第9話 奴隷(社畜)には貧乏を楽しむ権利がある

 ボタン一つで生命を作れるこの世界で、富裕層と話して分かった事がある。


 こいつら従業員を家電製品としてしか見ていない。


 一昔前の自動で掃除をするロボットや洗濯機みたいな感覚でフンババたちを使役しているのだろう。あの2600kカロリーの食糧は電気であり少しだけの娯楽を許していたのは機械に潤滑油などを指すメンテンナンスみたいなものなのだろう。

 なので

「なんでワシがワシの所有物に給与を払って、感謝までしないといかんのだ?」

 などという言葉が出るのだろう。


 逆に言えば、彼らを作る必要があったからだろうが。

 一昔前の人材派遣オーナーを見てるみたいだな。

 たしか『奴隷社畜には貧乏を楽しむ権利がある』だったけか?社員全員がよくストライキをおこさなかったものだ。

 オウニンかレイワ=ヘイセイとかいう古代の話だったそうだが、そんなクズを政治に参加させたイカレた国が各国にあったらしい。

 セーショに登場するデビルが栄えた時代だったのだろう。

 俺なら即日、マグナム銃でそんなふざけたセリフを言った野郎の脳天をぶち抜いてやっただろう。まあ最後は従業員に刺殺されたみたいだが…。


 とりあえず、コイツにとってフンババは家電と同等。待遇を改善する気はないらしい。

 そして、これだけの財産や部下に恵まれながら、やっている事は銅像を作成し他人にマウントを取る事だけだという。

 馬鹿じゃねえの?



「もしかして、何か儲けるアイデアになるかと思ったが時間の無駄だったな」

 惑星を一つ所有してても、まだ儲けたいのかよ。

「当たり前だ。私程度の富裕層はたくさんいる。その中で一番惑星を所有し一番豊かでなければ気が済まないのだ」

「だったら、フンババに富を分けて経済を回した方がいいぞ。金が動いて豊かな層が増えれば、それだけ豊かさは底上げされるからな」

 俺の30代くらい前の祖先はアメリカで奴隷をさせられていたそうだが、賃金を払わなれず商品を買うことができない層がいるよりも、彼らも経済に加わらせた方が設けることができると考えた白人が奴隷制度を廃止したと聞いた事がある。

 あともう一方の祖先である日本人は、オダ=ノブナガという人間が油を安く出回らせたことで民衆が夜の照明を使うようになって発展したとも聞いたことがある。

 だが、

「なんでワシがワシの所有物に給与を払って、感謝までしないといかんのだ?」

 と会話が堂々巡りになってしまう。


「やっぱり時間の無駄か。君とは話が根本的に合わないようだ」

 そういうと目の前の饅頭は横柄に顎をそらし、フンババに俺の腕を掴ませた。

 おい、一体何をするんだ。

 ゴリラの如き力で有無を言わせず連行され元来た所へ連れて行かれる。

 一つだけ違うのは俺が気がついた隣にある機械に連行されている事だ。


 俺が生まれたのがコピー機だとすれば、その隣にあるのは何だろうか?

 …嫌な予感がする。

「お、おい。ちょっと待てよブラザー。少し話合おうぜ」

 とフレンドリーに話しかけてきたが会話は不可能なようだ。


 真っ白なゲート。そこに連行された俺は暴れまわったのだが、フンババ達はビクともしない。

 やがて頭上の装置が光り、俺の意識は存在ごと消えた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「…というのが、あなたが分解装置にかけられるまで、向こうの星で起こった事です」

 そう言われて、頭に装着させられたヘッドギアを解除される。

 電子データーで脳みそに焼き付けられた記憶で自分が死ぬ瞬間をまざまざと追体験させられたのであった。


 ボタン一つで命を作れる世界の生命は非常に軽いんだなぁ…。


 これ、一度死んだ事のある奴じゃなかったらトラウマもんだぞ。

「というわけで、我々が消される理由はお分かりになったでしょうか?」

 とフンババが言う。

 わかんねえよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る