第8話 師匠の家(2)


 今回は二つ目の方法である――精霊を呼び出し契約する方法――を取るようだ。

 ただ、僕のレベルが低いため、契約できる精霊は一柱か二柱が限界らしい。


(つまり――<SP>スキルポイントを消費して、<アビリティ>を習得する――という事だろう)


 僕は『いやしの精霊』と『火の精霊』の二柱と契約する事に成功した。

 <アビリティ>に【魔術(癒)】〔Lv.1〕と【魔術(火)】〔Lv.1〕が追加される。


 また、<マジック>に【ファーストエイド】〔Lv.1〕と【ファイヤーボルト】〔Lv.1〕を習得した。


(面白味は無いけど……)


 ――レベル1でソロプレイなら、こんなモノか……。


 早速、試してみたいところだけど、【ファーストエイド】を使おうにも怪我人がいない。


 また、【ファイヤーボルト】も同様だ。

 意味もなく、森の中で火の魔法を使う訳にはいかないだろう。


(仕方ないか……)


 ――今日のところは、あきらめよう。


 師匠が夕食を作るというので、僕は部屋の掃除と風呂きを申し出た。

 本来は着替えたいところだけど、また汚れるのは確実だ。


 ――このままでいいだろう。


(ある意味、ジャージで正解だったかな……)


 流石さすがは異世界転移モノの代表的な基本装備だ。汎用性が高い。

 まずは換気のため、部屋の窓を開ける。


 そして、師匠が届かなかった高い箇所を乾拭からぶきする。

 ほこりが立つため、マスク代わりに布を三角に折って顔にいた。


 掃除をしていて気が付いた事だけれど、家は不思議といたんではいなかった。

 結構、年数がって居るように感じたのだけれど、気の所為せいだったのだろうか?


(まるで、この家自体が生きているみたいだ……)


 魔法の力で、家をコーティングでもしているのだろうか?

 それとも――家と一体化している――あの木が原因かも知れない。


(後で聞いてみよう……)


 その他に、机やベッドの隙間すきまなど、細かい箇所の汚れが気になる。


りがないな……)


 本格的な掃除は、後日、行う事にした。

 続いて風呂の準備だ。まずは川まで行って、水をむ。


なんだろう? これ……)


 なにやら丸い玉のようなモノを拾った。野球ボール程の大きさで手に馴染なじむ。

 【鑑定】のスキルを持っていないため分からないが、危険なモノではなさそうだ。


き通っていて綺麗きれいだけど……)


 ――おっと、いけない!


 こんなところで油を売っている場合ではなかった。

 この調子では、ぐに暗くなってしまう。


(次は水の魔法でも、習得した方がいいのかな?)


 ――ん? 今、光らなかったか?


 拾った玉を確認するが、特に可笑おかしなところはない。

 ジャージのポケットにじ込むと、急いで水みに戻る。


 当然ながら結構な重労働だ。二十回は往復しただろうか?

 なんとか大きなかまを満たす事が出来た。


(でも、クタクタだよ……)


 しかし、五右衛門風呂を想像していたので、少し拍子抜ひょうしぬけした。

 どうやら、お湯を沸かしてから、浴槽へ流す仕組みのようだ。


 後で師匠に確認したところ、やはり水の魔法や水の魔石を利用するのが一般的らしい。これも後日、街へ行く機会があれば購入しよう。


 それから、外にあるかまどを簡単に掃除する。

 そして、師匠から借りた魔法の指輪で火をける。


「【ティンダー】」


 枯草に火が点いたのを確認し、小さな枯れ枝を乗せ、その上にまきを乗せる。

 北海道へ来るたびBBQバーベキューやジンギスカンをしていた。


(これくらいは、お手のモノかな……)


 この作業も、温度調節が可能な発熱用の魔道具があると楽に済むらしい。

 まぁ、それは高いため、火の魔石を使うのが一般的なようだ。


 魔石に魔力を込めた後、土を掛けて温度を調節するらしい。

 しかし、街に住む人々は、公衆浴場を利用するのが普通だそうだ。


機会きかいがあれば行ってみよう……)


 火が安定してきたタイミングで、師匠から食事の準備が出来たと呼ばれる。

 僕は火が消えないよう、適当にまきを追加すると、家の中に戻った。


 手を洗い、食卓テーブルに着くと、師匠が料理を運んできてくれた。

 出てきた料理はパンにスープ、サラダに肉料理と意外にも普通だった。


(正直、黒焦くろこげの失敗作か、魚や動物の丸焼き的なモノを覚悟してたんだけど……)


 僕は、そんな考えをさとられないように手を合わせる。そして、


「いただきます――って、こういう場合、神様にいのりをささげるんだっけ?」


 不意に湧いた疑問を口にする。


「『いただきます』で構わん……お父様もそうだった――いや、なんでもない!」


 気になったけれど、僕はなにも聞かずに手を合わせて、食事をする事にした。

 パンは固いし、スープの味は薄い。


(まぁ、育ち盛りなので、出されたモノはなんでも食べるけどね……)


 後は風呂に入って、寝るだけだ。

 水みをした所為せいで、明日は筋肉痛だろう。


(レベルを上げると、楽に出来るようになるのかな?)


 そんな事を考えていると、


「おい、アスカ!」


 と師匠が呼ぶので、返事をしてそばに行く。すると、


わしの背中を流すのじゃ♪」


 と言われた。なに意図いとがあるのだろうか?

 考えても仕方がない。


「分かったよ」


 何故なぜか僕達は、一緒にお風呂に入る事になった。

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