第41話麻衣のうんちすごいっっ!!

「愛羅~。誤解されそうなこと言わないよー」


 笑いながら麻衣が突っ込んだものの、愛羅は気にした様子はない。

 うんちだ、うんちと、お腹を抱えながら足をばたつかせて爆笑している。


「もう、無視しましょうか。次はお義兄さんの番ですよ」

「そうだな。サイコロ振るか」


 テレビ画面にサイコロが表示されて転がっていく。出目は六。麻衣の後を追いかけようと線路を進む。


「あ、うんち……」


 なんと先ほど麻衣が使ったうんちの妨害によって前に進めなかった。これは酷い。ネタでしかないはずのうんちが、効果を発揮したのだ。


「麻衣のうんちすごいっっ!!」


 愛羅はさらに笑って目に涙を浮かべている。麻衣のうんちと、連呼されたせいで麻衣は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。うんちに妨害されているのは間違いないので、愛羅を注意するようなことはできない。


 リビングでは、うんちが連呼されてて非常にIQの低い空間ができあがっていた。


「愛羅の番だから! 笑ってないで!」


 麻衣が恥ずかしながら怒るという器用なことをしているんだけど、愛羅は笑っていて聞いていない。むっとした顔をした麻衣は俺の上に乗っかりながら、愛羅のコントローラーを奪い取ろうとした。


「ま、麻衣ちゃん!?」


 髪の毛が顔の近くに当たって甘い香りがする。さらに太ももには柔らかい感触があり、理性がガラガラと音を立てて崩壊しそうだ。


 いくら兄妹だからって男に対して無防備すぎるだろう。麻衣みたいな美人に今みたいなことをされたら、勘違いする男が続出するぞ。今度、異性に接する際の注意点を教えておかないと。


「うんちは忘れて! はやくしてー!」

「麻衣、ごめんってーーっ!」


 じゃれ付き合いながら愛羅はようやくサイコロを投げた。その間、ずっと柔らかい感触が続くのだが、俺は木だ、石だ、無機物だと脳内で繰り返しながら、理性を必死に維持していた。


「じゃあ、わたしもカード使おうっ!」


 選んだのは全員がランダムに吹っ飛んでしまうシャッフルカードだった。迷わず決定ボタンを押す。


「あ……」


 麻衣は青森、俺は東京、愛羅は沖縄に移動していた。使った本人が一番損している最悪の結果となったのだだが、愛羅は笑ったままだ。


「ありえんってっ! 遠すぎっしょっ!」

「だね! 運悪すぎ!」


 最悪の結果が出たというのに、愛羅と麻衣は楽しんでいた。


 さらにゲームを進めていくと、スリにあって所持金がゼロになったり、赤いマスに止まって借金を背負うことになる。それでも二人は運が悪いと笑い合う。


 この手のゲームって、プレイヤー同士で競争するからピリピリするものだと思っていたけど、実際は違ったようだ。男同士は無駄な張り合いをするから勘違いしていたのかな? まあ、二人が楽しめているのであれば文句はない。


 最初の目的地は俺が一番乗り。その後も俺の運は絶好調で三回も連続して一番で目的地に着いてしまった。結局、ゲームは俺が一位、愛羅が二位、麻衣が僅差で三位という結果になる。


 もう一度遊ぼう! と二人がおねだりしているが、そろそろ時間だ。インターホンがなる。


「見てくる」


 コントローラーを置いてソファーから立ち上がる。麻衣が少し寂しそうな顔をしていたように見えたが、気のせいだろう。


 モニターを見ると紬がいた。Tシャツにハーフパンツといったラフな格好で、キャップの帽子に髪の毛を入れていて、男の子にも見える。


「開けるね」

「はーい!」


 自動ドアを開けるとモニターの電源が切れた。しばらく待つとピンポーンと鳴ったので、ドアを開ける。


「麻衣のお義兄さんこんにちは!」

「こんにちは」


 挨拶をした紬の手には紙袋があって、俺に渡しくれた。


「ゼリーのお土産です」

「ありがとう」


 愛羅に続き紬にまでお土産をもらってしまったので、最近の子は本当にしっかりしている。


 紬がリビングに入って麻衣たちと合流姿を見ながら、そんなことを思っていた。


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