第6話 2025年10月

 明智勇は90歳になった。2020年頃から流行り出したコロナは収束するどころか拡大している。火星への移住計画は順調に進んでおり、5年後に火星ホテルが完成する。 

 ゾンビは三密に出現する。図書館、美術館、映画館などで目撃されている。🧟

 T県の亜蒲田あかまた市にある民家で介護士が財布を盗む事件が発生した。見守り用カメラに新人介護士の飯豊智子いいでともこが盗むのが映っていた。

 勇は亜蒲田市にある老人ホームで暮らしていた。

「まさか、智子ちゃんがあんなことするなんてな?」

 勇の担当ヘルパー、蟻沢生馬ありさわいくまが隣のベッドの内野うちのって老人に食事を食べさせてやりながら呟いた。

「内野さん、ご飯ですよ?」

 内野は顔を背けている。

「ここの食事まずいよな?吉野家の牛丼食べたい」

 勇はまるで籠の中の鳥だ。

「火星か、行ってみたいな」  

 蟻沢がテレビを見ながら言った。

「蟻沢君って何歳なの?」

 勇は尋ねた。

「43ですけど」

「蟻沢、よそ見してないでとっとと食べさせてよ」

 ケアマネジャーの海老名修えびなおさむが腕組みしながら部屋の入口に立っている。

 喋り方がおネエっぽいんだよな?

「スミマセン。あの、海老名さん、ケアマネってどうしたらなれるんですか?」

「あとで教えるから」

 

 研修室で蟻沢は海老名からいろいろ教わった。

 📔介護支援専門員は、介護保険法等を根拠に、ケアマネジメントを実施することのできる資格、また有資格者のことをいう。要支援・要介護認定者およびその家族からの相談を受け、介護サービスの給付計画(ケアプラン)を作成し、自治体や他の介護サービス事業者との連絡、調整等を行う。一般にはケアマネジャー(care manager)とも呼称され、介護関連の資格では「最高峰」の位置づけである。

 介護支援専門員は居宅介護支援事業所・介護予防支援事業所・介護保険施設・グループホーム・小規模多機能型居宅介護事業所等に所属する。


 介護支援専門員として登録・任用されるには、都道府県の実施する「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格し、「介護支援専門員実務研修」を修了する必要がある(第69条の2)。登録を受けたものには介護支援専門員証が交付され、その有効期間は5年である(第69条の7)。


「介護支援専門員実務研修受講試験」の受験資格としては、下記のように、法定資格所持者の5年以上の実務経験が必要とされる。


 勇の孫、明智和樹あけちかずきは、浮気を繰り返す妻、霧子きりこと離婚したがっていた。そうすれば議員の娘である久里子くりこと再婚できる。10月10日、和樹は東武東上線の中で剣崎けんざきという男性に出会う。剣崎は和樹が霧子と別れたがっていることをなぜか知っており、彼の父親を殺してくれるなら自分が霧子を殺そうと交換殺人を持ちかける。そうすればお互いに動機がないので、捕まる心配もないという訳だ。和樹は剣崎が冗談を言っていると思い、取り合わなかった。しかし、剣崎は勝手に霧子を殺してしまう。現場には斧が残されていた。  

 🪓


 翌日の昼、自分が妖怪になって街を歩いてる夢から覚め、恍惚としてると勇のもとに和樹がやって来て事件の概要を話した。

「霧子は勝手な女だったからな?罰が当たったんだ」

「久里子と結婚できるようになったのは良かったが、剣崎に見られてるような気がするんだ」

「人殺しだけはダメだぞ?」

 

 10月15日

 娘の香美こうみと一緒にパリに遊びに来た勇と和泉夫妻。桜木さくらぎという男と親しくなり、一緒に舞踏会に参加するが、そこで桜木が何者かに射たれてしまった。桜木は勇にアムステルダムに住む、四条って男に届けてほしいものがあると言い残して息絶える。桜木の部屋を探すと、国際的暗殺組織の陰謀について書かれたメモを発見。しかし敵は娘、香美を誘拐し、知っていることを誰にも話すなと脅迫する。

「香美を助けて」

 和泉は涙をポロポロこぼした。

「俺の知ってる四条さんは1970年に病死してる」

「蛸薬師の罠かも知れない」

「かなりの老いぼれだ、生きてはいないだろう」

 勇はエクスカリバーを携えてパリ北駅にやって来た。和泉は足腰も弱ってるためパリのホテルに残った。エクスカリバーは、アーサー王伝説に登場する、アーサー王が持つとされる剣。魔法の力が宿るとされ、ブリテン島の正当な統治者の象徴とされることもある。同じくアーサー王伝説に登場し、アーサーの血筋を証明する石に刺さった剣と同じものとされることがあるが、別物とされることもある。

 駅の前で腰から上が人間、腰から下の怪物に襲われた。勇はエクスカリバーで斬り殺した。 


 フランス民話の熊のジャンは、熊と人間の母親との間に生まれた毛深い男児で、乱暴により退学処分をうけ、鍛冶師の弟子となり、鉄杖を自作する。旅の途中、特技を持つ者たち仲間にくわわり、その4人組は、不思議な城に居座るが、出現した敵(小人や悪魔)に仲間たちは敗北し、主人公は勝利する。次いで地底の世界に降ることとなり、主人公のみ到着する。主人公は地底の老婆に知恵を授かり、杖などで戦い、悪魔、巨人などを倒し、地下城で三人の王女を救出する。裏切る仲間に置き去りにされた主人公は、脱出し、王女らとの再会を果たすが、職人のふりをして現れ、王の試練を突破して王女のひとりと結婚する。

 

 勇は赤い列車タリスに乗り込んだ。1等車に相当するコンフォートは座席にて飲み物と食事のサービスがある。夕食がまだだったのでスクランブルエッグがメチャクチャ美味く感じた。

 Wi-Fiが無料で利用できるらしいが、年寄りの勇はスマホ類を使いこなせていなかった。タリスは北上し、ブリュッセルを経てアムステルダムに到着した。3時間以上もかかり、時計を見ると11時を回っていた。

 オランダに来るのは初めてだった。

 アムステルダムは北ホラント州に属し、フレヴォラント州やユトレヒト州と接している。市名の由来となったアムステル川は市の中心部で多くの運河に分割されて、最終的にはその運河群が中心部北側にあるアイ湾に注ぎ込む。アムステルダムの平均海抜は2mである。周辺の土地のほとんどは大規模な干拓地で形成されており、そのため周囲は非常に平坦である。町の南西部には広大な人造林であるアムステルダムセ・ボス公園がある。また、アムステルダムは長い北海運河によって北海と接続されている。

 四条に会うのは明日にしよう。

 

 アムステルダムの中心部の町並みは、アイ湾に面したアムステルダム中央駅を基点として放射状に広がっている。町の中心はダム広場であり、中央駅とはダム通りで結ばれている。ダム広場に面して、王宮が建っている。この王宮は1648年にアムステルダム市庁舎として建設され、ナポレオン戦争でルイ・ナポレオンが王宮として用いるまでは市庁舎として使用されていた。現在ではオランダの王家はハーグに住んでおり、この王宮は迎賓館として使用されることもあるが、普段は一般に公開されている。現在のアムステルダム市庁舎は中央駅から真南、ダム広場からは南東に位置するワーテルロー広場に面している。レンブラントの家もこの付近に位置する。


 中央駅を基点として、運河も放射状に張り巡らされている。このアムステルダムの運河は世界遺産にも登録されている。運河沿いの建物は流通に便利だったため、間口の広さに応じて税金がかけられた。このため、運河沿いに現在も残る家並みは間口がどこも狭く、その代わり奥に非常に長く伸ばして作られている。この運河沿いの建物は現在も保存され、運河には観光用ボートや水上バスが走り、アムステルダム観光の目玉の一つとなっている。王宮から真西に行った運河沿いにはアンネ・フランクの家がある。


 放射状の運河の最も外郭に位置するのがシンゲル運河である。この運河は、1480年から1585年にかけてはアムステルダムの外堀にあたっていた。王宮の南西、シンゲル運河にほど近いライッツェ広場には市立劇場があり、交通の拠点ともなっている。またライッツェ広場周辺にはバーやレストランも集まっている。


 シンゲル運河の南側にはアムステルダム国立美術館があり、そこから南西に広がるムセーウム広場にはゴッホ美術館、アムステルダム市立近代美術館、そして世界有数のコンサートホールであるコンセルトヘボウがあり、多くの観光客が集まる。コンセルトヘボウにはロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が本拠を置いている。


 市の南西部は高級住宅街となっており、フォンデル公園などがある。ムセーウム広場から西へと伸びるP.C.ホーフト通りには高級ブランド店が立ち並ぶ。市の南部にはオランダ近代建築の父といわれるヘンドリク・ペトルス・ベルラーヘがアムステルダム南部市域拡張計画においてプランニングし建設した地区が現在も残っている。


 アイ湾に面したZeeburgやWestpoortは港湾地区であり、アムステルダム港の中心部をなしている。

 

 勇はアムステルダム駅近くの安宿に泊まった。ライトアップされたダムが部屋から見えた。

 クタクタになっていたので風呂にも入らずに寝た。

 四条の家はシンゲル運河の近くにあった。

 要介護状態だったのに、最近開発された『オリンポス』という薬を飲んだら普通に動けるようになった。

『蛸薬師の罠かも知れない』

 和泉の言葉を思い出し、鳥肌が立った。

『香美を助けるには四条に会う必要がある』と、父親、小五郎の声が聞こえた気がした。

 父はエジプト煙草の『フィガロ』を愛飲していた。小五郎は安楽椅子にもたれたまま、『フィガロ』を吸いながら深く考え込む癖があった。

 ドンッ!

 勇は、銃声で騒動になった広場から、謎の女性とともにアパートに向かった。彼女は軍の重要な機密が奪われそうになっていると語るが、未明に🐏と、羊が描かれたメモ帳を持ってアムステルダム中央駅前で刺し殺される。見張りの男たちを撒いてインターシティIC乗り込んだ勇は、車内のテレビで自分が殺人犯になっていることを知り、警察をかわして目的地のヒンデローペン駅に向かう。熊の怪物を倒したことで透明人間になることに成功した。

 駅は麦畑の真っ只中に立っている。無人駅なんて物騒だな?村の中には水路が張り巡らされ、北海から吹く風の音に耳をすませた。

 どことなくコロンボ刑事に似た老人の車で、アイセル湖の水辺に向かう。羊が草を食んでいる。

「大昔はこの辺は海だったようだよ」

 地元の名士のところに行くが、実は剣崎が陰謀の黒幕で、勇は銃で撃たれるものの、老人が貸し与えたコートの胸の聖書に弾が当たって助かる。警察に報告する勇だったが、警察は彼の話を信じてくれず、剣崎と知り合いという署長と警察に見切りをつけ、剣崎の陰謀を自分で暴こうとする。風車の村にやって来る。1000基以上はあるという噂だ。剣崎の手先につかまり、観光客の鈴花すずかと一緒に廃墟に手錠で繋がれる。

 

 蟻沢は、世界各国で暗躍するスパイを摘発する任に命ぜられ、情報部長の世羅宗介せらそうすけからターキーという偽名を貰い、チューリッヒへ派遣された。


 ターキーはチューリッヒで鈴花という名儀の香美、そして『長官』と呼ばれるスパイと合流し、調査を始める。『長官』は黒い頭巾を被っていた。

「昔、火事で焼け爛れたんだ」


 調査の結果、ターキーらは津田つだと名乗る日本人が疑わしいことを突き止める。ターキーらは津田を登山に誘い出した。アルプス東端にあるセメリング峠の断崖から津田を突き落として殺した。しかし、津田はスパイとはまったくの無関係であることが世羅からのメールで判明し、香美は勇に人殺し稼業に等しいスパイを辞めてほしいと懇願し始める。

「スパイを辞めたら剣崎に殺されるかも知れない」

「昔の優しい父さんに戻ってほしい」

 娘が生まれたのは1975年、その頃には警察も辞めて神保町の本屋で働いていた。香美は勇が犯罪者だったことも、警察で働いていたことも知らない。

 そんな中、長官の調査によって、スパイのアジトらしきレユニオン広場にあるサンテティエンヌ教会が突き止められ、長官の正体も判明する。⛪ゴシック様式の美しい教会だ。

「ピーター・フォークに憧れて、この顔にしたんだ」

『刑事コロンボ』は、日本語版の放送は当初NHKがテスト用に持っていたUHFチャンネルで1972年8月27日に放送され、その後NHK総合で同年12月31日より放送された。その後旧シリーズ再放送や新シリーズは日本テレビが『水曜ロードショー』→『金曜ロードショー』の一企画扱いで不定期放送。

 長官は黒い頭巾を剥いだ。

「まさか、アンタだったとは?あの無人駅に出会ったときから全てはじまっていたってことか?」

「いや、新宿駅前でおまえを見たときからだ」

 シルクハットの男!?

「アンタのおかげで100歳まで生きることが出来た」

 剣崎は本当はテルスターというドイツのスパイだ。テルスターは、世界で始めて運行された能動通信衛星が由来だ。AT&Tベル研究所によって開発され、1962年7月にNASAによって打ち上げられた。 テルスターは直径86センチメートル、重さ77キログラムの球形の衛星であり、157分(2時間37分)で地球を一周する。 ... この周波数は後の通信衛星にも広く採用されている。

 テルスターは人間の心を読むことが出来た。

「俺は親父から虐待されて育った!」

 教会にテルスターの声が響いた。

「復讐のために孫を巻き込まないでくれ」

「息子は、和樹はどこにいるの?」

 香美は狼狽していた。

 もしかしたら、既に手を血で汚しているのか!?

 10月は神無月と呼ばれ、日本各地にいる神様が出雲に出張する。


 大首が横浜中華街に現れた!

 江戸時代の怪談や随筆などの古書には、巨大な女の生首が現れたという事例が多数あり、ほとんどは女性で、既婚女性の証としてお歯黒を付けていることが特徴である。それらの正体は、人間の怨霊や執念が妖怪と化したもの、あるいはキツネやタヌキが化けたものといわれている。

 山口県岩国の怪談集『岩邑怪談録』には「古城の化物の事」と題し、ある女が御城山という山で一丈(約3メートル)の女の生首に遭い、にこにこと笑いかけられたとある。江戸時代の俳人・堀麦水による奇談集『三州奇談』では、金沢で雨上がりの夜に月が顔を出し始めた頃、雷と共に大きさ6~7尺(約1.8~2メートル)ほどの大首が現れたとあり、塀の上に大きな首が乗っていたこともあるという。また、ある者がこの大首に息を吐きかけられ、その場所が黄色く腫れて具合が悪くなり、医者に薬湯を処方してもらって治ったという話もある。  

 毒気を浴びた通行人がバタバタと倒れた。

 大首は和樹の背後に迫りつつあった。


 

 


 

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