25世紀に事故死した俺は、異世界転生したかと思ったら30万年後の世界に復活していた件
黒井丸@旧穀潰
第1話 25世紀の労災事故
新しい電波をお届けします。
実験だらけのスケールのでかいデタラメを笑って頂ければ幸いです。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
25世紀。人類は宇宙へと飛び出し活動範囲を広げていった。
発達した科学は月と木星の居住を可能にし、爆発的に増えた人口を維持するためにあらゆる物資が不足した。
そのため、宇宙ゴミと呼ばれる浮遊鉱物を回収し必要な資源を回収する『遊星回収業』は稼げる仕事として花形職業となっているのである。
「……………とか、いわれてるけどさ、結局やってることは炭坑夫と同じだよなぁ」と鈴木マクガイヤーは同僚に言った。
鈴木マクガイヤー=ラムウ 28歳。
いろんな人種の血が混ざって何人かは忘れたが、名前から日本人。肌が黒いので黒人の血が混じっているのは確かだろう。
こう書くと『物語にそういったナイーブな問題を持ち込むのは云々』と小言を言いたくなる方もいるだろうが、そういう色で生まれたんだから仕方がない。
どれだけ肌が白かろうが黄色かろうが真っ青でも、この職場では全員一律に時給たった52万元で雇われた一人のバイトである。
「ぼやくなよ。木星鉱山の方だと時給3万ユーロぽっちしか貰えないんだ。それならここの方が少しはマシだ」
と同僚が言う。
52万元というと500年前だと高額な金額だったらしいが、物資が乏しくて物価が急上昇中の土星では一月の生活費で吹っ飛んでしまう。
ちなみに、一番時給が低いことで有名な日本は、時給950円を500年間維持している。
『財政は健全化したけど人口は死滅した』というジョークとともにデフレ政策の戒めとなったものだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
土星のわっかはたくさんの氷で覆われた岩石で構成されているため、採掘した鉱物は中継基地に集められる。
氷は貴重な酸素と水素に分解され、鉱石はさらに細分化される。
無重量状態なので重さはほぼ関係ないが、ちょっと力加減を間違えると軌道修正するのが大変だ。
まあ、俺らのようなプロバイトだと雑談混じりでも平気だが。
「超薄給で有名な円だけど、600年前なら950円もあれば家が一件買えたらしいぜ」
「まじか」
「ついでに言えば500年前なら72万ドルで家が買えた。プール付きで」
「嘘だろ。72万ドルなんて今なら日給の最低額じゃん。ちくしょう。その時代に生まれたかったぜ」
「同感だ」
そう言うと、基地めがけて鉱物を押し投げる。
飛んできた荷物を、センサーでとらえたロボットアームが捕まえて倉庫に運ぶという寸法だ。
こうした危険な方法は宇宙労働基準法で宇宙的に禁止されているのだが、宇宙面倒だからほとんどの宇宙作業員は守っていない宇宙。
500年前の足場設置作業員が3m上の人間に足場のパーツを放り投げてわたすようなものである(※フィクションです)
ここで3つイレギュラーが起こった。
1つは 俺の宇宙服に固定用でつけていた縄。これが、投げ飛ばした鉱物に引っかかって切れた事。
2つは 俺の体が大量にある土星の岩石に引っかからずに、そのまま宇宙君官に放り出された事である。
あわてて同僚が救助を呼んだが、俺は糸の切れた風船のようにあれよあれよと飛び去っていく。
そして、3つは 救助艇が間に合わずあわれな鈴木マクガイヤーは宇宙の漂流者となったことだ。
つまり俺は労災事故の犠牲者となったわけだ。
なお救難信号装置が『経費削減』の名の下に、電池切れのままだったのは『よくあること』だったので別にイレギュラーではない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この物語は、そんなありふれた労災事故から30万年後の話である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます