170話 お姉さん?とデート??2
「しかしこうして見てみてもポーションだけでもかなりの数がありますね」
「そうだな。冒険者の中ではほとんどの者がお世話になる基本中の基本だし、簡単に仕分けしても小、中、大と効能が別れるし用途、使用方法によって違って来る。魔法使い用のマジックポーションなんかも…」
棚に乱雑に並べられたラベルを見ながら大河が呟くとナイトメアも品を手に取りながら同意するようにうんうんと頷いていたが突然ピタリと動きが止まった。
「なあ少年、一つ気になる事があるのだが」
「な、何でしょうか?というか若干顔がこわばっているといいますか、少しですけど怖いかおを顔をされているような気が…」
「おい少年、昨日の事を覚えているだろうか?」
「覚えていると言えば覚えていますがどの事でしょうか?あまりに濃い一日でしたのでどれの事を指摘されているのか分かりかねるんですけども」
「あの時は私は足を痛めた。本来ならポーションの出番だったのだが落下の際に落とした+割れてしまって所持していたポーションは全滅してしまっていた訳なのだが………」
「………」
無言である故に眼光と威圧感から何を言わんとしているのか雄弁に語りかけられている気がする。ていうか脅しかけてきてる!
「…その様子から答えは明白な気もするが一応聞いておこうかな?」
ああ、はいあれですね。ポーション持ってなかったでしょ?とか言われて怒られる流れなんですねこれは…もし訳ないけどシンプルに怖いから持ってた事にしよ、うん。
「い、いえ。冒険者の嗜みですしあの時もきちんと携帯していたと思います!」
「ほおぉ、つまり君は回復薬が手元にあったにも拘らず怪我をして苦しんでいた私を放置していたと?そしてそれを承知で異性に背負わされる辱めを受ける私を心の中で嘲笑いながら羞恥に苦しむ私の無様を楽しんでいたのだと?」
やっべぇ!普通に考えたらポーション持ってたのに使わなかったらそうなるじゃん俺のアホオォォォ!!ううぅ、まだ今朝のビンタが効いているのか頭が回っていないらしい。ここは下手な事を考えずに正直に答えよう。
「最初っから所持していませんでした。怒られたくなくて嘘を吐きました。ゴメンナサイ」
「…はあぁ、そんな事だろうと思ったが。それにしても君は思っていた以上に嘘が下手ですね」
この場に限って言えば自分でもそう思う
「まったく。自分の腕を過信していると碌ないぞ。自分は大丈夫だと思い込んで準備を怠る者が初級冒険者ではとりわけ多いと聞きますが貴方もそういう口なのか?そもそも君は補助品どころか装備も碌に持ち合わせてなかったな。戦闘でも一切使ったところを見た記憶もないし。魔術師でもないのに今時ナイフの一つも所持していない冒険者の方が絶滅危惧種だ。少々驕りが過ぎるんじゃないか?」
正直言いた事は山のようにあるけど今の回らない頭で発言するとまた要らんことを口にして頭を下げなければならない未来に到達する気がする。ここは反省してますアピールをする為にも沈黙を貫こう
「確かに君の身体能力は高い。けれど冒険では常にイレギュラーが付き物だ。このままのやり方では………」
「………?」
「君、とりあえず聞いている振りしてとにかくこの場をやり過ごそうとしてるだろう?」
え、何でバレた?そんなに今の俺って態度に出てるの?
「何か言いたい事があるなら言ってみろ」
「…怒りませんか?」
「内容次第。と言いたいが私も君の言い分も聞かずに一方的に攻め立てたからな。とりあえずは怒らないと約束するよ」
『とりあえず』という部分にかなり不安を感じるけど…うん、まあ話せばわかってくれるだろうこの人は。アレらと違って
「では一つ言わせてもらいますが回復薬等は確かに所持していませんでした。持ってきたかったですが、こういう店がどういうところか勉強も兼ねて街に着いたら自分で足を運んで自分で選べと言われました。なので元々持って来ていませんでした」
「それなら冒険に行く前に揃えればよかっただろう」
「誠にもっともな意見だとは思うのですが自分と最初にあった時の事を覚えていますか?」
「最初にあった時と言うと確かギルドで………そう言えば初対面で出会った時に全身包帯グルグル巻きじゃなかったか?ああ、そうだった!色々ありすぎて忘れていたが何であんな状態でギルドなんかに来ていたんだ!馬鹿なのか君は!?」
「確かに馬鹿ですね。怪我云々を除いても激戦の疲れで爆睡しているのをいい事に本人に無断で勝手にギルドまで引きずって引っ張って行き、勝手に冒険に連れ出そうとしている仲間は馬鹿としか言いようがありませんね」
「………ああ~まあ、うん。そうだな、うん。君のパーティーメンバーは中々に…その、個性的だったものな」
あれらを前によく個性的程度の表現に留めたな。ああ、そっか。一応俺の仲間と思ってるからか。
「なんとなく事情は理解した、うん。道中での会話を思い出すと君は謙虚なタイプだったものな。これまでも色々と大変だったのだな、うん」
なんか随分よそよそしい態度になったというか、少し強めに言い過ぎてしまっただろうか?申し訳なくなってきたな。
「ま、まあ過ぎ去った話は置いておくとしてお薦めなどがあったら教えてもらっていいですかね?」
「そ、そうだな。成り立てだと色々と勝手がわからないもだしね、うん。そうだな…とりあえず最初はこれだな」
そう言って彼女から手渡された。一つは飲み薬タイプと思われる試験官の物。そしてもう一つは…注射器だった。なんだろう、嫌な予感がする
「あの、これって…」
「注射薬、使い方は見ての通りだ」
やっぱりか。回復と同時に削られる気がするけど
「ああ、その顔。君もこういうのは苦手な口かな」
「というより何でこんなあるのかなと。普通に飲み薬あるんだからわざわざこんな物騒なものを使わなくても…」
「戦闘を終えた後とかなら飲み薬タイプで充分だが、戦闘中はそうもいかないだろう?後方支援の魔術師などならともかく、剣士などの近接戦闘タイプは一旦戦線から離脱するか大きな隙ができるかしないと使用できないだろう」
「言われてみれば確かに。それでか」
「それと後は…これだな」
「赤、青、黄、紫、黒…て、これ何の薬なんですか?」
「火傷や凍傷、痺れに毒などといった状態異常の為のものだ」
「こんなに必要…なんですよね」
正直こんなに必要ないだろうと直感的には思うのだが…うん。メアさんが勧めるのだからきっと必要なんだな、うん
「確かにこの周辺にはそこまで状態異常を発生させる魔物が住み着いているわけではないから正直ここまで完備しておく必要はないかもしれないが」
あれぇ?
「必要だと思うんだ。特に我ら
なんだろう、とても不名誉な呼び名をされてる気がする
「転んだ拍子に熱々の紅茶を水筒を頭からぶっかけられたり、手が滑って練習中の冒険者の毒塗りの剣が飛んできたり、間違って状態異常の魔法を掛けられたり、運悪く魔物の軍団に襲われたりと。そういう可能性が秘められているんだ、我々には」
『可能性が秘められている』って普通いい感じの事に使われるニュアンスのイメージだったんだけど認識が変りそう。そしてそんな事なくないですか?と言いたいのにこれまで自分の身に起こった非日常を考えると普通にあり得そうと思ってしまうようになっているのが悲しい。それにしてもこの哀愁漂うようなこの感じ、もしかして例えじゃなくて実体験だったのだろうか?その場合僕も同じ運命を辿るような気がする。
「絶対とは言わないが私の経験から所持していた方がいいとは思うぞ。冒険の際でもいざという時あれば役に立つしな」
「ソウデスネ」
力なく返答しつつ、俺はメアさんの解説付きで店内の商品を見て回ったのだった。
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