160話 VSラブコング2

 ほぼ無防備な状態からラブコングの攻撃を食らった大河は地面を転げまわりながらも膝を突いて何とか態勢を立て直した。


 すげぇ衝撃だったな。うぅっ…腹に丸太でもぶち込まれたのかと思った。防御が間に合わないと思って咄嗟に後ろに飛べたのが幸いだったな。あんなのが完全にまともに入ったらと想像すると…何故か師匠との修行が頭をよぎるな。けどそれお陰修行とは言いたくないけれどさっきの以上のを何度もぶち込まれ続けて来ただけあって悲しい事に耐性が付いたのか、まだ何とか動けそうだ…足が若干笑ってるけど。


 思い出と現在の状態に苦笑を浮かべているとラブコングが高々とジャンプしながらこちらへと襲いかかって来た。咄嗟に横へ飛んで回避した直後大河の居た場所にラブコングが踏みつけるよう地面に衝突し、辺り一面がその振動で大きく揺らいだ。


 あれはやっかいだな。攻撃までのタイムラグがある上動きも丸見えだからこの体でも当たる事は無いだろうが、攻撃後の隙を突こうにも地面をこんだけ揺らされてる時に突っ込んだら体勢崩してこっちが攻撃を貰いかねない。


「ウォォッ!!」


 っ!さっきよりも余裕ないな。けど…


「ウォォッ!!」


 1回、2回。そして…


「ウォォッ!!」


 3回目。ここだぁ!


 大河は攻撃の振り終わりを狙って相手の顎へと軽く拳を打ち込んだ後、反撃を警戒してすぐさま後ろへ退いた。そして大河が飛んだ直後に振りかざした攻撃が空を切った。


 あぶね。やはり大体二回から三回があの黒ゴリの連続攻撃のパターン。その隙を突いて素早く攻撃と離脱を繰り返せば多分一方的に攻撃すること自体は可能だ。しかしけど問題はそれで果たして勝てるのか?という点だ。正直まるで効いている感じがしない今の様子だとあいつの肉体が限界迎える前にこっち体力の限界迎えて負ける気がする。


 そうなると今以上に攻撃を深く打ち込み続ける必要があるわけだが、体格差や攻撃できるのが顔面くらいな事を考えると連続で打ち込めるのはせいぜい二発か三発がいいとこ。しかも一発でせめてひるませるぐらいはさせないと最悪振り切られて攻撃中の回避不可能なタイミングで二発目に移る前にカウンター貰って最悪そこでジ・エンド。


 結構体しんどいし危険を伴う。だが危険リスクを背負わないとまず勝ち目がない!


 大河が攻勢に転じようとしていたその時、ラブコングは突然動くのを止めてその場に立ち止まると雄たけびを上げながら自身の両胸を叩き始めた。


 急に大人しくなったと思ったら何やってんだこいつ?ゴリラが自分の胸元を叩くこの動作って…確かドラミング、だっけ?威嚇とかそういう意味があった気がするが直接目の前でやられるとなんていうか…おっといけね、呆気に取られてる場合じゃねー。今の内に攻撃を…


 大河が突っ込もうとしたその時だった。突然聞こえて来たナイトメアの叫び声がその前進を寸断した。


「マテタイガ!キケンダ、ニゲロ!」


 彼女の鬼気迫った感じから余程の危険である可能性を反射的に感じ取った大河はすぐさま後ろへと飛ぶと瞬く間にラブコングの拳が振り下ろされ大きく地面を割った。


 メアさんの忠告を聞いてなかったら今頃…いや、それよりもコイツ!


 ラブコングの追撃をなんとか回避するもそれをかわす大河にはこれまで無いようであった僅かな余裕が完全に消し飛んでいた。


 この動き、明らかにさっきよりもパワーアップしてる!力は元より若干分があったスピード差が殆ど消えて今はほぼ互角だ。くそっ!


 先程よりも短い感覚で追撃してくるラブコングの攻撃を大河は必死で避け続けた。


 どうする?どうする!?


 次々と繰り出される猛攻をかわし続けながら回らない頭でなんとか思考を巡らせる。


 くそっ、どうするかなんて決まってる。元々キツイのをぶち込まないと勝てない相手なのは分かっていた事だ。ただそれが明確になっただ。ただ、今の最高火力バーニングフィストじゃダメージは与えられても倒すのは無理だ。かといって未だに使うのにかなりの集中力を要するバーニング、フィストォー火の正拳を連続で使い続けて消耗戦をしたとしても多分こっちが先に折れて負ける。


 単発では不可能。長期戦も厳しいとなると…今の俺最高火力では勝てない。


 つまり、超える必要がある。現時点での最高を!


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