4話 転生された場所は上空でした
大河が異世界へと転生され目を開けると青々としたまるで澄み切った青空の様な風景が広がっていた。
「ここが異世界か。ここに来る前に最後に見たのがあのクソ神だったのもあって余計に景色が綺麗に感じられるな。ん?」
予想以上の絶景に感動していると何やら音が聞こえ右の方を向くと近くで数羽の鳥が陣形を組んで飛んでいた。
「へーこっちの世界も普通に鳥っているんだな。それともやっぱりモンスターの類なのかな」
前世では目にすることのなかった珍しい光景に惹かれ興味深そうに観察してい。そして今度は左の方を見ると驚き景色に目を奪われるた。
「すげー、雲がこんな近くにある。俺初めてみたな」
もしかしてこの異世界って空の上に街があったりするのかな?もしそうだったらどんな風になってんだろう。
などといった感じで呑気に新鮮な光景を楽しんでいたのだが、体にぶつかり続ける強風が勢いを増し続け無視できないようになっていた。
「にしても風が強すぎるだろう。天空だと常にこんな感じな…の……か…」
下を向いた瞬間にあまりの衝撃で言葉を失った。その目の先には自分が見慣れたものと同じよう大地が広がっており徐々に自分の体がそれに近づいているようようだった。それまでの転生直後のウキウキ気分は下から来る強風によって吹き飛ばされかけていた。
「な、何だろうなこれ。まるで空から落ちてるみたいだな。ははははははは………」
地面との距離が近づくにつれて次第に笑えなくなっていき、嫌でも現実を受け止めなければならない状況になった。
「あんのクソ神!なんてとこ転生してくれてんだよ!これ死ぬからな、絶対に死ぬからな!転生されて数分も経たず死ぬからなこれ‼︎」
大河が叫んでいると大河にとって最も恨めしい者の声が脳内に響いてきた。
『なんじゃ、騒々しいな』
「この声はクソ神!てめーなんてとこに放ってくれてんだよ。このままだとおそらくお前のところに再度直行なんだが⁉︎」
『何じゃと?…なるほど、転生先を少し間違えてしもたようじゃな』
大河は相変わらずの神のセリフに呆れかえる。
「少し?あんたの目は飾りか!どう見たって少しじゃねーよ!何をやったら転送先を上空に間違えられるんだよ」
『そう文句を言うな。手違いで地上から上空何メートルかもわからないところに座標を間違えてしまっただけなんじゃから』
「何処がだけなんだ!その一つだけですでに致命的なんだよ。これで文句言わねー奴なんて悟りを開いた僧侶やらシスターにだっていねーよ!どうすんだこの状況!」
『しょうがない奴じゃな。それならお前に授けたとっておきのスキル。ユニークスキルがあるじゃろう。あれを使えば何とかなる筈じゃ』
そういえば転生直前にそんな話が出て渡される事にさせられてたんだったけ。こいつが気にいる時点で絶対にマトモな類のものじゃない。正直使いたくないけれど、今は他に選択できる手段もないしな。腹を括るしか…
パンドラの箱を開ける可能性が大いに高い事を承知しながらもこのままではほぼ確実に死ぬという背に腹は代えられない状況に意を決し神に尋ねた。
「どうやんだよそれ?」
『なに簡単じゃ、指を振ってしたい事、起こしたい事象を言えばええだけじゃ。簡単じゃろう』
あれ?普通にチートっぽいぞ?このクソ神のことだからどこでも寝れるとかみたいな全く役に立たない系だと思ってたから意外だな。しかも流石チートスキルだけあって恐ろしくお手軽で便利だな。それならさっそく…)
大河は人差し指を立てて左右にふり、【空を飛ぶ】と発言した。するとウィンドーの様なものが大河の目の前に現れた。
『ユニークスキル:ゆびをふる発動
タイガは指を振って【空を飛ぶ】を選択した
発動失敗:タイガはお手玉を手に入れた』
おおぉ!!確かに右手にお手玉が出現したな。流石は異世界だ、何もないとこから突然現れるなんて前の世界の科学の力じゃ考えられない…………じゃなぁーーい!!
「おいクソ神、これはなんだ」
『お手玉じゃろう、貴様そんな事すら知らんのか。貴様の世界では幼児ですら知っておる一般的な代物であろうに。やれやれ知能が低いにもほどがあるわい』
「ちっげーよ、お手玉が何なのかわからないって意味じゃない!俺が聞きたいのはそういうことじゃなくてなんで空飛べるように叫んだにのに飛べない代わりみたくお手玉が出現してるんだってことだよ」
『ああそれはな、スキルの発動時に指定した事が成功するかどうかはランダムだからじゃ』
「はっ?確定じゃないのかよ」
確かにノーリスクの割にあまりに使い勝手が良く便利すぎるとは思ってたが。
「因みにこのお手玉、何に特別な力があったりするのか?」
『貴様お手玉を何だと…ああ、貴様はお手玉を知っているようで知っておらんのじゃったな。だからそんな可笑しな発想が出来てきたんじゃな』
「い・ち・お・う・確認の為に聞いたんだよ!微かな願いを込めてな!というか何でランダムなんだよこのスキル!?」
『よく言うじゃろう、強力な力ほどリスクが伴うと。あれと同じじゃ』
「それじゃこのスキルの成功率は何%ぐらいなんだよ。何回発動させたら成功するだ」
『さあな〜。この世のなあらゆる事を可能にする力じゃからのう。1億…或いは1兆回くらいしたら成功するやもしれんぞ』
「………」
大河はもはや呆れすぎて開いた口が塞がらなかった。それは事実上狙って発動させるのは不可能。俗に言う無理ゲーといものだったからだ。
『どうじゃ夢のあるスキルじゃろう。これぞまさしくユニークスキル、ロマンがあるというやつじゃのう』
「クソスキルじゃねーか!」
大河は転生して早々に自分の与えられた恩恵がユニークと書いてクソと読むユニーク《クソ》スキルだと理解したと同時に、これからの異世界生活で全く役に立ちそうにない現実を落下しながら痛感していた。
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