3話 異世界特典

「全く納得はいかんがとりあえず従わされてやるよ」


「やれやれようやくか」


やれやれはこっちのセリフだけどな。


「では今度の今度こそ…」


「ちょい待ち」


「ええい、これ以上一体何が必要だというんじゃ?貴様への説明はワシが直々に事細かくしてやったじゃろうが」


今のも含めてコイツとの会話の中で一体いくつ矛盾点やらツッコミポイントやらが見つかった数えきれんな。


「もうあんたにあれこれ期待しないからひとまず例のやつくれ」


「例のやつ?」


「あれだ、こういう際に渡される異世界転生特典。チート能力ってやつだ」


「異世界転生特典?チート能力?…はて?どこかで聞いたことがある気はするのじゃが、なんじゃたかのう、それは?」


おいぃーー!!異世界なんて魔境に送るのならこれほぼ事項お約束みたいなものだろう?何でそんな重要案件をさらっと忘れてんだよこのクソジジイ!?


「転生者が異世界の地で生き抜く為だったり、与えられた使命を果たす為とかで神とかから授けられる恩恵の事だよ!」


「つまり貴様は自分が送られた世界で楽して過ごしたいが為に、恐れ多くも神たるワシにそのような愚かな助力を求めておるのか?まったく呆れた奴じゃのう」


「どれだけ曲がった解釈してんだよ⁉︎右も左もわからん世界にいきなり放り込まれて生きていけるわけないだろう。まして話の流れ的にモンスターが普通に存在している世界で手ぶらで行くとかただの自殺行為だろが!」


「貴様は本当にそれっぽい屁理屈を並べるのが好きじゃのう」


「全然屁理屈ではねーよ。それと楽云々にに関しては思いっきりあんたにブーメランが突き刺さっている事をいい加減自覚しろ」


「ブーメラン?何処にそんなもんがあるんじゃ?死して尚目が節穴とは全く哀れな奴じゃのう」


…マジで…マジで、魔王を倒せた暁にはこのクソ神をどう処分してもらおうか。真剣に熟慮していかねーとな。


「しかし何でそんなもんをワシがわざわざ授けてやらんといかんのじゃ?」


今さっき説明したばかりだと思うんですけど!?


「何でじゃない。そもそも所詮一般の高校生に過ぎない俺がいきなり何の恩恵もなく異世界へと転生しても魔王なんか倒せるわけないだろう?」


「そこは…ほれ、お前らの世界で言うところの努力と根性とやらで…」


「本気でそんなこと言ってるわけじゃないよな?それで本当にどうにかなるのなら先に送られている冒険者がとっくになんとかしてるだろう?それにお前さっき『ワシの担当している周辺』とか何と言ってだろう。つまりそれ以外のとこだと他の神々の担当であり他にも冒険者が送られているんだろう」


「まあ、そうじゃが?」


「つまりだ。おそらく貴様と違いまともな神たちがしっかりと説明して、強力な装備やら能力とかも授けている状態で転生させているであろうにもかかわらず、今だにその世界の魔王とやらは倒せていないってことだろう。その状況から考えても恩恵を授かっているってるやつらでも倒せないもんをただ転生されただけの俺が倒せるわけないってことだ」


「まったく、屁理屈をこねて最初から他人の力をアテにする事に固執するとは。少しは自分の力だけで解決しようとは考えられんのか」


『それが自力でどうこう出来るなら苦労しなし、先に送られた奴らがとっくに問題解決してるよね?』って話を今丁寧にしたとこなのだが?何で俺の担当はここまで能無しというか理解力が皆無通り越してマイナスレベルなのだろうか?


「仕方ないのう。それなら…おお、そうじゃ。そういえばアレがあったんじゃった」


「アレ?」


「ふふふふふ、貴様にはワシ好みの特別なのを付けといてやる。感謝するがいい」


こいつ好みとか言う時点できっとろくなものじゃない。アドバンテージを得るどころかとてつもないハンデを背負う予感しかしない。


「その特別はいらないからもっと別の…」


「悪いがもう決定した。そしていよいよ転生の時間じゃ」


 大河の拒否発言を堂々と無視すると神は突如天井の方を向いた。大河もつられて上を向くと突然大河の体が白い光に包まれ始めた。


「ちょっ!その前に能力の説明…」


 大河言い切る前に不思議な引力によって引き寄せられていった。




_____________________


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