第7話 師匠の家(1)


 森の中にたたずむ一軒家。

 木製のその家は、なんと大樹と同化するような形で建てられていた。


(家から木が生えている?)


 ――こういうも、ツリーハウスというのかな?


 やはり、ここは異世界だ。

 この世界ならではの方法で、家を建てる文化があるらしい。


 僕はルナ――ではなかった師匠――の家に着くと、足を綺麗きれいにする。

 すっかり汚れた靴下は、もうけそうにない。


 そのため、代わりの靴をもらった。

 男性用だろうか? まるで、あつらえたようにピッタリだ。


 奥の部屋に通されるとそのまま、ここで待つように言われた。

 その間、僕は部屋の中を観察する。


 新調された寝台ベッドに布団、それに枕。

 口ではああ言っていたけれど、事前に部屋を用意してくれていたようだ。


(素直じゃないだけか……)


 僕は苦笑する。しかし良く見ると、高い場所の汚れが残っていた。

 この事から考察するに、掃除もすべて師匠が行ったらしい。


 一人暮らしなのだろうか?


(まぁ、話し方からして、見た目通りの年齢ではないんだろうな……)


 ――ガチャッ!


 ノックも無しにドアが開く。


「ホレ、この杖を持つのじゃ!」


 そう言われ、放り投げられた木の杖を受け取った。

 <かしの杖>といったところだろうか?


 師匠は部屋にあった椅子イスを引くと、僕に対し、


「こっちに来るのじゃ」


 と手招きをする。そして、椅子イスの上に立ち上がった。


「背を向けるがよい」


 フン!――と鼻息を荒くし、胸を張っている。

 なにやら、自信があるようだ。


(ちょっと可愛いな……)


 そう思いつつ、言われたまま従う。

 すると、彼女は手に持っていた衣装を僕の肩に合わせた。


くすぐったい……)


「コラッ! 動くでないわ……」


 うーむ、これなら少し詰めれば大丈夫かのう?――などと言ったかと思うと、椅子イスからピョンッと飛び降りた。


「では、外に来るのじゃ……精霊との契約を行うぞ」


 そう言われ、後について行く。

 流れからいって、魔法の契約を行うのだろう。


 顔や態度には出さなかったが、正直、少しワクワクしていた。

 外へ出ると、改めて庭を観察する。


 井戸と薪割まきわり用の切り株、野菜を育てている畑などが見て取れた。

 獣除けの柵で囲われている。


<魔物>モンスターがいるのなら、これでは心許無こころもとない気がするけど……)


「これから魔法を覚えてもらう訳じゃが――」


 まずは【ステータス】魔法を使用する事になった。


(お約束だね!)


 ――おっと、いけない!


 僕は冷静さをよそおう。

 ジャージ姿で召喚された場合、【ステータス】は高くないはずだ。


(浮かれるにはまだ早い……)


 彼女の話によると、異世界人であれば――誰でも【ステータス】と声に出せば使える――という訳ではないらしい。


 僕は師匠により召喚されたため、この世界に適応する能力を得たそうだ。


「その内、コツをつかめば声に出さなくても使えるようになるぞ」


 と師匠。僕は言われた通り――【ステータス】――と声を上げた。

 すると、お約束のウィンドウ画面が目の前の空間に表示される。


 †   †   †


 名前:真御守まおもり アスカ  性別:男  年齢:17


 レベル:1  分類:人間  属性:-

 メインクラス:テイマー(魔物使い)

 スタイル:未選択

 サブクラス:-

 ジョブ:ストレンジャー(異邦人)

 ユニーククラス:マオモリ アスカ

 タイトル:未選択


 †   †   †


「師匠、出来たよ!」


 流石さすがに嬉しくなったので、声もはずむ。


「うむ、では<スキル>を確認してみるのじゃ!」


 僕は手で、ウィンドウ画面を操作する。


 †   †   †


 <スキル>

 SKILL:未取得

 EXTRA SKILL:【優しい人】

 MAGIC:【テイム】〔Lv.1〕

 EXTRA MAGIC:未取得

 ABILITY:【魔術(操)】〔Lv.1〕

 EXPERTISE:未取得


 ※残り2枠習得可能


 †   †   †


(やっぱり、チート能力は無さそうだ……)


 ――むしろ、普通の人って感じだ。


 僕は確認した内容を、そのまま師匠に伝える。

 師匠は――なるほどのう――と納得した。


 そして、魔法の説明を始めるのだった。

 師匠いわく、魔法を習得するには、主に四つの方法があるらしい。


 一つ目は――レベルを上げる――という方法。


(これはゲームと同じだな……)


 レベルを上げるとスキル枠が増える事が理由だ。

 メインクラスにはランクがある。


 <初級>だと1枠、<中級>だと2枠、<上級>だと3枠分が習得可能となる。

 <魔物使い>は<中級>のため、2枠分の習得が可能だ。


 ただし、魔法のみを覚える訳にもいかない。

 また、どんな魔法でも習得出来る訳でもないはずだ。


 習得可能な魔法は<メインクラス>や<サブクラス>、<ユニーククラス>によって決まる。


 二つ目は――精霊などを呼び出して契約する――という方法。


(これは――<アビリティ>を習得する――という事かな……)


 現在、【魔術(操)】を習得しているので――【テイム】の魔法が使える――という事になる。


 <メインクラス>が<魔物使い>なので、自動的に習得しているのだろう。


 ゲーム的にも――【テイム】の使えない<魔物使い>ってなんなの?――という話になる。そのため、自動習得になっているのだろう。


 三つ目は――スクロールやオーブなどを使用する――という方法。


(これは――ダンジョンでアイテムを手に入れろ――という事かな?)


 お店で購入する他、依頼の報酬で手に入れる場合もある。

 ガチャを引く――という手もあるのだろうけど、現状では無理そうだ。


 四つ目は――他者からゆずり受ける、もしくはうばう――という方法。


(誰かゲームだと、イベントで弟子入りするんだったかな?)


 もしくは、特定の相手を倒す事でも習得出来たはずだ。

 ゲーム的にはミニゲームのクリアによる、ちょっとした息抜きのイベントだろう。


 特定のパーティでダンジョンを攻略した場合も習得出来た記憶がある。


 ――と自分なりの解釈かいしゃくを加えて理解する。


勿論もちろん、例外はあるのだろけど……)


 一先ひとまず、師匠の話では――その四つを覚えておけばよい――との事だった。

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