第7話 島国探索
私と千佳は、ハクが作ってくれたシチューの様なものを食べ、しばらくすると睡魔が襲ってきた
「ごめん、すごく眠い……」
「いろいろあって体力も精神も削られてるんだからしょうがないよ。ベッドは一つしかないけど使っていいよ」
「ベッドは千佳が使って。私は……」
千佳はそう言うと、制服の上を脱いだ。すると、その背中には小さいながらもトンボの様な透明な小さな羽が生えていた
「ちょっと背中をつけて寝れなさそうだから、うつぶせで寝るよ」
「わかった。ありがとう。それで、ハクはどうするの?」
「私? 私は実は夜行性なんだよね。と言うか、睡眠時間が短くて済むというか。3時間も寝れば十分だから今日ぐらい起きてても大丈夫だよ」
「ごめん、じゃあベッド借りるね」
私は遠慮する気力もなくベッドに寝転がるとすぐに寝入ってしまった
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知らない天井だ……というお約束のセリフを心にとどめ、起き上がる。千佳はまだ眠っているようだが、目が複眼になったせいか目を開けて寝ている。ちょっと怖い
「おはよう。幸い寝ている間には何も起きなかったよ」
ハクは何かを作りつつこちらに声を掛ける。ガスも電気も無いこの村でどうやって炊事を? と思ったら普通にハクは手から火を出して焼いていた。火が使えるのは便利そう……
「そろそろできるけど、食べる?」
「お腹がペコペコ……と言いたいところだけど、何故か全くお腹が空いてないみたい」
「そう、じゃあ千佳ちゃんはどうかな?」
「おはよう。私はお腹が空いたからいただきます」
千佳がスッと起き上がる。ずっと目を開けたままだったから起きてるのか寝てるのか分かりにくい。気のせいか、昨日よりも羽が大きくなってる気がする
「コレが好きだと思うから、どうぞ」
そう言って出てきたのはウィンナーだった。いかにも自家製ですっていうような青白いウィンナーだった。それを千佳は美味しそうに食べる。それを見てハクもポリッとウィンナーを一つかじる。白米もパンも無いようで、ほぼ肉だけっぽい。野菜は野菜で蟲人は適当にその辺の葉っぱを食うらしく、日本の様な葉物野菜は全くない
2人がご飯を食べ終えるのを待つ。私の体がおかしい気がする。お腹がすくどころか、水分も要らないし、トイレも必要ない感じだ。千佳は見た目が虫に近づいた割に、普通に食事をとるしトイレにも入る。トイレがあるところを見ると、ハクもトイレはするのだろうか。まあ、ご飯を食べてるから多分トイレくらいするよね
「それで、君たちはどうする予定? 決まってないなら手伝ってほしい事があるんだけど」
「特に決まってないよ。というか、何も分からないんだけど」
「そう。じゃあ、この島を調べる気はない? 昨日話した通り、今この国は虫に侵略されつつある。でも、虫の王さえ殺せば数自体は増えないはずだ。だから、虫の王を探すのを手伝ってほしい」
「危険……じゃないの?」
「当然。でも、この村にとどまってても大して変わらなくなる時が来る。虫が増えすぎればここも無視されなくなると思うからね。今はまだ何とか均衡を保っている感じだよ。そうそう、調査ついでに蟲人を見かけたらこの村に誘ってほしい。場所は、これを見せれば分かるよ」
そう言ってハクがくれたタグの様なものに地図が彫られていた。それを見ると、この島と思われる場所の丁度中心がこの村みたいだ
「見た通り、この場所は島の中心にある。だから、東西南北どこからでも調査してくれていいよ。ああ、北は最後の方がいいかな、そっちは人間の国があるから」
「分かりました。とりあえず、近くの森から調べてみます」
「健闘を祈るよ。そうそう、1日に1回、配給があるから食料はそこで受け取って。君たちにも渡すように伝えてあるから」
「ありがとうございます」
私達はハクにお礼を言うと、配給の場所へ行く。といっても、ハクの家のすぐ後ろの家なので移動時間は無いに等しいが
そこにいたアリっぽい蟲人が無言で肉を3つくれる。まるで人間の太ももを焼いたような大きな肉……うん、何を焼いたのかは聞かないでおこう
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