第3話 現代知識を駆使してチートだと思ったら、異世界の方がチートだった件
「しかし、その『遺伝子復元キット』っていうのはどんなものなんだい?」
相当昔に死亡した人間を蘇らせた技術だ。
理解は出来ないだろうけど、一応原理くらいは知っておきたい。
「エーとですね」
そういうと、スポイトの様な物体を取り出し、旅行用のゲートに設置された金属探知機のような大型機械の前に立つ。
「こうして宇宙服の内部にあった細胞を採取して、それを読みとり装置に入れると、元のパターンを推測した3Dプリンターが遺伝子レベルで栄養素を抽出。元の姿に復元していきます」
そういうと、俺の細胞から足、太股、胸と俺の複製が出来上がっていく。
骨も神経も、肉も。輪切りに切断された人間が積み重なっていく光景に驚きと吐き気を覚えた。
等身大プラモデルのように出来あがっていく自分と言うのは何とも気持ちが悪い。
「思考パターンと記憶は遺伝子に含まれた傷から数億パターンの可能性を想定しながら脳に焼き付けていくんですが、1万年蓄積されたビッグデータがあるのでそこまで狂いがないはずです」と言われた。
なんでも、遺伝子の配列や他の装備品などから生い立ちや記憶のパターンを大量に蓄積して、それらしい配列を組み直すのだそうだ。
こうすることで細胞とか骨のかけらみたいな乏しい情報から再現をするらしい。
骨格標本から元の顔を復元するように、骨の一部の潰れ方やすり減り具合から骨全体を。
骨に付着した細胞から骨を、といった具合で大きな集合体から小さな情報を大量に登録することで、逆算して復元するというものらしい。
兵器の専門家がボルトの一本でミサイルの性能を割り出すような作業だ。
「つまり、使用された情報はあなたのいた太陽系以外のものなので、記憶に関してはおかしな点がいくつかある場合もあります」と言われた。
なるほど、どうりで記憶の中の実際に見たはずの火星の太陽は3つあるのに、アニメでみた太陽は1つだけなわけだ。
これは、この星の太陽が三つあるので『空に太陽が三つあるのは当たり前』という前提があるのだろう。
だが、絵画の場合太陽は一つだけでも良いのである。
まるで初期のAIが絵をかいたら丸い物は全て目玉と認識したかのような記憶の書き換えミスが行われているらしい。
これ、地味に辛いぞ。
俺の指はちゃんと6本あるけど、これ記憶の方が間違っているわけじゃないよな?
他にも海の色が緑だったり夕日が赤かったりとしていて、本当にそれが俺の見た記憶なのか少し怪しい。
なのでこれから俺が回顧する火星の描写が間違っていても復元された記憶が違っているという事なのだろう。
復元された記憶が違っているという事なのだろう。
(大事なことなのでリピートしました)
まあ、いいや。どうせ火星も地球も遠く離れて、帰ることはないだろうし、知り合いもとっくに死んでいるだろう。
そう思っていると、腹の虫が鳴った。
そういえば、俺は死ぬ前に何も食べてなかった。
死因は窒息死だけど、あのまま生きてたら餓死してんだろうな。
「食事の時間のようですね。ついてきてください」
そう言われて俺は食堂っぽい建物に行った。
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