馬鹿な騎士、剣を振るう
依頼料と魔物の取引代で大分金額を稼ぐことが出来た。この金額自体はここ2週間くらい大体同じ程度だけど、それでも1日の稼ぎとしてはかなりの金額だ。
「この後はいつも通り魔法の練習にしますか? それとも別のことでもします? 一応ロイドの魔法技術自体は学校を卒業できる範囲を超えていますけれど」
「あー、どうするかなぁ。魔法を使えるようになったからもっとうまく使えるようになりたいところだけど、これ以上レイアに迷惑はかけたくないし」
「だから、毎回言っていますけど、そう言う遠慮はいらないです。ですが、なるほど。ロイドはもっと魔法の練習をしたいと言うことですね」
「うん、まぁ…そうだね」
ふふ、実によろしいです。
これ以上の技術を教えるとなると今まで以上に付きっ切りで指導することになるんです。ええ、もっと手取り足取り教えることになるのです。
実によろしい!
「では、いつも通り街の外に行きましょう」
「ああ、そうだな」
私たちはそんなことを話しつつギルドを出た。
ギルドを出るとすぐ目の前を数人の騎士が横切って行った。どうやらちょうど街の見回りの時間だったようだ。
「うおっ?」
何やら今通り過ぎた騎士の誰かが声を上げた。
「ん? 何かしらね?」
何かがあったのだろう、そう思って騎士の方を見てみると声を上げたと思われる騎士がこちらを見ている。いえ、正確には私の隣に居るロイドを見ている、と言った方が良いかしらね。
「おお!? もしかしてロイドちゃんじゃねぇ?」
そいつは騎士の恰好をしていると言うのに、かなり軽い感じの言葉づかいでこちらに声を掛けて来た。
うわぁ、男にちゃん付けとかキモイわ。もしかしてそう言う? と言いたいところだけど声色からして明らかに人を小馬鹿にした感じだったから、おそらくそうではないわね。
ああ、そう言えばロイドは昔騎士団に所属していたなんてこの前言っていたわね。何かいろいろあって辞めたとか言っていたけれど、もしかしてこれが原因?
「魔法の使えないロイドちゃんはこんなところで何しているんだい? ああ、そうそう。家、追い出されたんだって? マジうけるんだが!」
あ、うん。確実にこれが原因だ。と言うかこいつ周りに人がいるのにお構いなしに騒ぐわね。騎士としての矜持とかはないのかしら?
「仕事中だろう。こんなところで無駄話をしていていいのか?」
「いいんだよ。もう帰るだけだったし、平民がどうなろうと知ったことじゃねえからな。まあ、別に問題があっても見なかったことにしてんだけどな!」
こいつも貴族第一主義のやつか。通りで周りのことを気にしていないと思った。
おそらくこいつ、平民のことを人間だと思っていないのね。だから気にしないでいられると言うことかしら。
「およ? ロイドちゃんのくせに可愛い子連れてるじゃん!」
うわっ、こっちに矛先が向いたんだけど。止めてよ、貴方なんかに見られるならロイドにじっくり見てもらいたいのだけど。
「おい、彼女は関係ないだろう」
「いいや、ロイドちゃんと一緒に居るなら俺らの所に連れていってもいいんだよ」
意味が分からない。何処をどう繋げればそう言う言葉が出て来るのかしら。
「ちょい、胸が小さい…」
「あ゛!?」
「ひょえっ!?」
おっといけない。ロイドの前ではこう言うのはいけないわね。冷静になるのよ私。
「ううんっ。嫌ですよ。何で貴方ごときに付いて行かなければならないのです? 冗談は態度だけにしてください」
「はぁ? 何言ってんのお前。貴族に逆らうのか?」
「嫌ですね。そんな少ししか魔力を持っていない方たちが貴族何て、何を言っているのですか?」
「こんのっ! 平民ごときがそんな口をきいてただで済むと思っているのか!」
自身の保有魔力が少ないこと自体は知っているのか。
まあ、騎士団に所属している半分は魔力が低いせいで所属しているとは聞いていたけど、こんなに魔力の少ないのも居るのね。こいつの魔力量って、元のロイドの倍くらいしかないのだけど、よくそれでロイドを馬鹿に出来たわね。
「あら、ごめんなさい。そんなに気にしているなんて思わなくて」
「ふざけんなっ!」
あ、さすがに煽り過ぎたようね。こいついきなり剣を抜いて切りかかって来たわ。まあ、魔法を使えば問題なく防げるから何の問題もないのだけど。
そう思って魔法で障壁を出そうとすると、それよりも早く横に居たロイドが私と馬鹿騎士の間に割って入って来て、馬鹿騎士とロイドの剣がぶつかり合い鈍い音を周囲に響かせた。
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