第20話 会計官の毒吐く2
4-6 マーロ
統一歴0年7月17日
○ジモディ・ヴァンニウス
お館様の遠征が終わりマーロが6領になり一月半が経った。各領からの移民が増え、領都は見たことのないほどの活気に賑わっている。
結果、めちゃくちゃ忙しいんだけどね!!!
あの糞領主!!!
加減を知らんのか!!!
なに調子に乗って5領も増やしてんだよ!
6領に増えたら忙しさも単純に6倍???
じゃねぇんだよー!!!
もっと忙しいんだよ!!!
世界の中でのマーロの位置はちょうど真ん中あたり。そのマーロと周囲が安全になったことで、世界中から商人が商いの拠点にするべく集結し始めた。大商人と呼ばれるようなもの達も訪れるようになり、領主館は対応に追われている。
ほとんど俺がやってるの!!!
一人で!!!
話したこともない金持ちとサシでやり合ってるの!
人見知りなのよ!?おれ!?
ずっとニコニコ笑って胃が痛いの!!!
つーか、なんなの?あの道路?
めっちゃ上等な道路がいつのまにか張り巡らされてるんですが?
あんなもん出来たらそりゃ人の行き来も多くなるわ!
税収も増えるわ!!!
仕事増えるわ!!!
6領に増えたことで税収も6倍、どころではなく、10倍を超え20倍に迫ろうとしている。道が出来たことで人の往来が増え、何故か開拓地も増え、住人が増えて税収が増え続けている。この勢いが続けば来年には昨年の100倍の収入が見込めるかもしれない。
会計官としては税収が増えて有難いのだが。
おかげで忙しいの!!!
本当に忙しいの!!!
まともに睡眠取れたの何日前よ!!!!!
誰か!!!
本当に!助けて!!!
と思っていたところ先週末の夜に、我が神シーザー様が降臨された。手伝いを連れてきたと、美しいエルフを連れて。
シーザー様まじ神!!!
エルフの女性の名はレイコ・ヤマシタ。
聞き慣れない響きの名前だ。少なくともこの周辺の名ではない。決して大きくはないが弾力のありそうな胸が細身の身体で自己主張をしている。
エルフ族は美しい人間が多いと聞いていたが、少し丸みがある顔はどこか愛嬌もある。横に細い銀縁の眼鏡をかけており目付きはややキツ目。
そこが非常にいい!!!!!
あぁ、レイコたん!
いとかわゆし!
白いほっぺが仕事に集中するとちょっと赤くなるのがいと愛おし!
嗚呼、そのほっぺ、ペロペロしたいですぞぉ!!!
「あまり見ないで頂けますか?」
しまった。見ていることがバレてしまった?確かにいくら美しくても女性をジロジロ見るのは失礼だ!仕事の間の一服、短い時間除き見るからこそ、至高!!!より素晴らしい。少し自重をしなくては!
「気持ち悪いんで。」
ん?何か聞こえたかな?まぁ、空耳だろう。気にしないでおこう。
シーザー様はヤマシタさんと共に領主館経営の管理法まで授けてくれた。以前にも力を授けて頂いたがその際は演算や筆記が早くなった程度で直接領地の会計に結びつく能力ではなかった。
今回はどんな方法を使ったのか、直に経営管理に使える知識が頭に流れ込んできた。本当に不思議な力だ。
特に『簿記は必要だろ?』という言葉と共に授かったピーエルビーエスという損益の管理方法が素晴らしい。毎日の利益計算が正確に速く終わるようになり、非常に助かっている。
頭が疲れてくると横を見て美しい同僚の姿を見る。あぁ、何度見ても美しい。一心不乱に筆を走らせる姿にしばし見とれていると、少しだけ開いた胸元から胸の谷間が覗いた。
ジモディ殿!ジモディ殿!応答願います!!!
こちらジモディ!確認いたしました!
隠された秘宝が姿を現しましたぞ!ジモディ殿!
これぞ人類の秘宝ですな!ジモディ殿!!!
まさに!まさにぃ!!!
我々が守るべき宝!あの布の中にそっと手を入れ保護しなくてはいけませんな!ジモディ殿!!!
「すいません、そこのハゲかけた方。何度も言いますが、ジロジロ見られると気持ち悪いんですが。」
はて?誰の声だ?とても辛辣な言葉が聞こえたような気がするが。ハゲ?この部屋にハゲなんかいただろうか?最近心労のせいで髪がやや薄くなったような気はしているが、俺は断じてハゲてなどいない。キャベリ様のことか?だが、彼も歳のわりには髪が豊富だと思うんだが。
「あなたのことですよ!チビデブハゲ!」
チビデブハゲ、ひどい言葉だな!そんな人として恐ろしい状態が揃った人間などこの屋敷にはいない!なんて酷い幻聴だ!悪魔か!魔物の類か!?
「お前のことだって言ってんだよ!!!」
いつの間にか目の前に立ったヤマシタさんが右腕を降りかぶっている。
えっ?俺のことなの???
振り下ろされる右腕がゆっくりと視界を移動してくる。
あれ???
これは?
某が、殴られるんですかね?
なんとも不思議な体験だ。時間がとてもゆったりと感じられる。少しずつ近づいてくる右腕。拳が徐々に大きくなってきて目の前に迫ってきている。
えっ?拳を握り込んでる?
ビンタじゃなく?
あっ!手首に黒子があるな!!!
白い肌に小さな黒子、そっと摘んでお口に入れて!
「ぷぎーっっ!!!!!!」
聞いたこともない声が自分の口から聞こえた。左頬に走る激痛。衝撃に耐えきれなかった首が曲がり、それでも耐えきれず身体ごと壁に吹っ飛ぶ!!!口の中に血の味を感じ、左頬から鈍痛が。見上げるとヤマシタさんがこちらを見下ろしていた!
とてもいい!!!
冷たい目線が痛気持ちいい!!!
この痛みと屈辱、耐え難きカイカン!!!
目の前が光り輝く!これは、シーザー様???そこから放たれた光の塊が左頬を包むと痛みが引いていく。これは治癒魔法???
『いや、ジモディ。今のはお前が悪いぞ?さすがに気持ち悪いぞ?』
気持ち悪い?俺の?どこが?
「主様。このような俗物とともに仕事をするなど耐えられません。私がいればこの程度の仕事ならば問題ありませんので、この愚物は焼却致しましょう。」
ヤマシタさんがそう言いながら右手で火魔法を発動させた。
レイコたんの火で炙られる!
なんと!きっと!
すごく!いい!!!
『いや、まぁ、そう言うな。こいつはこいつで気持ち悪いが有能だし、今まで頑張ってきてくれたんだから。』
「主様、そういった甘えは今後のことを考えると宜しくありません。要らないものは要らない。区別し使うことこそが主様の今後に良いと考えます。」
『やべぇ、こっちに飛び火した!ジモディ!とにかく、あんまりジロジロとレイコを見るな!あと、お前、たまに頭の中の考えを声に出してるぞ!マジでキモいからやめとけ?』
そう言って光が消えシーザー様がいなくなりました。
なんですと!?私、声に出してます!?
ゆゆしき事態ですぞ!ジモディ殿!!!
さすがにまずいですなぁ!ジモディ殿!
チラと見るとヤマシタさんがこちらを睨みつけている。
あぁ、やっぱり視線が痛気持ちいい!
怒りで紅潮したレイコたん、いとかわゆし。
もっと!もっと!!もっと!!!並んで欲しいですぞぉー!
「だから声に出てるんですよ!」
忙しくも、美しい同僚と過ごせる日々、時々痛みと快感。シーザー様に素晴らしい職場を与えて貰いました。今後も誠心誠意仕えていきましょう。
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