国王の策略
王都に来てから2週間が経ったところでようやく王宮から書状で連絡が来た。
連絡の内容は、スタンピード関連のことと、爵位授与の日程。スタンピードのことに関しては、それに関係した貴族の捕獲が完了し、処罰の内容についてもほぼ決定したとの事。日程に関しては2日後の昼に授与式をするため、王宮に来るようにと書かれていた。
え? 2日後? いくら何でも連絡が来てから予定日までの時間が少ないと思うのだけど。
何故こんな日程になったのか。ああ、いや、たぶん授与式と書いてあるから、王政を担っている他の貴族の都合とかだな。ただ、さすがにこんな急な日程だとは想定していなかったのだけど。
ん? 書状の下部に追記らしき物があるわね。えーと、服装などは整っていれば特に問題は無しと。一緒に居た男……ロイドに関しては、連れてこない方が良い。正式な国王との謁見に男連れで来ていると蔑まれる可能性あるため…か。
まあ、控室に待機していて貰うつもりだけど、さすがに授与式の所に連れて行くつもりはないから問題はない…わよね? まさか、控室に連れて行くのも駄目なんてことは無いだろうし。
服装は整っていればいい、ってことは別に今着ているような過度な装飾はないけど作りは良い物なら大丈夫かしらね。でも、何かしらね、そこはかとなく嫌な気配がしてくるのだけど。
まあ、でも、それでいいと言うのならそれに従うまでだけど。
そうして、ちょろっと準備をしているうちに授与式当日になった。
「ロイドはここで待っていてください」
「事前に聞いているからそのつもりだよ?」
「誰かが入って来ても、何を言われても流されないで下さいね?」
「ええ? いや、あー、うん。わかったよ」
王宮内は魔境ですからね。最近は少なくなったらしいけれど、今でもハニートラップとかはたまに発生しているらしいから。ロイドが流されるとは思えないけれど、何が起こるかわからないから、予防線は出来るだけ打っておかないと。
じゃあ、何で連れて来た、とも思うけどそれは出来るだけ一緒に居たいからに決まっている。
そして、私を呼びに来たメイドの後に着いて授与式の会場に向かうことになった。
授与式の会場…と言うか場所は謁見の間だった。まあ、国王から直接爵位を授与されるのだから当たり前か。
そうして、少しの間謁見の間の隅で待機をしていると、国王に呼ばれ私は国王の目の前で跪いた。そしてそれを見届けた国王が口を開いた。
「この度のスタンピードを収束させた事、誠に大儀であった。褒賞として辺境伯の爵位を其方に授ける」
「承りました」
「よろしい。この決定に異議がある物は居るか?」
む? 何故このタイミングでそう問いかけるのだろうか。授与式をしていると言うことは表立って反対している貴族は居ないと言うことではないのかしら? それとも国王の独断だった?
そんなことを思いつつ、周囲の反応を探る。どうやらこの国王の発言は予定外の物らしく、国王の近くに立っているおそらく重鎮の貴族は少しだけ狼狽えているようだ。
「私はその決定に反対させていただきたい」
そう言って参列していた貴族、と言っても十数人だけだけど、その中から比較的若い人物が国王の前に進み出て来る。
それを見た国王はその貴族にはわからない程度の小さな笑みを浮かべている。
あ、これってもしかして、私、餌として使われた?
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