愚かな元義妹、リターンズ
「この辺りでいいかしらね?」
魔の森から500メートル程離れた場所に立つ。正面には魔の森の出入り口と呼ばれる大昔に作られたとされている道が続く場所が見える。
まあ、道と言っても既に使われていないから、ほぼ一直線に背の高い草が生えている場所なのだけれどね。
そこから奥行きと深さが10メートルくらいの堀を、その出入り口を中心に半円を描くように魔法を使って作っていく。さすがに端から端までが1キロ程離れているので、一回で作り切るのはどう考えても無理なので数回に分けて堀を作っていく。
「うわぁ、本当に出来ているし」
堀が大体完成したところで、周囲の見回りをしていたロイドが戻って来たのだけど、貴方見回り中も作っているのを見ていたわよね? 何で今更驚いているのかしら。
「何かあったの?」
「いや、何もなかった。多少魔物が居たくらいだけど、それは堀の中に入れてみた」
「いつの間にそんなことをやっていたのよ。って、まあそれはいいわ。それでどんな感じだった?」
「堀としては問題はないな。落ちたらほぼ死ぬ感じだ。ただ、住民が落ちない様に何かしらの対策は必要だと思うけどね」
ああ、確かにそれは必要ね。スタンピードが起きている状態だから殆ど人は来ないけれど、偵察とかで来る場合があるからまったく人が来ないという訳ではないし。
「それは必要ね。とりあえず、腰くらいの高さの塀でも作っておけばいいかしら」
「そうだな。でも、魔力は大丈夫か? レイアの保有魔力が多いことは知っているけれど、さすがにこれだけやっていれば足りなくなるんじゃないのか?」
「うーん。今の所まだ大丈夫ね。塀を作るくらいなら問題なく出来るわ」
残りの魔力量は大体半分くらい。堀と違って塀ならそんなに大きくないし、そこまで魔力は消費しないから問題はない。
「大丈夫ならいいけど、無理はしないでくれよ? って、塀なら俺も作れるから手伝えるか?」
「そうね。高さ的にもそこまでではないし」
「なら手伝うか。って言っても、レイアの3分の1くらいの量が限界だろうけど」
「それでも十分よ。お願いしても良い?」
「ああ」
これは一旦端まで行って戻りながら作った方が良いかしらね? それとも作りながら行って帰りに確認しながらの方が…いえ、早く済ませた方が良いから端まで一気に行って戻りながら作った方が良いわね。
そうして二手に分かれて落下防止用の塀を作ることになった。
塀を作ることは割と早く終わった。ロイドの方も私より多少時間は掛かったようだけれど、問題なく出来たようで先ほど話していた場所に戻って来るのが見えた。
「あぁ、やっぱりレイアは早いな」
「年季の違いね。その内、ロイドも早く作れるようになるわよ」
「そうだと良いけど」
まあ、また塀を作るような状況になるとは思えないから、早く出来るようになったかどうかの確認は難しいと思うけれど。
「ちょっと! 何よこれ!」
いつの間にか住民が偵察に来ていたのか、近くでそう声が上がった。状況を説明しようと周囲を見渡したのだけど、人の影は見当たらなかった。
あれ? 確かに人の声が聞こえたと思ったのに、もしかして幻聴?
「ちょっと! 聞いているの!?」
ああ、やっぱり声が聞こえる。でも、おかしいわね。堀の向こう側から聞こえたような気がしたのだけれど、堀を作る前に確認した時は誰も居なかったはずよね?
そう思いつつも声がした方を確認する。するとそこには多くの魔物を引き連れた見知った顔の人間が立っていた。
「貴方、何をやっているの?」
「え? あ!? ああ貴方! 何でここに居るのよ!!」
そこには公爵家を追放されたはずのアイリの姿があった。
国王から公爵家から、と言うか今は伯爵家だけど、追放されたと聞いていたから、どこぞで野垂れ死んでいると思っていたけれど生きていたのね。まあ、魔物を引き連れていると言う段階で大罪人だし、結果は変わらないと思うけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます