第五章 ロリライブ⁉ 皆で叶える夢の舞台?

第57話 師匠の家(10)


 家のリビングに保護した<一角いっかくウサギ>と<穴掘あなほりモグラ>を並べる。

 メルク達には、逃げた場合の捕獲ほかくを頼んだ。


 これから【テイム】を行い、仲間にするのだけれど――


「ご飯でちか?」「弱肉、強食」


 とルキフェとイルミナ。失敗した場合は、彼女達の夕飯となる予定だ。

 青い<一角いっかくウサギ>は傷もえたのか、呑気に眠っている。


 一方、桃色ピンクの<穴掘あなほりモグラ>はブルブルと身体を震わせていた。

 これから『お風呂』なので、さっさと終わらせてしまおう。


「【テイム】!」


 ずは<一角いっかくウサギ>からだ。

 夕飯にするのは可哀想かわいそうなので、少し気合を入れる。


 光の魔法陣が展開され<ウサギ>を包み込む。

 <モグラ>の方はおどろき――ビクッ!――と身体をちぢめた。


 ようやく目が覚めたのだろうか?

 <ウサギ>は状況が飲み込めず、あたふたする。


(でも――今更、あわてても――もう遅い!)


 多少は抵抗されたけれど、僕もレベルが上がっている。

 すんなりと【テイム】は成功した。


 光が消え、現れたのは青い短髪ショートヘアに真っ赤な瞳が特徴とくちょうの裸の幼女だ。

 耳と尻尾しっぽだけは<ウサギ>のようで、あざとい気がする。


「残念でち……」「諸行、無常」


 とルキフェとイルミナ。オカズが一品減った感覚なのだろうか?

 メルクが――ホッ――としていた。


 ウサギ幼女は尻を床に突いたまま、不思議そうに自分の手を握ったり、開いたりしている。自分の身体の変化に戸惑とまどっているのだろう。


(さて、次は<穴掘あなほりモグラ>か……)


 僕が杖を向けると再び――ビクッ!――と反応した。

 けれど、その場から逃げる様子はない。


 どうやら、恐怖で動けないようだ。

 随分ずいぶん臆病おくびょうな性格らしい。


(こんな性格で、戦力になるのかな?)


 そんな事を考えつつ――【テイム】――を使用する。

 今回もすんなりと成功した。


(やはり、変異種だと成功するのかな?)


 メルク達の時といい、変異種の<魔物>モンスターは自らの意思で僕に近づいてきているような気がする。本能で<ロリモン>になる事を望んでいるのかも知れない。


 突如とつじょとして、桃色の髪の幼女が現れたので、ウサギ幼女はおどろいていた。


(もしかして、自分が<ロリモン>になった自覚がないのだろうか?)


 モグラ幼女は不安そうにオロオロとしている。


「キキッ! 失敗したでち……」「兄さん、空気、読んで」


 とルキフェとイルミナ。失敗ではないし、空気を読むのはルキフェ達の方だ。

 メルクは無邪気に――仲間が増えたよ!――と喜んでいる。


(さて、名前を付けなければいけないな……)


 僕は<ウサギ>に『アリス』、<モグラ>に『ガネット』と名付けた。


「『ウサ子』と『モグ美』で良かったんだけどな……」


 そんなつぶやきに、


「ダメだよ! お兄ちゃん……」「あるじ、センスないでち……」「兄さん、可哀想かわいそう


 と三人。やれやれ、メルク達にも不評なようだ。

 『アリス』と『ガネット』にも拒否されたので、少し落ち込む。


(ルキフェとイルミナは、さっきまで食べる気だったクセに……)


 ――なんだか悔しい!


「しかし、また増えたのう……」


 とは師匠だ。静観せいかんしてくれていたけれど、新たな<ロリモン>の誕生に戸惑っているのだろうか?


「ゴメン……迷惑だった?」


 僕の問いに、


馬鹿バカもん! 元々<ロリモン>は増やす予定だったのじゃ……」


 気にするでないわ!――そう言って、そっぽを向く。


(だったら、素直にめて欲しいのだけれど……)


「そう言ってもらえると助かるよ、師匠――」


 僕は苦笑しつつ――お風呂に入る順番をどうしようかな?――と考えていた。

 すると――


「それよりもじゃ――お風呂はどうするのじゃ?」


 師匠が質問してくる。どうやら、同じ事を考えていたようだ。

 先に小さい達から入れるべきだろう。


 師匠とメルクにアリス達の面倒を頼もうとすると、


「じゃあ……まずわしじゃな!」


 何故なぜか師匠は胸を張り、言い切る。

 いったい何処どこから、その自信が出て来るのだろうか? 


「えっ⁉ 師匠は一人でも、入れるよね?」


 思わず返した僕の言葉に、


馬鹿バッカもーん! 弟子なのじゃから、師匠の身体くらい洗わぬか!」


 と怒られてしまった。これが『パワハラ』というヤツだろうか?


(いや、『セクハラ』かな?)


 どの道、逆らっても、いい事は無いだろう。


「分かったよ、一緒に入ろうか?」


 僕が手を差し出すと――うむっ!――と師匠。

 満足した様子で、その手を取る。


「じゃあ、その前に――」


 僕は師匠に、皆の分の着替えとタオルの準備を頼む。

 そして、先に『お風呂』で待っているようにお願いした。


「分かったのじゃ!」


 と師匠。機嫌が戻ったのか、素直に返事をしてくれる。

 僕はメルクとイルミナに――順番に呼ぶから、大人しく待っていて――と告げた。


「ア、アタチには⁉」


 とルキフェ。何故なぜおどろいている。

 お願いしても――絶対に大人しくはしない――だろう。


(一番の不安要素が、なにを言っているのやら……)


 僕達は一様いちようにルキフェを見たけれど、ぐに視線を戻した。

 次にアリスとガネットだ。


「じゃあ、二人とも……お姉ちゃん達の言う事を聞いて――」


 大人しく待っていてね――と告げる。


「ア、アタチの言う事も聞くでち!」


 とルキフェが割り込んでくる。正直、見習って欲しくない。


「<コウモリ>、反面、教師」


 プクスッ――とイルミナは笑った。

 何処どこで覚えたのか――ガビーン!――とショックを受けるルキフェ。


 そんな彼女をメルクが――よしよし――と頭をでてなだめる。


「嫌でち! アタチもお姉ちゃんでち! お姉ちゃん出来るでち!」


 ルキフェは床に転がって、そんな事を叫ぶ。

 その様子から、まったく出来るようには見えないのだけれど、仕方がない。


「じゃ、じゃあ――ルキフェにもお願いしようかな?」


 僕はその場にかがむと、ルキフェにそう告げた。

 正直に言って、不安しかない。


「ホントでちか?」


 パッ――と笑顔になるルキフェ。


「<コウモリ>、無理」


 そんなイルミナの言葉に、


「無理じゃないでち! アタチは出来る女でち!」


 ルキフェは高らかに――キキッ!――と笑い声を上げる。

 メルクとルキフェは顔を見合わせ、困った顔で苦笑した。

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