第40話 ヨージョ神殿(4)


 僕達は、セシリアさんの案内で神殿の奥にある部屋へと通された。

 部屋の中央には大きなテーブルが用意されている。


 ――会議室かな?


(掃除は行き届いているみたいだけれど……)


 あまり使われている感じはしなかった。

 座って、待っていてください――とセシリアさん。


 僕はその言葉にしたがい、メルク達を椅子イスに座らせる。

 待っていると、ぐにセシリアさんがお茶を持ってきてくれた。


 初めての場所――というのは如何どうにも落ち着かない。

 僕は早々に話を切り出す事にした。


「えーとっ……師匠の話だと――」


 セシリアさんに相談するのがいいと言われたので――とげる。

 メルク達の見た目は子供だけれど、<魔物>モンスターで戦闘もこなす。


 普通の服では耐久性などに問題がありそうだ。

 セシリアさんが、僕と向かい合う形で席に座ると、


「【転職】の事ですね……」


 彼女はゆっくりと言葉をつむいだ。


(ああ、<ジョブチェンジ>の事か……)


 僕は思い出す。『ロリモンファンタジー』でも、人気のシステムだった。

 <ロリモン>達に『巫女』や『メイド』の恰好かっこうをさせる事が出来るのだ。


 更に<ジョブチェンジ>をする事で、特殊な<アビリティ>を習得する事も可能になる。<ロリモン>を育成する上で、必要不可欠なシステムだった。


(服も手に入るし、能力も強化出来る……)


 ――まさに良い事くめだ!


 ただ、彼女の様子から、なにか問題があるようだ。


「この『ヨージョ神殿』でも<ロリスタル>の力により、【転職】が可能です」


 と説明してくれる。<ロリモン>の『水晶クリスタル』で<ロリスタル>。

 ゲームと名称は変わらない。


(安直だけれど、分かりやすくていいや……)


 しかし、今はそれよりも、確認しなければいけない事が出来た。


「その様子では……」


 僕はゆっくりと言葉を選ぶ。

 きっと<ロリスタル>は失われてしまったのだろう。


(ゲームでもよくある展開だ……)


 きっと、世界各地を旅して、<ロリスタル>集めなければならないのだろう。

 セシリアさんは――コクリ――とうなずくと、


「この神殿でも――百年程前までは保管されていた――と聞いています」


 しかし、ロリの力を恐れた魔族達の手により――とくやしそうにする。

 やはり<ロリスタル>はうばわれてしまったようだ。


 ――でも、ロリの力を恐れる魔族って何⁉


 実は魔族って、大した事ないのでは?――と思えてしまう。

 魔族はゲームの設定でも――<魔王>の配下――とされていたはずだ。


 ――いったい大昔に、<ロリモン>達は魔族になにをしたのだろう?


「もしかして……」


 <ロリス教>が衰退すいたいした原因は――僕はうぶやくくと、


「魔族が裏で糸を引いているのかも……」


 その推測に心当たりがあったのだろうか?


「お願いです!」


 セシリアさんは立ち上がると、


「どうか、魔族の手から<ロリスタル>を取り戻してください……」


 そう言って頭を下げた。

 僕としては、そこまでしなくても対処するつもりだったので、


「頭を上げてください」


 立ち上がって、彼女のそばに歩みる。


 そして――


「今日、お願いしに来たのは、僕の方ですから――」


 と彼女の肩に手をえた。

 セシリアさんはかすかに震えている。


 それは責任感からだろう。

 <ロリス教>の信仰の対象である<ロリモン>達が目の前に居る。


 そんな彼女達に<ロリスタル>を奪われた事を報告しなければならない。

 きっと――物凄ものすごく申し訳ない――と思っているはずだ。


「でも……」


 そう言って、上目遣うわめづかいをする彼女に僕は思わず――ドキッ――としてしまう。


(こういう時、美人はずるいよな……)


「悪いのは、ロリの力を恐れた魔族達です!」


 僕はそう言った後――間違った事は言ってないよね? うん、間違ってない――と自問自答する。


(根本的な事が間違っている……)


 ――そんな気がするのは何故なぜだろう?


 セシリアさんはその言葉に目を大きく開き――そ、そうですね!――と考え方を改めてくれた。そんな彼女に対し、


「それに<ロリスタル>はメルク達にも必要なモノです!」


 きっと、僕達が取り返しますよ!――そう言って、僕はみを浮かべた。


うそは言っていないけれど……)


 ――果たして、僕達に出来るだろうか?


 正直、この世界の『魔族』の能力は未知数だ。

 ゲームや小説でも、大抵の場合、強敵として出現する。


 また<ロリモン>を敵視しているようだ。

 いずれは戦かわなければいけない相手だろう。


(メルク達をもっと強くしないと……)


 そんな僕の心配事など、セシリアさんは知るよしもない。


「ありがとうございます!」


 彼女はそう言って、僕の手を取り、引き寄せる。

 その大きな胸に手が当たってしまうのは不可抗力だ。


「そ、それでメルク達の服なんですけど……」


 僕は話を本題に戻す事にした。


「ああ、そうでしたね!」


 パッ!――とセシリアさんは僕の手を離すと、


「少しお待ちください……」


 そう言って部屋を出て行く。


なんだか、ほほを染めていたような気がしたけれど……)


 恐らく、僕の気の所為せいだろう。


「ホントに大丈夫でちか?」


 逃げるなら今が機会チャンスでち――とルキフェ。

 どうやら、セシリアさんの事を『危険人物だ』と認識してしまったようだ。


 メルクは大人しく、お茶が冷めるのを待っていたらしい。

 両手でカップを持つと、口を付け――コクコク――と飲んでいる。


「<コウモリ>、トイレ、先」


 とはイルミナ。彼女は『お茶請け』のお菓子クッキーを食べていた。

 意味としては――ルキフェがまたらす――といった所だろうか?


「余計なお世話でち!」


 とルキフェ。だけど、股を閉じて、急にモジモジしだした。


(仕方がない――トイレに連れて行かないと……)

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