第14話 茜さんをお迎え
放課後になり、リュックを背負って土屋君と共に学校を出た。
これから除霊をするため春日君の家に行くのだが、その前に僕の部屋に住み憑いている元霊媒師の幽霊である茜さんを迎えに行く必要があるため一度帰宅する。
その道中でのこと。
「なあ祀理。これからどうするんだ?」
「どうするって、何を?」
何を指してのことなのか分からず聞き返す。
「何ってハルの事に決まってんじゃん。なんとか出来るって言ってたろ。具体的になにすんのかなって」
「そのことね。それは除霊できる人に頼むんだよ」
「マジで!?除霊師ってやつだ。へー、そんな知り合いがいんのか」
「うん、本人は霊媒師って言ってるけど」
「どう違うか分からんけど、すげーって。だから祀理もあんな家に住めてるってわけか。………ん?でも部屋に幽霊出たよな」
その幽霊が霊媒師です。と言ったらどんな反応をするのだろうか。
「大丈夫か?その人で。それに霊媒師って仕事だろ。お金だってかかるんじゃ」
「本人は自信ありげだよ。あとお金は必要ない人だからそこは安心して」
「胡散臭いな、おい。しかも金が必要ないって、金持ちが趣味でやってるとか言わないよな」
実際のところ、僕は茜さんが除霊しているところを見たことが無い。
今のところ自称霊媒師といった具合で、今後の評価は今日次第だ。
「他に当てもないから、とりあえず任せてみようよ」
「すっげー不安」
不安がる土屋君に対し、僕は彼に茜さんのことを説明するかどうかを考えていた。
彼とはこのあと一緒に春日君の家に行くわけだし、一旦家に帰って僕が誰も連れて出てこなければ当然霊媒師はどこにいるのか聞かれる。
遅かれ早かれ説明することになるのだ。
だったら早い方が土屋君も理解する時間ができていいのではなかろうか。
というわけで早速話すことにした。
「あのね土屋君」
「なんだ」
「その除霊師って幽霊なんだ」
「は?」
まあ当然の反応だろう。
「僕が住んでる部屋には元除霊師の幽霊が住んでいて、その人に除霊を頼むんだよ」
「ふざけてるのか?」
「本気で真面目だよ」
疑わしげに顔を窺ってくる土屋君の目を、真っ直ぐに見つめ返す。
「信じられないのも分かるけど、本当だよ」
「いや、だってお前」
「信じる信じないに関わらず、やることは変わらないんじゃないかな。僕はこれからその幽霊を連れて春日君の家に行く。そして除霊してもらう」
「そりゃそうだけどよ、えぇー」
どうしても信じられないのかその後しばらく戸惑いの声が漏れ聞こえていた。
そんなこんな歩いていると、あとは角を曲がればパラダイス寿が見えてくるという場所まで来ていた。
「もうすぐ着くけど、土屋君は少し待っててもらえるかな」
また家まで連れて行ったら茜さんに怒られるのでそう提案した。
「ああ、俺もどこかで待ってようと思ってたから、そうする」
「じゃあまた後で」
手を振って一時別れ、僕はアパートへと向かう。
玄関扉を開けて部屋に入ると、茜さんはテレビを点けて見ていた。
「おう、おかえり」
「ただいま」
「で、どうだった」
「茜さんの予想通りですよ。春日君に幽霊が憑いていったみたいです」
「はぁー。やっぱりか。まだ無事だといいけど」
「家の前から段々と近づいていく幽霊らしくて、まだ家には入って来てないって話でした」
そう伝えると、茜さんが立ち上がって背筋を伸ばした。
「春日君だっけ。その子の家の場所はもちろん聞いてきたんだよね」
「この近所だそうです」
「よっし、じゃあ行こうか」
茜さんがやる気を出しているようで、意味があるのか分からないがシャドーボクシングのような素振りをしながら促してきた。
否やは無いのでリュックを床に置いてからアパートを出る。
「茜さん、案内してくれる人を連れてきてるので、まずはその人と合流しますね」
「場所聞いてきたんじゃないんかい」
ツッコミが入ったが気にせず土屋君とも合流する。
これでいよいよ準備は整った。
あとは春日君の家に行くだけだ。
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