辺境伯が行方不明って、明らかにおかしい


 近くの町に着いて直ぐにその町にある傭兵ギルドに向かい、そこでスタンピードに関する情報と、今まで倒した魔物を引き取ってもらった。まあ、魔物は買い叩かれたけど、むしろタダじゃなかっただけましかもしれない。


 ただそれよりも、気になると言うか確実に重要な情報を手に入れることが出来た。

 

 それは、半年くらい前から領主の行方が分からなくなっている事と、辺境伯領に所属している騎士団がスタンピードが起き始めているにも拘らず、一切動いている様子が見られないという物だ。


 これは明らかにおかしい。本来なら率先して魔物を食い止めなければならない騎士団が動いていない。と言うことは、その上、領主が動くように指示を出していない、もしくは動かないように指示を出していると言うことだ。


 でも、確か辺境伯って国王の補佐していなかったっけ? 私、国王から何も聞いていないのだけれど。あ、いや、もしかして契約の条件が問題ないって言っていたの、これか?


 あの契約って主に私を兵器として利用するって内容だけど、魔法契約である以上、私にも利があるようになっているのよね。


 その利益についての内容は簡単に言うと、私に辺境伯の籍を明け渡すという物。

 何事もなければ侯爵にするところを辺境伯にする、と言うのは少なからずおかしいと思うかもしれない。基本的に辺境伯よりも侯爵の方が格は上だし、権力もあるから。

 

 ただ、その分貴族間の付き合いは増えるし、領地もないから基本的に王都住まいになる。なので、確実に私の自由は減る。

 それに比べ、辺境伯は基本的に王都には居ないから貴族の付き合いは少なくなるし、領地を動き回るくらいの自由もある程度は保障出来る。


 あ、いえ、現辺境伯は王都に居たけどね。それは貴族であるにも関わらず、貴族としての生活が出来ないと文句を垂れた現辺境伯が無理やり王都に移り住んだ。と言うのを、何時だったかどこかで聞いた記憶がある。


 それに、ここ数十年平和だったせいで、本来辺境伯にあるはずの国境外から来る他国や魔物の侵入を防ぐと言った役割が、一切果たされずに暇だったと言うのもあるかもしれないけど。


 あ、もしかして、これが今回のやつに繋がる? 何か権力欲が強い人だったらしいから、現国王の方針には真っ向から反対しそうだし、その所為で放逐されたのかも? それで八つ当たりみたいな感じでスタンピードガン無視とか。

 …いや、さすがにそんな子供みたいなことはしないか。


 うーん、まあ、それは今関係ないからいいわね。


「ロイドは何か新しい情報はあったかしら?」


 ギルドの方で一旦情報を貰った後、ロイドとは別行動をして情報を集めていた。ただ、ギルドで聞いた以上の情報は無かったのだけれど。


「目ぼしい物は何も。その感じからしてそっちもなかったのか」

「ええ、これと言ったものはないわね。ギルドで聞いた通り、各地域、個別で対応しているようだから、もう少し森に近付いて対処した方が早そうね」

「まあ、そうだな。地図も買ったし、急ぐなら早めに行く?」

「うーん、いえ。今日は一旦ここで休みましょう。今から移動しても、ここからもう少し行ったところにある町に着くころには暗くなっていると思う。それにそこで宿が取れるかわからないから」

「ああ、確かにそうだね」


 一気に移動しても宿が取れずに休めませんでした、と言うのはさすがに辛いのでそれは避けたい。なので、今日はこの町で宿を取ることにする。と言うか元からここで休むつもりだったのだけれど。

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