閑話 ロイド

 

 俺は保有魔力が少ない。侯爵家の血筋にも関わらず、男爵家の平均量程度の魔力しか持っていなかったのだ。


 我が家は代々騎士団の家系だったのだが、保有魔力が少ない以上、一度に使用できる魔力量が多くないため騎士団に入隊することは叶わない。

 そのため、自警団に近い役割を持つ騎士団の下部組織に入隊するも、侯爵家であるにも拘らず保有する魔力量が少ないことを理由に、他の隊員に良い顔をされず馴染むことは出来なかった。

 このままでは隊全体の不利益になると考え自ら組織を辞めると、それを知った父上に出来損ないは要らないと家を追い出された。


 それからは傭兵ギルドに登録して細々と資金を溜め、何れ国外にでも移住しようと考えていた。

 

 たまたま、同時期に傭兵ギルドに配属された子爵家出身だと言う令嬢に言い寄られていたけれど、単純に好みではなかったし、問題行動が目に見えて多かったから出来るだけ関わりたくはなかった。


 傭兵生活も半年を過ぎたころには、その令嬢に俺の行動スケジュールが把握されてしまっていて、ギルドに行くと必ず俺の対応をしようとしてくる。正直、周りに迷惑だから止めて欲しいけど、どう言っても令嬢は聞き入れることは無かった。


 そして、またしばらくした頃に依頼を終えて、ギルドに報告しに行った時も俺の対応をしたのはその令嬢だったのだけど、その隣の受付で何故かギルド長が見知らぬ女の子の対応をしているのが目に入った。

 何故、ギルド長が直接対応していたのかはわからなかったのだが、まあ、受付にこの令嬢が居座っていたことから、これ関係のことなのだろうと判断した。


 そしてどうやらギルド長が対応していた女の子はギルドに登録するらしい。だけど、どう言う展開なのか一切理解できなかったのだけど、何故か模擬戦の相手が令嬢に決まったようだ。


「よし! ロイド、今から私は模擬戦してくるわ! 華麗にあいつを倒すから見に来てよ! そしてそんな私に惚れても良いのよ?」


 令嬢から模擬戦の前にこう言われたのだが、こんなことをして惚れるような男はどう考えても気が触れているとしか思えない。これを聞いて俺は、本当にこの令嬢とは関わりたくはないと再認識した。


 そこからは、まあ、一気に令嬢の立場が急落して、模擬戦をしていた訓練場から令嬢が立ち去って行った。これに関しては、ざまぁと思うよりもこれで関わらなくても良くなると言う安堵の方が大きかった。


 模擬戦は女の子の圧勝で終わった訳だけど、観戦が終わって訓練場から出ようとしたところでその女の子から声を掛けられた。

 

 はっきり言ってこの声掛けが俺の転機だった。いや、この女の子に会えたことが転機であり幸運だったと言うことだな。


 そして、いきなり鎧の内側に手を入れられるとか、抱き着かれるとかをされたものの、俺の魔力が少なかった理由もわかった。今まであった家柄の割に魔力が少ないと言うコンプレックスを払拭することが出来たことは、感謝しかない。


 それからその女の子、レイアと一緒に行動することになり、隣国のとは言え国王と接触する等のことがあり、苦労することもあったけどそれも充実した日常に溶け込んで行った。


 本当に俺がレイアに合えたことは幸運で会ったことを実感する。もし会うことが無かったら、今の俺は居ないし、こんな充実した日々を送ることもなかっただろう。


 だから俺は、俺を好きだと言ってくれるこの可愛い女の子を幸せにしようと心に誓った。

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