第34話学校ーー! おわったねーーーっっ!!
お義兄さんは私よりずっと大人で、色んな人と出会ってきた。言葉にしてみればすごく当たり前なんだけど、今まで意識しないようにしていた事実です。
人生経験は私とは比べものにならない。私は恋人なんていたことないけど、お義兄さんにはレイチェルさんがいた。他にも二人でお酒を飲むほど仲のよ女性だっている。お仕事も同じだったみたいだし、話は盛り上がったんだろうなと思うと、胸にもやもやとした気持ちが湧き上がって何かしていないと落ち着きません。
だから、仕事中だとわかっていてもお義兄さんにチャットを送っちゃいました。
◇ ◇ ◇
「ふぅ」
授業は終わってもう放課後です。今日は先生が話している内容はまったく頭に入らず、ずっとお義兄さんに嘘をついてしまったことが気になっていました。
自習なんかなくて、先生に隠れてチャットを送っていたことがバレたら、幻滅されちゃうかな。やったらダメとは理解しているんですが、お義兄さんが女性と二人っきりで家にいる。その事実に心が耐えられませんでした。
何も起こらないで。
早く帰って。
プライベートに入り込まないで。
今でもそんな気持ちがくすぶっています。
多分、ちょっとしたことで再燃しちゃうんだろうな。
「学校ーー! おわったねーーーっっ!!」
嫌な気持ちを吹き飛ばすような、元気な声を出しているのは愛羅だった。紬と一緒に私の席にまで来てくれます。
「今日、どこいくー?」
約束してはいないのですが、一緒に遊ぶのが当然といわんばかりに誘ってくれました。
お義兄さんのこともあって今日は家に帰りにくい。本当はMIXのお仕事をしないといけないんですけど、気持ちは紬や愛羅と一緒に遊ぶ方に大きく傾いています。
「パフェ食べたくない!?」
紬の提案で止めを刺されました。
甘い物たべたいっ! という言葉に脳内が支配されて、涎が出てきそう。
現実逃避なのはわかっているですが、拒否できません。
「いいね! 私は賛成。愛羅は?」
「甘いの好きだからいいよっ! 食べよーーっ!!」
今日の目的地が決まったので、急いでスクールバックを肩にかけると学校を出て行きます。場所は駅前にあるファミレスです。
三人でおしゃべりしながら移動すると、すぐに着いちゃいました。
店内は少し混み合っていたんですが、幸運にもソファー席に座れたので、メニューを開いてドリンクバーやパフェを頼んでからおしゃべりを再開します。
「ねーねー、高校生になったらやりたかったことって、何?」
紬がスプーンをくわえながら聞いてきました。
私は買い食いぐらいしか思い浮かびません。後はなんだろう。大学受験はしたいことじゃないし、部活で活躍したいって気持ちもない。お義兄さんとの生活は高校生になったからやりたいことではなく、年齢なんて関係なくてずっと続けていきたいことですし。MIXの技術を磨きたいぐらいしか、ないですね……。
「こうやって皆と話せてるから、もうないかな」
「ええええーーーっ!! 麻衣ってストイックすぎじゃねーー!? そんなんじゃ、高校生活なんてすぐに終わっちゃうっ!」
急に愛羅が大きな声を出したので、体がびくっとしちゃいました。もう少しでスプーンに乗せたパフェのアイスが落ちちゃうところです。
「私は初めての彼ピが欲しいっ!!」
え、愛羅は急に何を言ったの!?
知らない単語を使われて戸惑ってしまいます。
「彼ピ……?」
「彼氏、要は恋人が欲しいってことだよ!」
私が疑問を口にすると紬が答えてくれました。なるほど。彼氏のことを彼ピというのが、現代の流行? なんですね。
派手な見た目をしているので彼氏の一人や二人ぐらいいると思っていたんですが、愛羅は恋人がいたことなかったんですね。ちょっと意外でした。恋愛のベテランだったら、色々と相談したかったので少しだけ残念、かな。
「ねーねー。この後、どこにいくー?」
隣の席に座っていた二十代の男女が席を立ちました。
女性は男性の腕を組んで楽しそうに話しかけます。
「俺の家でデームでもするか」
「行く、行くー!」
私たちは会話を止めると、不躾にもそんな二人を目だけでずっと追って、姿が見えなくなると愛羅が脱力したようにテーブルに倒れ込みました。
「いいなーーーっ! わたしもイチャイチャしたい!!」
魂からひねり出しているような、そんな声です。
昔から相手が本心で言っているのか、聞くだけでなんとなくわかってしまうんですよね。知りたくないことも気づいてしまうので、この特技で得したことはほとんどないんですが。
「私も欲しいなぁ。一緒に学校に行って、帰りにカラオケで遊びたい!」
話題に乗った紬がスプーンをパフェに突き刺しながら、愚痴ってました。
部活もあるので彼氏を作るのは難しそうな気がします。
実は同じスポーツをしていたら恋が芽生えやすいとか、あるのでしょうか。もしそうなら、愛羅より紬の方がチャンスはありそうですね。
「ねーねー。麻衣はどうなの?」
なんとなくこの話題には参加したくなかったので、聞くだけに徹していたんですが、ついに質問されてしまいました。さあ、どうやって答えましょうか。少し悩んでしまいますね……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます