第一章 夏休み消失!? ロリが誘う異世界召喚?

第4話 夏休み消失⁉


 僕の夏休みの予定。

 それは、母の実家のある北海道での叔父の遺品整理だった。


 今から、二十年も前の話になるらしい。

 らしい――というのは当然、僕が生まれていないからだ。


 ある日、叔父さんは忽然こつぜんと姿を消した。

 誘拐、失踪、なにかの事件に巻き込まれたのではないか?


 色々な憶測が飛び交ったのだが、今は「神隠し」という事で落ち着いている。


(そう思う事で、姉である母や祖母の心が少しは救われるのだろう……)


 叔父さんと仲の良かった父は――アイツはゲームが好きだったから、ゲームの世界にでも連れて行かれたのかもな――と荒唐無稽こうとうむけいな事を言って笑っていた。


 その様子から、恐らく父はまだ、叔父さんを探す事をあきらめてはいないようだ。

 しかし、十分ぎる程、時は流れた。


 下手に思い出がある分、父や母には荷が重いのだろう。

 僕は今、一人で叔父さんの部屋を整理していた。


 父は草刈りや冬の間にいたんだ家屋の修繕作業に駆り出されていた。

 遺品整理がなければ、僕も手伝っていたところだ。


 母は祖母と昼食の準備中。妹は退屈なのか、親戚の車に乗せてもらいアウトレットモールへと出掛けてしまった。


「やれやれ、この宝の山に興味がないとは……」


 叔父はゲーマーだったらしく、様々な機種や相当な数のソフトが出てきた。

 ネットオークションに出せば、ひと財産きずけそうだ。


(株を始めるのもいい……いや、山をいくつか買って、三十代になったら会社をめて、山で育った木を売るという手もある――)


 などと考えてしまう。まぁ、そのためにも、これらのソフトがキチンと動作する事を確認しなければならない。


(いや、壊れていても綺麗きれいな状態であれば、売れる可能性もあるのか?)


 僕はあごに手を当て考える。


(いやいや、その前に妹にも手伝ってもらい『JCと一緒にレトゲーをプレイしてみた』と配信するのも手だろうか?)


なんだか、楽しくなってきたな――」


 最近、なにかと無視してくる妹と仲直りするチャンスだ。


(いや、別に喧嘩けんかしている訳ではなく、そこに理由はないと思いたい……)


 取りえず、昼までに粗方あらかた段ボールに仕舞って一旦部屋から出す必要がある。

 午後から父と一緒に机や本棚など、重たい物を外に出そう。


 教科書に落書きがしてあったり、ゲーム攻略の方法がビッシリと書かれたB5のノートが何冊なんさつか出て来た事から、叔父の性格がうかがえる。


 時代が時代なら、プロゲーマーになっていたかも知れない。


(おや?)


 机を整理していて、引き出しから家庭用ゲーム機のソフト――ロムカセット――が出てきた。お気に入りだったのだろうか?


「『ロリモンファンタジーⅢ』?」


(確か……『ロリモンクエスト』シリーズからすべてが始まった名作だ――)


 『ロリモンクエスト』はロリモンと呼ばれるモンスターを倒していくRPGだったが、『ロリモンファンタジー』はロリモンを操作して世界を救うRPGだ。


 それから、『ロリノ・トリガー』や『ロリモン伝説』、『ロリモンアドベンチャー』シリーズが発売され、ついには『ロリッ娘モンスターズ』へとつながって行くのだが……。


(間違いない――このソフトは不朽ふきゅうの名作といっても過言ではない品だ!)


 最初に発売された『ロリモンクエスト』はターン制の戦闘システムにより、誰でも遊びやすい仕様になっていたのだが、可愛い女の子が沢山出てくるとうたっていた割に、しょぼいドット絵だったため、早期購入したユーザーからはだまされたと不評の嵐だった。


(ネットのない時代は、ジャケ買いが主流だろう……)


 所謂いわゆる博打だ――だが、今となっては、それが良かったとも言われている。

 反響が大きいという事は――それだけ期待されている――という意味でもある。


 開発メーカーは何度なんどかのリメイク、更に続編の発売を行った。結果、今では政府が推奨するクレイジージャパン戦略の一角を担う作品にまで成長したのだ。


 ニンジャ、ゲイシャ、カブキ、カロウシ、カワイイ――そして、ヘンタイ。

 それが世界における日本人のイメージだ。


 『ロリモンファンタジー』はジョブチェンジシステムとリアルタイムバトルによる戦闘システムで人気を博した。


 特にジョブチェンジシステム――メイドやウェイトレス、巫女など、ジョブをチェンジする事でロリモン達の衣装も替わる――が好評で、戦闘時の能力よりも衣装の可愛さでジョブを選ぶというのが当時の常識となった。


 ロリモン達のスカートの中をのぞこうと寝転がってブラウン管のテレビ画面を下から見るゲーマーが続出した――というのがネタとして流行はやったらしい。


 そのため、海外では『ヘンタイファンタジー』とも呼ばれている。


(さて、データをさらすのは性癖をさらす事にも等しい……)


 セーブデータを消すべきか、残すべきか――なやましいところだ。

 しかし、今は段ボールに入れておこう。


(データが残っているとも限らない訳だし……)


 しばらく起動していないので、完全に消えているだろう。

 僕が段ボールを探して、部屋から出ようとすると、


「なっ、なんだ?」


 不意に足元から光の柱が伸び、僕を包み込む。

 咄嗟とっさの出来事に、目をつぶり、両手で顔をかばう事しか出来なかった。


 悲鳴の一つでも上げておけば良かったのだろうか?

 なにが起きているのかサッパリ分からなかった。


 だけど、後になって考えると、叔父さんも同様の現象に巻き込まれていたのかも知れない。

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