第83話 冒険者ギルド(13)
「――という訳で、今回の黒幕はウラッカです」
突然の僕の
「はい、国からの命令で『密かに彼女が』裏で手を回していた――という事ですね」
とマルガレーテさん。眼鏡が――キランッ!――と光る。
「はうわう?」
意味が分かりません!――とばかりに、ウラッカは口をパクパクとさせた。
「
「事件を未然に防いだ――という訳ですね」
僕とマルガレーテさんは――クックックッ――と笑う。
「わ、わたくし……そんな事していませんよ?」
とはウラッカ。
「でも、誰も証明出来ないよね?」
僕は言い返す。更に続けて、
「どうやら、彼女は優秀なようです」
複数の冒険者に声を掛け、それとなく動かすとは――と
そんな僕の言葉にマルガレーテさんは
「はい、優秀な部下を持って、わたしも鼻が高いです」
早速、そのように上には報告しますね――と
「わ、悪い笑顔です!」
はわわわっ!――とウラッカ。慌てて立ち上がると、
「これは陰謀です!
と騒ぎ立てた。しかし、今更遅い。
マルガレーテさんは優秀だ。
ギルド内では――受付嬢が事件を解決した――として処理されるだろう。
冒険者は複数なので、特定も出来ない。
(そう、誰かが特定しようとしない限りは……)
更に、ウラッカの本当の上司は王族のようだ。
必要以上に追求しようとする物好きはいないだろう。
「先輩、ニンジャ、怖い……」
ウラッカは
「早速、色々と処理をしなければなりませんね――」
「申し訳ありませんが、明日はお休みして頂けますか?」
と僕に申し出る。恐らく、証拠を
僕がギルドに顔を出すのは都合が悪いらしい。
(まぁ、今日の戦いでメルク達も疲れているしな……)
――明日は休みにしよう!
「分かりました……」
話も
マルガレーテさんを引き留めようと、ウラッカは追い掛ける。
しかし、僕はその手を
ウラッカに素材の買取をお願いする。
「え⁉ で、でも……」
僕を優先すべきか、マルガレーテさんを引き留めるべきか――
彼女は悩む。しかし、その時間が命取りだ。
無情にも、マルガレーテさんは扉を閉める。
はぁ――と溜息を
「分かりました……」
とウラッカ。けれど、彼女はまだ理解していない。
後に『伝説の受付嬢』と呼ばれる存在が誕生する事を――
「これは、その
僕の突然の
「
ウラッカは首を
「いや、ウラッカは可愛いって話さ――」
と僕は告げる。
皮肉を込めたつもりだったけれど、ウラッカは、
「はひっ!」
と顔を真っ赤にした。僕は席に着くと商談を始める。
ただし、一度に大量の素材を引き取って
僕が大量の
(仕方がないので、小出しにしよう……)
「あれ? これだけですか……」
とウラッカ。
「ウラッカには
ダメかな?――僕が質問すると、
「は、はひ~っ! ダ、ダメじゃないです……」
彼女はそう言って、
――よしっ!
(これでギルドに顔を出す口実が出来た……)
「こうすれば、
僕は
ギルドの方の情報収集を頼むよ――という意味だ。
(ウラッカなら適任だろう……)
しかし――は、はひ!――とウラッカ。
「た、高く買い取りますね!」
と返される。
(あれ……もしかして、通じてない?)
僕が首を
† † †
これで金銭的に余裕が出来た。
ウラッカには、なるべく多くのギルド職員と会話するように指示しておいた。
(『ギルド内にいる内通者を探せ』と言っても難しいだろう……)
僕達は今、<冒険者ギルド>を後にし『ヨージョ神殿』へ向かって歩いていた。
もう
「兄さん、また
ふぁ~!――と欠伸をして身体を伸ばすイルミナ。
『お人好し』の
(鋭いのか、
「名誉と報酬を
とだけ答えておく。
予想していたよりも、報告が早く済んだとはいえ、かなり疲れた。
(早く帰りたい所だ……)
「あっそ……」
イルミナは最初から興味がなかったのか、それ以上、
ただ、フラフラと歩く彼女が危なっかしいので、僕はその手を
すると――フフフッ♥――とはにかむイルミナ。
一方で、アリスが勝手に
メルクには彼女と手を
ガネットは相変わらず
そうなると、一番の問題はルキフェな訳で――
「あっ! 怪しいヤツを見付けたでち!」
突然、声を上げる。
すると
イルミナから手を離し、急いて捕まえようとしたのだけれど、手遅れのようだ。
――やれやれ、本当に困ったモノだ。
(
ここは『ヨージョ神殿』も近い。
一旦、メルク達を預けた方がいいだろう。
いつもなら「世話が焼ける」とでも言って、ルキフェを
しかし、今はお疲れのようだ。自分の手をじっと見詰めている。
「あらあら♥ アスカ君……」
と聞き覚えのある声がした。
振り返ると、そこに居たのはセシリアさんだ。
外を歩いている――という事は貧血が治ったらしい。
(丁度いいや……)
「セシリアさん!」
僕は彼女の手を取ると、
「は、はひっ……」
まるで
(やはり、女性の手を急に握るのは問題があったのかな?)
本来なら謝る所だけど、今は急いでいた。
「メルク達の事、お願いします!」
と告げる。
断る
「そ、それはお任せください!」
と答える。
「ありがとうございます!」
そう返すと、僕はその手を離した。
彼女の事だ。
しかし、その表情は
(僕の気の
「ルキフェが居なくなったので、探してきます!」
僕はそう言い残して、人混みを
そして、ルキフェが走っていった方向へ、大急ぎで向かった。
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