171話 お姉さん?とデート??3
「そろそろお腹も空いてきましたし少し早いですが昼食にしようか」
店内を小一時間程見て回り店を後にした時にメアさんからそう言われた。行きたいお店や食べたい物を問われたがこの街に来たばかりでわからないと告げると彼女のお勧めの見せてに向かうこととなった。
『なんだこのお店は?』連れて来られた店の外観を目にして真っ先に浮かんだ感想だった。店の周りに咲く花々、これはお店を彩っているものだから問題ない。ウエイトレスと思われる人の恰好が背中から薄透明の羽のようなモノを生やした妖精のようだったり本当の妖精の様な小柄な飛行物体が飛びまわっているように見えるのも気にはなるがここは異世界。まあそういうものなのだろうからいいとしよう、うん。
問題は
大河は昨夜を跨いで朝から続く諸々の出来事で本日機能半減以下となっている頭を指先で熱を測るように抑えながら思考を回す。
落ち着け俺、一旦落ち着つこう。まあ、見た目で判断するのはよくないよな。見た目がファンシーなだけで中身はごくごく普通かもしれないしな。店の前に男女の銅像らしき物が口付けを交わすような形に見えるけどアレはまあ置物だし関係ないだろう。看板のあれだってまあ人を集める為の宣伝効果的なアレで実際には全く関係ないとかあるだろうしな。目の前の仲睦まじく腕を組んで店に入っていくカップルらしき男女が一組だったり二組だったり三組だったりいるのも偶然………ではなくないか?流石に
傍か見てもピンク色のイチャイチャオーラを漂わせながら来店する客層を前に流石のポンコツ思考でも誤魔化せなくなった大河はもう浮かび上がって来る言い訳などもなくなってしまい、只々疑問だけが残る形となったのでこの偏った客層の店舗へと招いた張本人に問いただそうと横を向こうとした。けれど一瞬だけ彼女の表情を視界に捉えた瞬間に開こうとした口をすぐさま閉ざして視線を前に戻した。
呆然としたまま固まってる。これは相当ショック?だったのか。或いは衝撃が大きすぎたのか。メアさんのこれまでの一緒にいた感じからしても多分本来ならもっと落ち着いた感じの、料理内容とかはともかく普通な感じのお店に連れて行く筈だっただろうからな。それが何故か前来た時とは180度変貌してしまっていてショックが強すぎて硬直しまっている。っていったとこかな?しかもようやく解放されたけど何度もメモと見比べている辺り場所がこの辺なのは間違いないみたいだな。
「な、何で!?前はもっと普通の。ごくごく一般的な喫茶店だったのに何でこんな変わってるの!?」
かなり混乱してるな、ここまで目に見えて狼狽えるとは。メアさんがせっかく連れて来てくれた(?)ところではあるけれど、流石にこれは、うん。シンプルに違う場所にした方がいい気がする。こんな所に入っても俺らの関係だといたたまれないだろうしな。そうと決まればさっさと場所を移そう。まずはメアさんを落ち着かせてから…
「あらあら、そこのお姉さんとお兄さんお店の前で突っ立ってどうしたの?」
どうにかしようとした矢先に背後から声を掛けられたので振り返ると上から島でピンク色がふんだんに盛り込まれた衣装を着たメイドさんがこちらを見つめていた。
「ええっと、何て言えばいいんでしょうか」
「ああわかる、わかりますよ!」
「え、わかるんですか?」
まだ何も言ってないんですけど
「まだ付き合いたてで来店するのをためらってるんですよね!」
うん、全然違う。自信満々なところ悪いけどもの凄い空振りだ
「あの、そうではなくてですね…て、ちょっと!」
「はいはい、気にせずとありあえず入っちゃいましょう。カップル一組、2名様ご来店でぇ~す!」
「いえ、そもそも僕らはカップルでは…」
「ああ、はいはいわかりますよ。やっぱ付き合った当初はそういうのが周囲に知られるのは恥ずかしいですもんね。けど安心してください!ほら、周りもカップルさんだらけですから!ね?」
駄目だ、この妖精メイドさんも最近よく出没する人の話しを聞かない系のタイプだ。
「あ、あの。私と彼は本当にそういう関係では…」
ようやくカムバックしたメアさんがしかし定員さんはそれを手をひらひらとさせながら笑って否定する。
「何言ってるんですか。そういう関係じゃなかったら若い男女がこんな色ボケ店の前であんなに立ち往生なんてしてるわけないじゃないですか~」
「!!」
そのツッコミはやめて。うちの連れの人にクリティカルヒットしてダメージ食らっちゃってるから。というか仮にも自分が働いている店を色ボケって。
「ささ、話はお相手さんとじっくりメニューを決めながらでもしてもらって、とりあえずちゃっちゃっと座ってくださいな!」
客観的にも俺やメアさんの方が身体能力は大きく優れているとは思うが、メイドさんの技なのかいつの間にか洗練された動きで背後に回られ、いつの間にか椅子に座らされながら開かれたメニュー表を持たされていた。
「ではごゆっくりどうぞ!」
こちらが理解するよりも前にメイドさんは軽く会釈して早々に席を去って行った。連続で急展開が発生し、腰を落ち着けたことで肩の力が抜けた俺はリラックスしようと溜息交じりにやや前姿勢となる。すると頭部に何か当たる感触が走り、視線を上げると同じく若干前のめりになりながらこちらを上目遣いでこちらを見つめてくるメアさんと目が合った。
「「………」」
気を休めようとした途端にまた新たなる緊急事態に息つく暇もなく、かといって気まずさから声も出なかった俺らはゆっくりと姿勢を正そうとした。けれど椅子が独特な造りとなっており、通常90から100度程のⅬ字かやや後ろに余裕のある筈の背もたれが前方にやや傾いた60度程の背もたれとなっており逆にこちらの背を押すような形状となっていた。意図的に恋人ととの物理的距離を縮める為のものなのだろうが自分達のような本来訪れるべきでない客にとっては大変迷惑な配慮である。しかもこの店だから許されているだけでこの形状故に体というか腰には優しくない設計だな。
駄目だ。なんとか気を散らそうとしてもこの強制的に目の前のパートナーと至近距離で向き合わされるこの状況を誤魔化せそうにないな。普通に座っているだけでもこの距離はシンプルに恥ずかしさが込み上げてくる。ずっと沈黙している辺りあちらさんもこちらと同じ心情のようだな。
「その…まあ、あれだ。さっき言ったみたいに私達アンラッキーズだとこういう事も日常的に発生してしまうんだろうな………す、すまない。本当はこんな予定じゃなかったし、前来た時はこんな店じゃなくてあまりの変貌に驚いて混乱してしまって…きちんと謝罪すら出来なくてごめん」
唐突に言い訳を始めるも焦るメアさん。その様子が黒ずくめだった時からは考えられず新鮮で混乱する彼女になんとも言えない感情を抱きながら一呼吸おいて呟いた。
「…まあ自分は美人なお姉さんと疑似デートみたいなのを体験できるので役得だとは思いますが」
「ブゥッ!!ケホッケホッ!」
「だ、大丈夫ですか!?」
「…誰のせいだと思っているんだ」
普通にフォローしただけのつもりだったんだけど。これも複雑な女心というやつだろうか?
まあメアさんみたいな人と俺とじゃそりゃすれ違うものだし気にしないようにしよう
俺は眼前のジド目で睨みつけて来る紅色の瞳を見えないものとしつつ大量に砂糖をぶちまけたような紅茶を口にから吐き出しそうになる衝動を抑えながらゆっくりと喉に流し込んだ。
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