第8話 アブラムシの蟲人
私達はそうそうに村の外へ出る。目的地は特にないので、村の南側へ向かう。が、村の南側がちょっとした崖になっており、結局西へ向かった
「お前ら、どこへ行くんだ?」
まだ村から出てそんなに時間が経っていないというのにもう第一蟲人に会った。見た目はアブラムシっぽい。しゃべらなかったらコソッと逃げていた
「えっと、一応聞くけど蟲人だよね?」
「そうだが。お前たちも蟲人だろ? どっから来た?」
「この先にある村からだけど……」
そこまで言ってから「しまった」と思った。この蟲人が敵だった場合、敵に本拠地を教えたも同然だ。しかし、心配は杞憂だったようだ
「俺は丁度そこへ向かうところだ。自我を持った蟲人が集まる村があると聞いてきたんだ。……お前ら、侵略者側じゃないだろうな?」
えっ、私たちの方が疑われるの? と千佳と顔を見合わせる。そして、ハクからタグを貰ったのを思い出した。
「あなたこそ、侵略者側じゃないよね?」
「俺が侵略者に見えるだと! いい度胸だ、ちょっとこらしめてやろう」
「ええっ!」
アブラムシの蟲人はいきなり好戦的な態度になった。私は戦えないが、千佳は丁度いい腕試しだと前に出てくれる。アブラムシは口から水の様な液体を飛ばしてきた
「よっと」
千佳はそれを難なく避け、代わりに空気を胸の前で集める。ただ、真っ二つにしたら困るので空気の固まりだけのようだ
「いくよっ、空塊(くうかい)」
千佳はそのまんまのネーミングで空気の固まりをアブラムシに飛ばすと、見た目通り柔らかいようで、あっさりと体が凹んで転がる
「ま、参った! 降参だ! ちょっと実力を見たかっただけなんだ」
アブラムシはあっさりと白旗を上げる。本気かどうかは分からないが、今はもう空気が弛緩しているので大丈夫だと思う
「びっくりしたよ、もう」
「悪い悪い。やっと村に着いたと思ったら気が緩んだ。許してくれ」
「それで、村に行きたいんだっけ?」
それ以上怒る気にもならず、タグを見せて村の正確な位置を教える。そして、お詫びと言ってみたことも無い果実を一つくれた。アブラムシは改めてお礼を言うと、村の方へ向かって行った
せっかくなのでその果実を千佳と半分こにして食べてみる
「あっ、洋ナシみたい」
「うん、おいしいね」
見た目はキュウリみたいだったのに……。これからは見た目で判断しないように食べ物を探していかねば。私たちはそのまま西の方へ向かって歩いていくことにした
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