第2話 騎士団

「大丈夫か!」


教室の開いていたドアから見知らぬ女性が入ってきた。その女性は全身を鎧で包んでいたが、シルエットが女性の体型の鎧だったので女性だと判断した。これで女性っぽい声の男が中身だったらどうしようとか考えていると、その女性は顔を覆っていた兜を脱いだ。素顔は金髪美女だったので安心した


「お前たち2人で最後か? ……そこの2人は……助けが間に合わなくてすまん」


「これは、一体どういう状況なんですか?」


言葉が通じることに安心し、質問する。千佳はまだ吐き気が治まらないらしくぐったりしている


「それは先にこちらが聞きたい事だ。どうやって蟲を倒した?」


「え? えっと、私達くらいの年齢の女の子が急に現れて、あっという間に退治して……私達に薬を飲ませてくれて……」


まだ整理のつかない頭で思いつくままに口に出していく


「女の子? それはどこに居る?」


「え、あっと、消えるように居なくなりました」


「……ちっ、蟲人(むしびと)か」


女性はギリギリ私に聞こえるくらいの声で呟いた


「蟲人ですか?」


「それより、薬を飲まされたと言ったな? ふむ、お前は大丈夫のようだな。もう一人は……少し間に合わなかったようだな」


「え?!」


私はてっきり千佳も薬を飲んだし、虫は吐き出していたので無事だと思っていた。女性に言われてよく千佳を見てみると、こちらを向いた目が複眼になっていた


「お前の見た目は大丈夫そうだが、後で全身を確認しておけ。どこかに羽が生えているとか、甲皮になっているとかあるかもしれないからな」


「うっ、それは……わかりました。それで、千佳は大丈夫なんですか?」


「恐らく、蟲人になっている。お前たちは転移者だろう? それなら、今意識があるならば大丈夫なはずだが、しばらくこちらで様子を見させてもらおう。しばらく不自由すると思うが着いてきて貰う」


私達に断るという選択肢がない以上、着いて行く事にする。女性の他にも鎧を着た人が数人入ってきて女性の指示のもと勝也と奈緒の死体を大きな袋に入れる


「他のクラスメイトは……?」


「25人は確保した。あとはお前たちと死んだ2人で全部か?」


「25人……いえ、全員で30人です」


「あと1人か。よし、お前たち、この建物をくまなく探せ!」


「はっ!」


勝也と奈緒の死体を持った人以外が最後の一人を探しに行ってくれた。私達は女性について教室を出る。そのまま無人の廊下を歩き、外履きがきちんと入っていた玄関で靴を変え外に出ると、そこは学校の校庭ではなくジャングルのような緑あふれる風景だった

そして、周りを鎧を着た人たちに囲まれ怯えながら待機しているクラスメイト達が居た


「綾音、千佳、無事だったのね!」


「無事とはいいがたいけど……なんとか助かったわ」


私はクラスメイトの未希(みき)に返事をした。千佳は目が複眼だとバレないように、うつむき気味で会話に参加しないようにしているみたいだ 


「1人居ないって言う話しだったけど……」


「うん、敦美(あつみ)が居ないの。皆パニックで教室を慌ててでたから、はぐれてても分からないような状況だったし。でも、他の教室のすみに隠れてた私でも見つかったくらいだから学校内に居ればすぐに見つかると思うんだ」


しかし、未希のその言葉とは裏腹に、敦美が見つかることは無かった

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