第2話 異世界かと思った?残念32万年後の宇宙でした。
『逶ョ縺瑚ヲ壹a縺セ縺励◆縺具シ』
どこかで声が聞こえる。
「生きてる?」
俺、鈴木マクガイヤー。28歳?火星アラバマ生まれのキョート育ち…だったっけか?
どうも体がおかしい。
「ここは異世界なのか?」
『逡ー荳也阜縺ェ繧薙°縺。縺後≧』
「うーん。何を言っているのか分からん」
こういう時、映画とかだと自動翻訳装置が働いてすぐに話せるようになるのだが…
『あー、これなら聞こえますか?』
おお、凄い。御都合主義。
『えー、私の名はフンババゲルララメグラベルババゲリルキウスボルゲ」
おい、まだ言語がバグってるぞ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうやら、彼らの名は人間の脳では理解できず文字化けするらしい。
面倒なので彼らの事は『フンババ』と呼ぶ事にしよう。
命の恩人に対して失礼かもしれないが、ピカソより長い名前を覚えるのは拷問である。
そんなフンババと名乗る俺の恩人は身長2m。
マンモスのような体毛に顔の中心に大きな単眼が一つとその周りに4つの複眼がついている。
イメージがしにくければエ●ァンゲリオンの0号機を思い出してほしい。
それに亀のような甲羅がついている。
なるほど。どうやら俺は異世界というやつに飛ばされたらしい。
100年前まで流行していたファンタジージャンルの一つだ。
古典作品の中では椅子を紹介しただけで賞賛される作品があったようだが、どうやらこの世界では服とか毛皮の概念から説明しないといけないようだ。
「助けてくれてありがとう。ところで君たちは裸の様だが寒くないかい?」
と聞くと
「ああ、それは大丈夫です。この全身に微弱な電流を流す装置で皮膚の表面に薄い空気の層を固定する事で断熱していますので」
は?
いま、理解できない理論が飛び出して来たぞ?
見るとファンタジー世界らしからぬ
「どうぞ」と渡されたそれを首にかけると先ほどまで感じた暑さは嘘のように消え、非常に快適な気温となった。
これはあれか?魔法とかいう技の掛ったアーティファクトだろうか?
「生物の表皮に流れる微弱な電気を利用しただけですよ。原理さえ分かれば誰でも作れます。」
マジで?
付けてみて分かったのだが、気温の問題がクリアされれば、服は体を締め付ける窮屈なものでしかない。彼らが服を着ないのも分かる気がする。
未開の土地に進んだ文化を持ってくる系じゃないのか?だったら俺は何で呼ばれたんだ?
「呼んだ?」
「ああ、おれは作業中の事故で死んだんだ。その時、ソウルが異世界に飛ばされたんだろ?俺は古典文学を少しだけ読んでたからわかるんだ」
「うーん…呼んだというか復元しただけですよ」
「復元?」
「ええ、母星へ資源を運んでいる際に、見慣れない物体が宇宙空間を漂っていたので、回収したんです。すると中に骨が入っていたので、どのような星から流れついたのか好奇心がわきまして、こう『物体復元装置』で復元して見たんです」
なにそれ、すごい。
「すると細胞の状態から、今から32万年も前に活動していた動物というじゃありませんか。遺伝子情報から逆算して脳の状態も戻して体を再構成したんですよ。記憶の解析機からあなたの記憶を辿ると、2000年前の蓮の種を開花させたようなものです」
と言われた。
俺は種扱いか。
詳しく聞けば、
だとしたら、国家プロジェクトで俺は蘇ったのだろうか?
貴重な古代人として何か意味でもあると言うのか
「国家プロジェクト?」
不思議そうな眼でフンババが俺を見る。
あれ違うのか?
「古い細胞の復元は私の趣味です」
「趣味?」
「はい、外銀河の植物を再現するとかワクワクするでしょう?だから本星に物資を運んだ帰りに変わった漂流物を見つけては、こうして遺伝子再生を行っているんです。ほら、見てください。この『たのしいかがく』の遺伝子復元キットってやつです」
どうやら雑誌の付録について来た検査キットを使って遊んでた程度の感覚らしい。
それで死者蘇生とかできるんだ。凄いな超未来。
というか、俺TUEEE!!!!とか無理じゃん。
そうなると、俺の待遇もかなり変わって来るだろう。
古代人に話を聞くと言うのなら、昔の偉人『ノブナガーノ=オダ』とか『ラス=プーチン』などを復活させた位の待遇でむかえられるようなものだろうが、個人の趣味でやってたなら乾燥したミジンコに水をかけて復元した程度の価値しかない。
まさか32万年後の世界に化学実験で蘇るとは思わなかったが、このままだと俺は一体どうなるんだろう?
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