2話 クソ神への復讐を決意する
大河は衝撃過ぎる新事実に頭が回らず言葉が出なかった。
「ちょっと待ってくれ、俺は何で魂を抜かれたんだ。最近は特にこれといった悪さをした覚えもないのだが?」
ま、まさか『未来で俺が大量殺人を行ったり大虐殺に成りえる選択をしてしまうから』とかだろうか?
「ワシが異世界へ飛ばそうと思ってお前らの世界を覗いた時に最初に目が合ったやつを連れて行こうと決めててな。それがたまたま貴様だったというだけだ」
「………………………………………………………………………………それだけ?」
「それだけとは?」
「実は何か深い事情があるとかは?ここに連れて来られるのが俺でなければいけない理由があったとか」
「ないな」
「世界の危機だったから仕方なくとかは?」
「いいや」
「俺のせいで大勢人間が死んでしまう未来だったとかは?」
「ないな、全く」
「………」
「………」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ザッケンナコラーー!!」
自分の人生の終焉が他人のあまりに自分勝手な都合によって迎えられたものである事を理解した大河の怒りメーターは限界値を軽々と突破しブチギレた。
「てめー!何やらかしてくれてんだよ!?」
「何がじゃ?」
「『何が?』じゃないだろう!何勝手に俺の存在殺してくれてんだよ」
「問題かそれは?」
「なんでお前は勝手に人の人生終わらせといてそんな疑問顔ができるんだよ!どう考えても問題しかないだろう。なんで俺がてめーの気まぐれで何の前触れもなくサクッと殺されなきゃならんのだ!」
「まあまま、現世で生きる時間が100年ぐらいから14年に減っただけじゃ。そんなに気にする事じゃないじゃろ」
「だけじゃねーよ!逆算すると86年だぞ。俺の生きてた年数の約6倍だ。人によっては普通に一生分の時間だぞ。さらっと減少させていい年数じゃねーよ!」
この神の頭は本当にどうなってんだ!
「戻せ!今すぐ俺の魂を元の身体に戻しやがれ!」
「一度引き抜かれた魂が元に戻せるわけなかろう。お主そんなことも知らんのか?無知じゃのう」
「そんなこと普通の人間が知るわけないだろう!」
「大体仮に戻すことが可能であったとしても既に貴様の体は死んでおるじゃろうから無駄じゃ」
「引き抜かれただけなんだから死んでない。生きてるだろ肉体は」
「ほとほと状況を理解しておらんようじゃのうお主。よいか、魂を抜いている途中に力が抜けてお主の肉体はそのまま転倒したじゃろ。あの時に頭部を
「…嘘…だろ」
「それにどの道助かっても心配機能の停止によって生きてわおらんじゃろ。まあ時計もいつか時が来ればその針が止まってしまうように、お主もその時が来てしまったというだけじゃ」
「お前の都合の所為で止まっちまったんだろうが!自然と寿命迎えてしまいましたみたいに言うな!」
(もう
「そもそもなんで俺を異世界転移じゃなく勝手に魂抜いて異世界転生させようとしてんだよ」
「だって、異世界転生なら魂だけで済むが異世界転移だと体ごと飛ばさにゃならんから大変でメンドウなんだぞあれは」
このヤロオォ、他に言うことはないのかよ!
「知るか!俺はそんなくだらない理由で…はぁ〜」
まあ家族や親戚と呼べる者はペット除くといないも同然だから他の奴に比べればまだマシだろうけどよ。
「というか魂の場合もあっちで転生時に肉体とか生成しないといけないから大変なの同じ…というかそっちの方が大変じゃないのか」
「飛ばすのはワシの仕事じゃがそっちの方はワシの管轄外なのでな。結論こっちの方がワシが楽できる」
コイツ…本当に…
「とりあえず魔王なんかよりもまず先にお前を殺すべきだということはよく分かった」
「まあ今の実体があるように見えて魂だけのお前では到底出来っこないがな。そんな無理なことは置いといてまだ無駄に聞くことはあるか」
「一応聞いておきたいんだが俺のようなまだ生きてるのに魂抜かれた可哀そうな被害者は何人いるんだ?」
「ゼロじゃな」
「は?」
「神に魂抜かれてここに連れてこられた人間はお前が初めてだ。つまりお前が今回初となる実験の成功者ということになるな。大変めでたい事であるから光栄に思うと共に喜んでよいぞ」
「…色々と言いたい事はあるがその前に一つ聞かせろ。今神に魂抜かれて連れてこられた人間はお前が初めてと聞こえたんだが」
「そうじゃが」
「つまりあれか?こんな阿保みたいな理由で拉致られたのも俺だけで、こんな馬鹿過ぎる事しでかした神もあんただけか?」
「まあそうなるの」
俺は相当運が悪いらしい。これある意味どんな宝くじよりも当たる確率が低いものに当たってしまったてことだよな、はあぁ〜。
「そもそも何でそんな事したんだよ」
「実は仕事をさぼりまくっていたらいつの間にかワシの担当する転生者が1人だけになってしもうてな」
こいつ、ついに堂々と『さぼりまくってた』と言いやがったな。
「本当は後数人はいる筈なんじゃが居場所の特定が出来なくてな」
「おい!どんだけずさんなんだよお前の職務体制は!」
「じゃがワシの担当している周辺だとしばらく死人は出そうになかったんじゃよ。そして冒険者を担当する神が1人も担当する相手がいなくなると上の神々からちゃんと仕事をしていたのか経歴とかいろいろ確認されてしまう。そしたらワシが折檻されてしまうからのう。じゃからその担当冒険者が死ぬ前にお前を無理矢理連れてきたというわけだ」
「もう呆れすぎて怒る気にすらなれん」
大河はこの神とは名ばかりの自失ニートみたいな老人があまりにやる事がしょうもなさすぎて、そんなのに人生が終わらされた挙句にこれからの担当になってしまったのかと大きなため息を吐く。
「それで俺のメリットは」
「?」
「?じゃないからな。あんたの事情は把握したけど俺がそれに乗っかってやらないといけない理由。魔王を討伐しに行くことでどんな得があるってんだよ」
「世界を救えるという大役に損得感情を持ち出すなど。貴様よほど性格が腐っておるな」
「自分の保身為だけに人様の魂を躊躇なく抜きくさった奴にだけは言われたかないわ」
「異世界の人々を魔王の恐怖から救える。それが結果的に報酬になるじゃろう」
「なんで見ず知らずの異世界の住人の為に命賭けて戦わにゃならんのだ」
「仕方ない奴じゃのう。確か魔王を倒した冒険者には大神様から何でも願いを叶えてもらえるとか何とか誰かが言っとった気がするぞ」
言っとった気がするって…こいつ担当の件といい、説明中も布団から出る気配すら無いこととい、相当の期間仕事さぼって寝てやがったな。だが何でも願いをかなえてもらえるか…。
大河は少しの間会話を中断して思考を巡らせた。
もしかしたら元の世界に返してもらえるかもしれないし、何よりその他の神と対面したときにこいつの悪事を暴いてもらえればこいつを断罪してもらえるかもしれないしな。そうなれば…
大河は目の前の神とは名ばかりの悪魔に復讐する事を誓ったのだった。
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