第4話 記憶から復元できる3Dプリンターって最強じゃね?

「この上に乗ってください」


 そう言われて体重計のようなものに乗る。

 すると体に電気のようなものが流れた感触がした。

「なんだ?今のは」

「アナタの体調や、体を構成している元素を一括で計量したんですよ」

 電気の通り方で、体の病気や不足している成分を調べて、それにあわせた栄養を出すらしい。

へぇえ。すごいな未来。

某タヌキロボットの食事がでるマットという道具は俺が生きている間には実装されなかったが、ここだと完成しているのか。


 そう言われて出されたのは、パンのような長方形の物体とスープだけだった。


「何これ?」


 囚人用の食料か?そう思って聞くと

「こちらは必要な栄養素が全部含まれたスープ。こちらは液体だけだと胃が弱るので、消化運動をするための食物繊維の固まりですね」

 ワオ!効率的。

 いやな予感がしながらスープを流し込む。

 塩辛くて甘いスープ。不味くもなければうまくもない。単なる栄養補給の液体。

 パンの方は、見た目に反してゴムでも食べているようだった。

 堅い。堅いぞこれ。

「どうやら、人の体は噛むという運動が重要らしいので、50回は噛まないと飲み込めない堅さにしてるようですね。」

 健康的ぃ!まるでサプリメント弁当でも食べてジムに通っている感じだな。


 夢の未来食は糖尿病や痛風などからはおさらば出来るが、食事の楽しさともおさらばしないといけないようだ。

 どんな残酷な刑罰だよ?


「不味くはないけど、もっとハンバーガーとかラーメンとかカレーみたいなスパイシーでガツンとしたモノが食べてぇなぁ」

 とつい愚痴を漏らしてしまった。

「はんばーがー?何ですか。それは?」

 とフンババが聞く。

「ハンバーガーってのは…この堅いパンと違ってふわふわでアツアツのパンズにハンバーグっていう肉の塊が乗っててだな。その上に酸っぱいピクルスと辛いマスタード・マヨネーズ・ソースがかかっている最高にイカした食べもんだぜ」

 と説明するが、あの味は食べたモノじゃないとわからない。

 

 そうか、俺は料理技術の退化した未来でコックになって無双でもするのか?

 だったら材料を集めてもらおう。

 さっそく火星じこみの料理をふるまってやる。

 そう思っていたが、

「ちょっとこの装置を付けて、ハンバーガーをイメージしてもらえますか?」

 そういって、怪しいヘッドギアを渡された。

「なんだこれ?」

「これは記憶の映像から、物質を類推して3Dプリンターで再現する読み取り装置です」

なんでも人間が思考すると微弱なニューロンの活動が起こる。

そのパターンを蓄積して材質や形状、味までも3Dプリンターで再現できるのだと言う。

…おい、いくら未来でもチートすぎるだろ。そのプリンター。おまえはプリンター業者のまわしものか?

 

 そう思っていると、目の前にどんどんハンバーガーが作られていく。

 地球産3Dプリンターのフィラメントのように、パンを構成する有機物が遺伝子レベルで積み重ねられ、1分もしないうちに見た目はまともなハンバーガーが出来上がる。

 食べてみるとイメージしていたハンバーガーと全く同じ味だった。

 …まあパンの味がする肉と、肉の味がするマスタードとマスタード味のパンズという誤差はあるが、纏めて食べれば同じ味だ。

 次からパーツごとにイメージするようにしよう。


「これがハンバーガーですか?」

 そう言いながらフンババが興味深そうに見る。

「よかったら食べてみるか?まあ作ったのは俺じゃなくてプリンターだけど」

 そう言うと。

「いえ、我々はこの星の所有者から一日 2400カロリーまでしか接収してはいけないと命じられてますので」と断られた。

「星の所有者?」

「ええ、このM23BDG惑星は個人所有の惑星でして、我々は資源発掘のために作られた存在なのです」

 と説明を受ける。

 こんな凄い装置に優秀な従業員を幾らでも作れるなんて、よっぽど凄い存在なんだろうな。

「そういえばお前さんたちは、何のために資源を集めているんだ?」

 俺の場合、土星で集めた鉱物は開拓前線に送られて宇宙船とかドームを作る材料となっていた。

 星を所有できるくらいの存在ならさぞスケールのでかい事業でもやっているんだろうな。

 そう思っていると


「ン=グリア像を作る材料となります」


 と答えが帰って来た。

 …なんだ。そのあやしい名前の像は。

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