161話 VSラブコング3
〜数日前〜
「
「ふ~む、発火させるまで約二秒。ほぼタイムラグ無しで発動できるようになった。最初の頃と比べると魔力の流し方も実にスムーズだ」
「使用の際に高い集中力を要する点ではまだまだですけど少しは慣れてきた気がします」
「うむ、ではそろそろステージアップといこうかタイガ
「練習のレベルを引き上げるって意味ですよね?次はどんな…はっ!もしかしてこの間やった全身から火を放出させる練習ですか!?あれは絶対無理ですよ!?全身に魔力を張り巡らせる力もコントロールも未熟過ぎますし、なんとか発動できた時も火力を全然調整できず全身火に包まれて消火できた時は服は完全にチリと化してしまってましたし…あんな練習今の俺には到底無理です!!特に精神的に!」
「はっはっはっはっ!随分堪えみたいだな
「それじゃあ次の練習って…」
「今ままで行っていた事を逆側で出来るようになる特訓だ」
「逆?左手でって事ですか?」
「そういう事だ」
ブライトと話していると別の人物が介入してきた。
「マルグレアさん」
「習得は勿論だが、これまで感覚が掴みやすいよう利き腕で行っていた魔力操作を左腕でも可能にしてもうらのがこの修行の本質と言っていい。まずは試しにやってみるといい」
「はい」
今まで右腕でやっていたのと同じような感覚で…
「
「う~ん、流石に一発目からすんなりはいかないか」
「なんかこう絡まるっていうか、真っすぐ進めないみたいな感じで」
「けれど全く可能性が無いと言うわけでも無いみたいだぞ。寧ろ初めてでその感覚まで至れたのであればかなり見込みはある。どっかの誰かさんはそこにその域に達するのに相当時間が掛かったみたいだったからな」
「確かに、私の時は最初何度やっても駄目で欠片も感覚を掴めず苦労したな。あっはっはっはっはっは!」
「それに君は最近になって魔力を自覚して魔力操作を練習し始めたからな。他の者と比べてそこまで利き手でない事への抵抗感ややりにくさを感じにくい筈だ」
「ああ、確かに繊細な運動神経とかと比べるとまだそこまで違和感とかはありませんね」
「肉体の感覚と一緒で練習で片側だけで経験を培う年月が長ければ長くなるほど逆側でやろうとした際の慣れない違和感や抵抗感はは大きくなるからな」
確かにその点で言えば魔力を扱い始めて赤子同然の俺の方がスムーズにいけるかもな。
「簡単にはいかないでしょうけといずれモノにしてしませます」
それから練習を重ねてなんとか左手でも点火出来るようになった。けれどその後の修行が問題だった。左右の同時発動+動きながらの継続。まず単純に点火させる箇所が倍増した事によりこれまでは比較にならないくらいの集中力を要する事になった。それに左右で発動までの時間差や魔力経路の感覚も異なっていて同じような事なのに難易度がこれまでより跳ね上がっていた。
それから何度も練習してみたけど駄目だった。左右の発動まではなんとかモノにできたものの、動きながら放出状態を維持するのは俺の技術力では難しく、結局習得には至らなかった。
けど、これしかない!
確かに修行中は実践レベルでは「使える」という枠に当てはまらない程度ではあったが可能性が丸っきり無かったわけでもない。同時発動事態はできていたし、僅かだが動きながらも継続し続ける事が出来た時もあった。
問題はその時よりも短い発動時間内に相手の懐に飛び込んで攻撃をぶつける事ができるかどうかという点だが…
『忘れるなよ。魔術師に必要なのは…』
「気合いと根性。だもんな」
その言葉には色々と思う事はあったけど、間違いなく今がその時だ!
覚悟を決めた大河に右拳が襲いかかり少し後ろに下がってギリギリでかわした。
集中しろ、勝負は一瞬!
右を振り終えると即座に左フックが再び彼を襲い、大河はそれをダッキングでかわしながらその動きをしっかりと見極めていた。
完全に振り切ったフルスイング。
意を決して魂をかけて大きく叫ぶ。
「「
点火させると同時に攻撃直後の僅かな隙を逃さぬようにラブコングに向かって一気に直進する。
射程に入ると同時、少し弧を描きながら拳を突き出す。そんな大河を殴り倒そうとラブコングも拳を振り上げて迎撃態勢を取っていた。
間に合えぇ――!!
不安に駆られながらも大河は必死に右拳を前に突き出した。両者のスピードはほぼ互角だったが動きだしの差でタイガの拳が先に相手の横っ面を捉えた。
大河の攻撃をもろに食らったラブコングはダメージでふらつきながら後退し、それを見た大河は確信を得て追撃せんと左拳を強く握る。
もう一発!これで、
大河はありったけの力を込めて勝負を賭けた乾坤一撃の一打を突き出した。しかし…
なっ、ほ、火が!
大河が全てを込めた
勝負の決め手としていたものだけにその動揺は大きく、揺れる気持ちの中で突き出した拳は魔力加算を追加できなかった以上の影響がでてしまい、いつもの威力よりも大きく落ちてしまっていた。
しかし一番まずかったのはその拳の威力が想定以上に低いものになってしまっていた事。その結果ひるませるには叶わなかった。つまり…
「ウォォッ!!」
「うぐぅ!!」
大河失敗した代償を、返しを食らった事によって文字通りそれを体で知る事となってしまった。
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