これからも (終章)

手続き中、故に暇

 

 辺境伯が国王に連れていかれてから、スタンピードの規模は一気に縮小していった。

 元凶が居なくなったからと言うのもあるけれど、本格的な物になる前に止めることが出来たからこそ、直ぐに収まった訳なのよね。

 いくら人工的に起こしたスタンピードだったとしても、一度本格的に始まってしまったら、原因を排除したところでスタンピードは止まらないものだから。

 たぶん、これを見越して国王は私に早く行けと言ったのだと思う。


 結局のところ、私としてはより良い結果になったことは事実だけれど、どうもこの国に戻って来てから国王の掌の上で転がされていた感じがして、何とも言えない気持ちになっているのだけど。


 それで、国王からの私に対する褒賞、と言うか貴族籍に関する事とかはまだ終わっていない。いや、まあ、辺境伯に繋がっていた他の貴族とかの調査や確保、それに関する手続きとかに時間が掛かっているのは理解している。

 そもそも、まだ1週間も経っていないのだから当たり前だけど。


 で、正直私は今はかなり暇になっている。やることがないのよね。

 褒賞の件で何時呼び出されるかわからない以上、下手に行動していると呼び出しに対応できないから仕方がない。


 ただ、褒賞の授与とかは王都で行われるので、私たちは今王都に居る訳よ。

 ぶっちゃけこの国の王都って政治を主にする場所だから、娯楽が多い場所ではないのよね。一応娯楽施設はあるにはあるけれど、それも何日も連続でやれる程面白い物でもないし、基本的に息抜き用の施設だから一度行ったらそれで十分と思う程度の物しかないよね。


「ロイド、飽きたわ」

「いや、それを俺に言われても」


 うん。それはわかっている。……このまま、今泊っている宿でロイドとイチャついていても良いのだけど、と言うか今まさにそんな感じだし。


 今は2人でベッドに寝そべって、私がロイドの背中に抱き着いている感じね。もういっそロイドとあれやこれやするのも…いえ、駄目よね。さすがにまだ日が高いし、そう言う目的の宿ではないのだから、宿に迷惑、と言うかモラル的に問題よね。


「…暇ね」

「そうだなぁ。と言うかここまで体を動かさないと、確実に今後の活動に支障が出るな」

「そうねぇ」

「なら、散歩でもいいから外に出て体を動かそうか」


 散歩…動かないよりましかしらね。もう結構王都はここ数日で歩き回ったから、何か新鮮味のあるものは見つからないだろうけれど、宿の部屋でじっとしているよりはマシかしらね。


「そうね。そうしましょう」


 そうしてベッドの上から体を動かし、軽く支度をしてから宿を出る。


「ん?」


 宿を出て直ぐに前を歩いていたロイドが立ち止まって私の方へ振り向いた。何でこんなところで立ち止まるのか理解できなかった私は首を傾げる。


「じゃあ、行こうか」


 そう言ってロイドが私に向かって腕を差し出した。


「あ、うん!」


 そう言えば王都に来てから手を繋いだり、腕を組んで移動したりしていなかったことを思い出し、私は喜んでロイドの腕にしがみ付いた。


「え、ちょっ!? いきなり体重をかけるのは止めて」

「いいじゃないの。ほら行きましょう?」


 そして、この日に王宮からの連絡が来ることは無かったけれど、私としては充実した時間を過ごすことが出来た。

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