第12話 正当な報酬を略奪しよう

「…でもそんな事をしては創造主様に怒られてしまいます」


 とフンババが躊躇する。うーん。やっぱり簡単には決断できないか。

 説得を諦めようかと思ったその時、俺はふと思いついた疑問を口にした。


「てゆーか、怒られて何かデメリットがあるのか?」


 給料で雇われている人間ならクビは怖い。

 でも無給でタダ働きさせられている上に、食糧は自前で作れる上に生命も複製できる存在にとって、上から怒られる事の何がこわいのだろう?


 純粋に疑問だったので聞いてみた。するとフンババたちは深く考えて…言った。


「………………そういう風に思考がプログラムされている…………から?」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「よーし!フンババ達!今まで使えなかった機械をジャンジャン作れ!この星の資源を掘りつくすぞ!!!」

 目の前には山盛りのステーキ。ポテト。ハンバーガー。ラーメン。ビール。ビール。ビール。


 ありとあらゆる『健康には悪いけど美味しい』料理が並んでいる。

 それをがつがつと食べるフンババたち。

 日本のニンジャみたいに一日中肉体労働をしている超人たちは一日5200kカロリーの栄養を摂取していたらしい。

 たった2600kカロリーで足りるはずがない。

 

 初めての飲酒にほろ酔い状態となったフンババは

「任せてください。ずっと提案していた改善計画があります。こんな星3日で資源を掘り尽くして見せます!!!」

 と、気前よく宣言した。

 自分達が無能な上司に搾取されている事に気がついたフンババ達はあっさり職務放棄した。

 むしろ、俺の味方となった。


 当たり前だろう。誰だって仕えるならタダ働きさせる雇用者よりも、気前の良い犯罪者の方がマシだ。

 まあ、あいつら正当な報酬を払わない『労働基準法違反の犯罪者たち』だし。

 はたから見れば『無料で働いてくれると信じていた支店を社畜たちが乗っ取った』形だけど自業自得と言うものだろう。


「よーし。じゃあ採掘した資源であっつあつのステーキを作っちゃうぞー!!!」

「私は、先祖が食べたと言うポテチを作ってみます」

 そういうと豪華な食事たちがたくさん作られ、フンババ達は舌鼓を打った。

 まるで北●鮮の収容施設からドバイの富裕層が食べるような食生活の変化にフンババ達も大興奮だ。

 働いたら相応の対価を貰う。

 それで上手い物を食べる。


 これが明日も働こうと思う活力だ。

 無休や低賃金で働けるかって話だ。


 そう思っていると、警報が鳴った。

 見れば大型の宇宙船が30隻。

 この星へ向かって来ているらしい。

 私設軍隊のお出ましのようだ。


「さあて、悪魔の雇用主たちの軍隊をぶっ潰すか」

 そう言いながら、俺は戦いのゴングが鳴るのを聞いた。

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