とても好み…だわー

 

 これ、魔力を外部に放出するのが上手く行っていないやつね。魔力放出障害とか、そう言う感じのやつ。これは確かに外側からだとわかりづらいわね。 

 完全に放出できないとかだったら体調を崩すこともあるからわかる場合が多いのだけど、多少でも外に放出できるとそう言うのも滅多に起こらないしほぼ見つからない。


「うーん。放出障害ね。治せなくはないけど」

「え……っと何を言って?」

「貴方の魔力は一度に出せる量が制限されているって話よ」

「はい?」


 まあ、今まで自身の魔力は少ないと思っていたのだから、いきなりそんなことを言われても理解は出来ないわよね。


「おい、どうした? 後ろについて来ていると思ったらいなくて少し焦ったじゃないか」


 あ、ギルド長のことを忘れていたわ。


「ごめんなさい。この人の魔力を見て気になってしまったのよ」

「ロイドの魔力が何かあったのか?」

「簡単に調べてみたら保有魔力の割に放出量が少ないみたい。だからおそらく放出障害だと思うわ」

「放出障害?」


 え? 知らない感じなの? まさか、事例は少ないけど結構有名な症状だと思っていたのだけど違うのかしら。


「一度に出せる魔力が制限されている症状よ。放出不全なら聞いたことがあるかしら? それの少し症状が軽い奴ね」

「放出不全なら知っているが、放出障害は初耳だ」

「そうなのね。でも、障害の方も有名だと思うのだけど、聞いたこと無いかしら。隣国の国王が持っていたものなのだけど」


 その隣国って、私が生まれたと言うかこの前まで居た国なのだけどね。


「それなら聞いたことがあるな。しかし、そんな名前のものだったかは記憶にない」

「ああ、もしかしたらその辺りは正確に伝わってこなかったのかも」

「そうか。で、ロイドが同じ症状を持っていると?」

「そうね」

「えっと、どう言うことなのでしょう?」


 自分が蚊帳の外状態で話が進んで行っているのに戸惑っているのか、ロイドが説明を求めて来た。


「要するに、貴方は隣国の国王と同じような症状を持っていて、それを治す手段がある。と言うことよ」

「はぁ、え? と言うことは、俺も周りの貴族と同じように魔法を使えるようになると言うこと?」

「そう言うことよ」

「マジで?」

「ええ」


 ロイドが信じられない、と言った感じで私に何度も確認を取って来る。いや、今まで使えなかった物をいきなり使えると言われたら直ぐに信じられないのはわかるけど、何度聞いて来ても答えは同じよ。


「まあ、治す時に激痛が走るらしいから、治すかどうかは貴方次第だけど」

「…マジか」


 さっきまで少し嬉しそうな声だったのに、いきなり冷静な声が返って来た。さすがに激痛が走ると言われたら尻込みもするか。


「どうする? 今やる?」

「え? そう簡単に出来る物なのか?」

「ええ、まあ。やったことあるし、直ぐに終わるわ」


 そう。一回だけだけどやったことがある。相手、国王だったけど。

 これやったせいで、王子と婚約させられたのよね。

 最初は凄く後悔したけど、今思えば婚約以外は得られたものが多かったし得はしたのよね。まあ、あくまで今思えば、だけど。


「あー、うーん。どうするべきかな」

「あ、やるとしたら、その鎧は脱いでね。さっきみたいに直接触れる必要があるから。服一枚くらいなら問題ないけど」


 やるにしても相手の魔力を弄る以上、直接触っているのが望ましい。


「やってもらえロイド。お前、それのせいで家を追い出されたのだろう」

「そうですけど。いえ、治ったところで家に戻るつもりはないですよ」

「このまま傭兵を続けるにしても、使える魔力が大いに越したことは無いだろう? それに痛いのは今回だけだろうしな。……そうだよな?」

「そうですね。それに痛いのは数秒くらいですから」


 魔力量で多少変わるけどあの国王よりは魔力は少ないし、その分時間は短縮されると思う。国王の時は、10秒くらい掛かったけどね。


「何れやらないといけないし、今でも変わらないか。よし、やってくれ!」


 そう言ってロイドは鎧を脱ぎだした。いや、私が居る前で脱ぐのはどうなの? いえ、さっき触った時は中にシャツを着ているみたいだったから、裸にはならないか。


 さて、鎧の中を御開帳………。

 なるほど、頭に被っていたヘルムの中はそうなっていたのね。

 

 なるほど。なるほど。なるほど。



 なるほど。………凄く好みの顔が出て来たわね。ふむ、……なるほど。

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