コネ就職の受付嬢
「あんたは引っ込んでいてください!」
受付嬢は奥から出て来た男を見るなり、奥に戻るように怒鳴りかかった。
見るからに立場が上の人物だと思うのだけど、あんな態度を見せていいのだろうか。いや、普通だったら絶対ダメなやつだよね?
この受付嬢、何かあるのだろうか。この男よりも上の立場の人物の伝手でコネ就職?でもしたのかもしれないわね。王宮でもこんなやり取り見たことがあるし。
「ああ、傭兵の登録をお願いしたいのですが、対応していただけませんか?」
「はぁ!? あんたの対応をしているのは私でしょう!? 何で後から出て来たあいつに声を掛けているのよ!」
このまま押し問答をしても埒が明かないので、まともに対応してくれそうな奥から出て来た男に対応を求めたら何故か受付嬢がさらに怒り出した。
「貴方にいくら対応を求めても無駄そうなので、しっかり対応してくれそうな方に頼むのは別に構わないでしょう? 貴方に話しかけるのは時間の無駄でしかありませんし」
「は? 時間を無駄にしている原因はあんたが直ぐに帰らないからでしょう。何言ってんの?」
あくまでも私のせいだと言い張るのか。さっさと対応してくれれば直ぐに終わりそうなのに、なぜ頑なにそこまで登録させたくないのか。
「まあ、こんな感じで話が通じないので、対応をお願いしたいのですけど、大丈夫ですか?」
「ああ、なるほどまたか。すまない。こっちで…隣のカウンターで対応する。来てくれ」
また、と言うことは良くこういうことがあると。ふむ、っと、今それは別に考える必要は無いわね。あの男の人がしっかり対応してくれるみたいだし隣のカウンターに移動しましょう。
「ちょっと待ちなさいよ! 何であんたが…」
「シーアは持ち場に戻れ」
「何で私があんたなんかの指示を受けないといけないのよ!」
「この場ではギルド長である私が上で受付担当のシーアはその下だ! 指示に従うのは当然だろう」
言い合っていたとは言え対応していた私が取られたのが気に食わなかったのか、受付嬢は男に食って掛かった。
と言うか、この男ギルド長だったのか。裏からふらっと出て来たから、幹部くらいかと思っていたけど違ったとは。
しかし、この子凄いわね。ギルド長に食って掛かるとか、普通にギルドから追放されてもおかしくないのに平然とするとは。
「ぐぅっ。 わかったわよ。でも、この事はお父様に言いつけるから!」
「好きにしろ」
ふーん、お父様ね。やっぱりコネ就職か。しかもギルド長よりも立場が上そうね。
「すまない。手間取らせた。君の要件は傭兵として登録すると言うことで良いのかな?」
「ええ、そうです」
そうして、ようやく私は傭兵としての仮登録をすますことが出来た。……ん? 仮登録?
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