「うん、まぁ。割とスパルタだけど問題はないな。結構わかりやすく教えてくれているし、さすが国王が紹介してくれた人って感じだ」
「それは良かったわ。いくら優秀だからって合わない教師に教えてもらっていると効率が悪いからね」
「多少、俺に合わせてくれていると思うよ? そう言う意味でもかなり凄い人だと思う」
「あぁ、そう言うのもあるかもしれないわね」
おお、ロイドは高評価なのね。まあ、私の方もかなり良いとは思うのだけどねぇ。ただ、どうしてか毒が強いと言うか、言葉に棘があるのよね。もしかしたら国王が何処かから無理やり引き抜いて来たのかもしれないわね。それに、私ならこの程度なら問題ないと判断しているのかもしれないけれど。
「何にしろ、問題が無いようで良かったわ。最初の段階で躓くのは避けたかったからね」
「だな。ただ、こうも勉強漬けになると体が鈍るんだけど」
「それは、まぁ、仕方ないわね。ある程度の区切りが付いたら自由時間を作ってくれるらしいから、それまでの辛抱ね」
「了解」
区切りが付いたらとは言われているけれど、一旦どこかで休みを作った方が良いかもしれないわね。私も碌に動けなくてストレスが溜まっているし、要望くらいは出しておいた方が良いかしらね。
まあ、ロイドが一緒にしてくれるのなら私はどんな状況でも頑張れると思うから、いっそのこと勉強部屋を一緒にしてもらうのも良いかも? ……いえ、そうしたら集中できなくなるかもしれないわね。止めておきましょう。
ともあれ、これからロイドとの生活を十分に楽しむために頑張っていきましょうか。
「ロイド」
「何かな?」
「貴方は今、幸せですか?」
「え? いきなり何?」
「私は幸せです。多少面倒な事はありますけれど、ロイドと一緒に居られるだけで幸せなのです。貴方はどうですか?」
「ああ、そう言うことか。そうだな、俺もレイアと居られれば幸せだ。確かに面倒なことになってはいるけど、それも含めてレイアと一緒に出来るのなら問題はないからね」
「良かったです」
そう言って私はロイドを抱きしめる。それに合わせてロイドも優しく私を抱きしめてくれた。
ああ、本当に幸せだわ。私の所為で苦労をさせてしまうと言うのは申し訳ないのだけれど、一緒にしてくれると言ってくれたのは本当に嬉しくて幸せだわ。
これからも、ロイドと一緒に楽しくて幸せな生活が送れるように頑張っていきましょう。そして、これからも一緒に歩んでくださいね、ロイド。
そう思い私は一層ロイドを強く抱きしめた。
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