第78話 三日月村(4)
村の外では
けれど、ルキフェとイルミナには、余計な心配させてしまったようだ。
(二人の
「二人共、来てくれてありがとう」
もう一度、お礼を言って頭を
メルクに対し、焼餅を焼いていたイルミナだったけれど、機嫌が直ったようだ。
僕としても、二人が護衛してくれるので、作業に集中出来る。
「感謝するでちよ!」
アタイがいないと
「この作業が終わったら、肉を焼いてあげるよ……」
そう告げると――ホントでちか!――と嬉しそうにする。
現金なモノだ。
(
僕は
そして、それを『解体する』という作業を繰り返した。
不要な部位はその都度、焼却処分する。
それにはガネットが<ブラックホーンラビット>を落とした穴を利用した。
(少し深いけど、【ファイヤーボルト】を使えば大丈夫か……)
モクモクと黒い煙が立ち
――いや、煙にしては色が
恐らく、『魔素』だろう。
正確には、汚染された状態の『魔素』と考えるべきだ。
MPを回復する原理としては、まず自然界にある『魔素』を取り込む。
そして、体内で自分に合った状態へと変換するようだ。
よって、『魔素』自体は有害ではない。この事から――<魔族>の狙いは、この汚染された黒い『魔素』を作り出す事――なのかも知れない。
(帰りに<灰色オオカミ>や<
「お兄ぃちゃーん!」「アニキーッ!」「ご
僕を呼ぶ声が聞こえる。どうやら、レイアがメルク達を連れてきてくれたようだ。
その一団の中に少年の姿もあった。
――レイアの弟だろうか?
(確か『ミノス』といったかな……)
僕は
丁度<ブラックホーンラビット>の肉を焼いていた所だ。
価値としては<
その
(あの<ウサギ>達も食べる事で強くなっていたしな……)
――これでルキフェ達も強くなってくれるだろうか?
そんな事を考えていた僕の元へ、メルク達が駆け寄って来る。
「オレも食べるぞ!」
とはアリスだ。<ウサギ>だけあって、足が一番早い。
勢い余って火に飛び込みそうになるのを僕は
「おおっ! 助かったぞ……」
アハハッ――と彼女は笑う。
(レベルが上がったとはいえ、まだまだ危なっかしい……)
「皆の分も、ちゃんとあるから大丈夫だよ……」
と言い聞かせる。
「村の救世主が、こんな所で
同時に手に持っていた包みを僕に渡す。
(
受け取ると食べやすい大きさに切ったパンが
そのパンの上にはチーズや野菜、肉などが乗っている。
(バゲット料理か……)
わざわざ、僕の分の昼食を持ってきてくれたらしい。
「ありがとう……」
そういえば、
<ロリモン>達の事ばかり考えていて、自分の食事を忘れていたようだ。
苦笑する僕に、
「
とレイア。フフフッ――と笑われてしまう。
僕はメルク達と一緒に食事を取る事にした。
――いや、メルク達はもう食べたよね?
(本当によく食べるな……)
† † †
僕はちょっとした実験を
<ブラックホーンラビット>の肉と<
この違いが分かるのか?――というモノだ。
正直、【アイテムボックス】を
当然だけど、『魔物の肉』は
けれど<ロリモン>達なら分かるのだろうか?
一緒に<
しかし、彼女達は見事に<ブラックホーンラビット>の肉ばかりを食べていた。
(本能だろうか?)
師匠が一緒だと
やはり
「さてと――」
そう言って、僕は立ち上がる。
【アイテムボックス】の中身も大分減った。
僕もレベルが上がったので、HPやMPの上限が増えている。
余裕がある
例によって例の
そのため、ミノス少年が興味を持ったようだ。
「反応が『ルイス』そっくりだな……」
「そう言えば、兄さんも世話になったようね」
ありがとう――
一瞬、
「えっと、もしかして……
彼女に確認する。
話の流れから、それしか考えられない。
「そうだよ? そこは知らなかったんだ……」
レイアは嬉しそうに
(なるほど……)
確かにそう考えると、色々と
槍の使い方も似ている。
「レイア達には、いつも助けられているね」
僕の
「それはこっちの
そう言って彼女も立ち上がる。目と目が合った。
クールな印象の切れ長の目に、綺麗な
「じゃあ、お互い様だ……」
「そうね……」
僕とレイアは互いに笑った。
そんな僕達の様子をメルクとミノスが不思議そうに見詰める。
おーい!――と再び、僕を呼ぶ声が聞こえた。
村の男達だ。武器――と言っても斧や
合流して話を聞くと、これから村の外の見回りをするらしい。
当然、僕も同行する事にした。
レイア達とは一旦お別れだ。メルク達の面倒と
しかし、ルキフェ達は僕を心配そうに見詰めた。
(休んで欲しい所だけれど……)
僕は護衛にイルミナを選ぶ。これで納得してくれるだろう。
「フフフッ……兄さんは分かっている」
と
僕としては、機動力のあるイルミナなら、連絡役にピッタリだ!
(――と思っただけなんだけど……)
これは黙っていた方が良さそうだ。
見回りの
僕としては『資材を勝手に使ってしまった事』に罪悪感がある。
その事を謝ると――気にしないでくれ――と返された。
怒られずに済んだので、僕は内心――ホッ――とする。
どうやら、村人達は僕達に感謝しているようだ。
この世界に来てから、
(こういうのも悪くないな……)
軽く感動している僕に、
「良かったね、兄さん……」
とイルミナ。そんな彼女に、
「ああ……」
と僕は短く返すのだった。
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