第39話 ヨージョ神殿(3)


 ――はて? 昨日の夜はなにをしたのだろうか?


 夕食時もあわただしかった。

 彼女達が眠たくなる前に、食べ終わると順番に歯磨はみがきを手伝う。


 洗濯を済ませ、冒険で使う道具を整理し、戦利品を確認する。

 いつの間にか、就寝時間になっていた。


 寝たら寝たで、何故なぜか皆、僕の寝台ベッドへ入ってくる。


流石さすがに寝苦しい……)


 眠いので、その時は我慢したけれけど、なにか解決策を考える必要がある。

 お風呂の時といい結構、手が掛かる。


(そうだ……習得した<スキル>を確認しないと――)


 そこで僕の記憶は途切とぎれたのだった。


「素晴らしいです! この素晴らしいロリに祝福を!」


(相変わらず<ロリモン>を前にすると元気だな――この人……)


 ここは『ヨージョ神殿』。今、僕の目の前にはセシリアさんが居る。

 どうやら待っている間、考え事をしていて――ボーッ――としていたようだ。


 野生の感だろうか? 危険を感知したイルミナは、素早く僕の後ろに隠れた。

 僕としては、疲れが残っているため、少々機嫌が悪い。


(全然、寝た気がしなかったな……)


「おはようございます――セシリアさん……」


 僕が挨拶あいさつをすると――おあよーざいます――とメルクも真似まねをした。


「はい、おはようございます」


 メルク様もおはようございます――とセシリアさんが挨拶あいさつを返す。


(……様?)


 <ロリス教>では<ロリモン>はうやまわれる存在だ。

 そのため、『様』を付けたのだろう。


 僕は足の遅いメルクを抱き、ルキフェとイルミナを連れ、神殿を訪れていた。

 また、補導されてはかなわない。


 人の少ない早朝に、この街へとやってきたのだけれど、当てが外れた。

 朝市が立ち、活気づいている時間帯で、かなりのにぎわいを見せていた。


(『勇者召喚』が近い事もあって、人が多いのかも知れない……)


 しかしその分、神殿都市という事もあり、警備はきちんとされているようだ。

 早朝から衛兵が立ち、街への出入りをきびしく確認していた。


 僕は信者や行商人達にまぎれて、列に並ぶ。

 門の守衛には、師匠から借りた『聖印』を見せる。


 すると――チッ――と舌打ちされてしまったけれど、門を通してくれた。

 <ロリス教>の権威はまだ失われてはいないようだ。


(今は残念な事になっているけれど……)


「急に来て、迷惑ではなかったですか?」


 僕は礼儀として、セシリアさんにうかがいを立てる。

 メルク達を連れてきているので、嫌がられる事はないだろう。


 案の定――問題ありません!――とセシリアさん。


「アスカ君……いえ、同志アスカ!」


 セシリアさんはそう言って、僕の手を取る。

 普通だったら、美人で胸の大きな彼女にられれば、悪い気はしないだろう。


 しかし、僕には嫌な予感しかしなかった。


(後、『同志』って呼ばないで欲しい……)


「可愛い女の子を三人も――それもすべて<ロリモン>!」


 彼女はそう言って、その場に崩れ落ちると、


「ああ、ロリス様に感謝します!」


 天をあおぎ、神に感謝する。そして、


「同志アスカには【ロリモントレーナー】の<称号>をさずけましょう!」


 と微笑ほほえんだ。



  【ロリモントレーナー】の<称号>を授与しました。



 とメッセージウィンドウが表示される。


なに、勝手な事してくれているんだ⁉ この人は……)


 †   †   †


 名前:真御守 アスカ  性別:男  年齢:17


 レベル:5  分類:人間  属性:-

 メインクラス:テイマー(魔物使い)

 スタイル:未選択

 サブクラス:-

 ジョブ:ストレンジャー(異邦人)

 ユニーククラス:マオモリ アスカ

 タイトル:ロリモントレーナー 【NEW!】


 †   †   †



  【ロリモントレーナー】の効果で、

  あなたのパーティーの<ロリモン>に入る経験値が1.2倍になります。



(しかも、地味に助かる効果だし……)


 ――これでは怒るに怒れない。


「で、今日はいったいなんの御用でしょうか?」


 セシリアさんはそう言った後、なにかに気が付く。

 そして――ハッ――として、口元を手でおおった。


 ま、まさか――とつぶやくと、 


「信者のために<ロリモン>の抱っこ会を開催してくださるのですか?」


 などと言い出した。


(ダメだ――発想が斜め上過ぎる……)


 げんなりする僕に代わって、


「変なやつでちね! 倒していいでちか?」


 とルキフェがさわぐ。


「フフフ……冗談ですよ」


 セシリアさんは笑うが、


「本当は足の裏をペロペロしたいくらいです」


 などとつぶやいた。


(帰りたい……)


「<ヘンタイ>でち! <ヘンタイ>が居るでち……」


 とルキフェ――フシャーッ!――とセシリアさんを威嚇いかくする。

 イルミナは終始無言だが、完全に警戒していた。


「ハァハァ……」


 とセシリアさん。息をあらげると、


「<ロリモン>から向けられる軽蔑けいべつの眼差し……なんて至福♥」


 とひざいた。


(ダメだ――手遅れだった……)


 今後はもう少し、付き合い方を考えよう。


「やっぱり、こいつ<ヘンタイ>でち! この『おっぱい』おけ……」


 ルキフェがそう言って、セシリアさんの『おっぱい』をペチペチと攻撃する。

 ポヨン、ポヨン!――と『おっぱい』が弾む。


「あっはぁ~ん♥ 最高です!」


 セシリアさんは喜んでいるようだ。


(これ以上は教育に良くない……)


「ルキフェ、もういい……」


 僕はルキフェをセシリアさんから引き離した。

 ここで時間を使うのは、なんだか勿体もったいない。


 早起きしたのは<ヘンタイ>の相手をするためではないからだ。


「えっと、今日来たのは――」


「分かっています……メルク様達に服が必要なのですね――」


 セシリアさんは静かに立ち上がると、そう言って微笑ほほえんだ。


(ひょっとして、揶揄からかわれた?)


「そ、そうなんです!」


 僕は返答すると――ホッ――と安堵あんどの溜息をいた。


(良かった――服がもらえそうだ……)


 しかし、そう思ったのもつか


「では、ワタシの服を着てください」


 そう言って、何故なぜかセシリアさんは自分の修道服を脱ぎ出す。


(訳が分からないよ!)


「ぬ、脱がなくていいです!」


 僕が慌ててめると、


「フフフッ――冗談です……」


 と微笑ほほえんだ。どうやら、また揶揄からかわれたようだ。


(ホント、ここは色々と心臓に良くない……)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る