話を詰める


 控室に戻ってからは割とすんなり事は進んだ。

 貴族籍を得るための書類を記入したり、辺境伯爵家に現在勤めている使用人の扱いについての話を詰めたりしていった。

 正直、この辺りの話は面倒なので国王に丸投げしたかったのだけど、さすがにこの辺りの部分を丸投げすると、後々不都合が出てきそうだったからしなかったけれど。


 それと、ロイドにちょっかいを掛けるような輩は出てこなかったみたいだ。途中、部屋の清掃のためにメイドが1人入って来たらしいけど、ロイドがその必要は無いと言うとそのまま出て行ったとの事。何かすこし怪しい気はするけれど、特に被害がないのでとやかく言うつもりはない。


 そして、今は今後の予定について話し合いをしている。


「では、まだ辺境伯の屋敷は空かないと言うことでしょうか」

「ああ、さすがに証拠となりそうな書類などだけでなく、家財道具などを含めて移動させるには時間が掛かる。それにそれらを売ってスタンピードの被害に当てる予定だからな」

「そうですか」


 国として色々やらないといけないのはわかる。それにこういった保障をしておかないと被害を受けた人たちの不満は溜まるし、領主なり国への不信感を募らせるのもあまりよろしくない。


 ただ、授与式を行った以上、直ぐにそこへ移動できないと言うのは如何なものか。少なくともその辺りの問題を解決した後に行うべきだったのではないだろうか。


「まあ、色々と済んでいない段階で式をしたのは多少申し訳ないと思っているが、こちらとしても不穏分子を排除できるまたとない機会だったのだ」

「じゃあ、あの貴族は」

「態と呼んだやつだな。本来なら呼ぶほどの者ではない」


 あぁ、やっぱり予想通りだったと。確かに他に集まった貴族と比べたら地位も低そうだったからそうなのでしょうね。


「まあ、もう過ぎたことなので良いです。それよりも、まだ済んでいない部分を早めに進めてください」

「わかっている。それと、お前たちはこの後、どうするつもりだ? 少なくとも直ぐには終わらないのだが」

「これと言った予定はないですが、今後のために辺境伯領の方を見て回ることにします。これから私たちが収める領地ですし、なるべく早く領地のことを知っておいた方が良いと思うので」


 そう言ってロイドの方を確認すると、その予定で問題ないと言った表情で頷いてくる。


「わかった。しかし、連絡の方はどうする? さすがに場所を転々としていたら難しいのだが」

「傭兵ギルドには定期的に行く予定ですので、そちらの方にしていただければ気付けると思います」

「なるほど。ではそのように通達しておこう」

「よろしくお願いします」

「ああ、それとお披露目の予定も決めておけよ。さすがに公の場で、領民に対して領主が変わったことを報告する必要があるからな」

「ええ、そうですね」


 面倒だけど、さすがにしないと駄目よね。いつの間にか領主が変わっていたなんて状況は問題しか生まないし、何かしら事業を進めるにも知られていないと話が進みづらくなるからね。

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