騎士風の傭兵 ロイド
「この国の傭兵ギルドは我が家系で経営されている。基本的には平民の雇用を目的としているが、貴族として生きていくには障害がある一部の貴族出身の者の受け入れ先としても機能している。これによりお前や、ロイドと言った貴族出身の者も所属しているという訳だ。故に、他家からの命令で受け入れているという訳ではなく、お願いされた結果受け入れているだけだ。今までお前が言っていたように、上から言われてしている訳ではない」
そういう奴か。もしかしてこれは別の国でも行われているのかしらね?
結構、貴族なのに魔力が少なくて家から追い出される者もいるらしいから、その受け皿として機能していると言うことだろうし。
「そして、お前はその書類に書かれているように貴族ではないことがわかった。だからこのギルドで受け入れる必要性が減った訳だ」
「私は貴族よ!」
「しかし、それにはシーアと言う名の家族は居ないと書かれているが」
「何かの間違いよ! もう一度確認して!」
「そんなのは自分でしてくればいい。そして、お前は今からギルドの職員ではない。後は好きなようにすればいいだろう」
ギルド追放か。ギルド長的にも何か線引きがあったと言うことか。と言うか、今まではどうにかしてこの性格を矯正しようとしていたのだろう。
でも、今回の騒動で無理だと結論付けて受付嬢の家に文書を送ったと。結果は見た通りだけど。
「それと、ギルドの関係者で無い者はここに入る資格はない。早く出て行きなさい」
完全に受付…元受付嬢はギルド長から見放されたらしい。まあ、これまでさっきみたいなことを繰り返してきたみたいだから当然の結果だと思うけど、これからどうなるのかしらね?
少なくとも今までの経緯から考えても、傭兵ギルドには登録できそうにないから本当に家から出されたら生きていくのも厳しいかもね。
「後に見てなさいよ!」
そう言ってギルド長と私を睨みつけると元受付嬢は訓練場から飛び出して行った。
「さて、レイア。今回は時間が掛かってしまい申し訳ない。この後に本登録の書類を書いてもらうことになるが時間は大丈夫か?」
「ええ、問題はないです」
そういてギルドの受付に向かおうとしたところで視界の端に騎士風の傭兵の姿が入ってきた。
あ、そう言えばこの人も巻き込まれた人よね。申し訳ないという気持ちは一切ないけれど、何かしてあげた方がいいかしら? 少なくとも私とあの元受付嬢のやり取りに巻き込んでしまったわけだし。
「貴方もギルドに用があって来たのでしょう? ごめんなさいね、巻き込んでしまって」
「あ、あぁいや。別に…大丈夫だ。あれは何時もあんな感じだったし」
「そう? ん?」
この人、何で傭兵やっているのかしら? 結構魔力を持っているから魔術師とかにも就けそうだけど。
「貴方、結構魔力を持っているのに何で傭兵なの?」
「へ? いや、俺はそんなに魔力を持っていないのだけど、何でそんなことを? 見間違いじゃないかな」
あれ? 気付いていないのかしらね。いや、でもこれだけ持っていれば意識しないでも気付くと思うのだけど、何か問題が…、うん? これは。
「ちょっと失礼するわ」
「え? あのひょあっ!?」
私は騎士風、もといロイドの返事を聞く前に鎧の隙間から内側に手を突っ込んだ。
うん、汗でしっとりしている。匂いもそこまで嫌いじゃない、ってそうじゃないわね。ああ、なるほどそう言うことか。
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