5話 転生特典のスキルに欠陥しか見当たりません

 大河は上空から落下しながら今まで事を振り返りながら自分の置かれている状況を嘆いていた。


 死んでもないのに勝手に殺された事から始まり、説明はほぼなしのゴミ、拉致った理由があの野郎が楽したいからとかいう超私情。更に転生先が上空とかホントに不幸つうかクソのオンパレードじゃねーか。


 おまけにトドメと言わんばかりに転生特典のユニークスキルとかいうのが種類に反して笑えないレベルで使えないときた。クソなのはあの神だけで十分だってのに。まあ、そんなことより今は…


「空を飛ぶ!」


『ユニークスキル:ゆびをふる発動

 タイガは指を振って【空を飛ぶ】を選択した

 発動失敗:タイガの前方から砲丸が放たれた』


「えっ?って危ね!」


 ウィンドーに表示された通り凄い速さで砲丸が大河の顔横を通り過ぎて行った。


「おいクソ神!今とんでもない物が俺の顔面目掛けて飛んできたんだがなんなんだよアレは!」


『お前たちの世界にの陸上というスポーツの中で砲丸投げと言われる競技種目で使われとる砲丸という名前の競技用具で…』


「誰が飛んできた物体そのものの説明をしてくれと言った!俺が聞きたいのはそんな事じゃなくてなんであんな危険物が飛んでくるのかって事だよ」


『そんなもん貴様が引き当ててしまったからじゃろう。何故そんな事にもわからんのだ?』


「違うわ!俺が聞きたいのはそもそもなんでスキル使用者に被害が及ぶような要素が入っているのかってことだよ!」


『ランダム要素にはハズレが必要じゃろう?』


「お前のさっき聞いたスキルの説明によるとこのスキルにはほぼハズレしかないはずなんだが?」


『じゃが地味なものばかりでは盛り上がりに欠けてつまらないと思ってのう』


「こいつ…話聞いてないな」


 そもそも異世界を渡っていく上での重要なスキルのハズレで盛り上がりどうこうとかいう思考がおかしんだよ。ビンゴゲームじゃねーんだぞ!


『それでちょっとしたサプライズ的な要素として少し過激なものも入っておる』


(誰かこいつにサプライズの意味を教授してくれ)


「そのちょっとしたサプライズで危うく死ぬとこだったんだが!?」


『それもまた一興じゃ』


「ふざけんな!リアルロシアンルーレット的なもんなんか組み込むんじゃねー!」


「しかしそっちの方が面白いじゃろう?」


「俺は全然微塵も面白くねーよ!」


『じゃがワシは面白いぞ』


 こ、こいつ…つくづく自分がいかにして楽してサボるかって事と自分にとっての面白い展開の事しか考えてねーな⁉︎


「俺に死なれたら困るとか言ってたのは何処行ったんだよ!?あのスピードであんな鉄の塊が直撃されたらどう考えても無事では済まないんだが?頭に当たったら即死と言っても間違いじゃないと思うんだが?」


『そう頭になぞ当たったりせんじゃろう』


「その根拠はどっから来るんだよ」


『それに確かにワシは貴様に死なれたら困るが貴様が苦痛にのたうち回ろうと、ズタボロになろうと死にさえしなけれ別に困らんぞ?』


 …本当に何でこんな奴が担当何だろうか?


「というかさっきからちょくちょく出てきてるこのウィンドーみたいなのは何だ?」


『それはユニークスキル《ゆびをふる》が成功したか失敗したかをわかりやすくするためのワシが手を加えたものじゃ。大いに感謝するがいいぞ』


「いらねえよそんなもん!そんなくだらない事する前に俺を連れてきた方法とか使えないスキル《ゆびをふる》の改善だとか転生場所の確認だとか他に手を加えたり見直さないといけないところなんて山ほどあっただろうが!」


『他人の好意や親切を無下にし、感謝できんとはな。やれやれ今の若いもんはまったく』


「すいませんね、俺は頭が悪いからそちらが言う好意とか親切とは名ばかりのゴミみたいな悪意は全く理解できないんですよ」


 とりあえず今はコイツの事は後回しだ。まずはこの状況をなんとかしないと!


「空を飛ぶ!空を飛ぶ!空を飛ぶ!」


 大河はひたすらゆびをふり続けながら連呼し続けた。しかし起きたのは右手の爪が伸びるだとか、お手玉がコロッケに変わるだとか、左手に金属バットが握られたとか本当にろくなもの出ず、思い通りにいかないのは承知していたがこの状況を好転できる事柄が全然生じてくれないのだった。しかし大河はそれでも諦めずに唱える続けた。


「空を飛ぶ!」


『ユニークスキル:ゆびをふる発動

 タイガは指を振って【空を飛ぶ】を選択した

 発動失敗:タイガのバットが包丁に変更された』


 おい本当にふざけんなよ!これで俺にどうしろってんだよ!あれか、あれですか?落下の恐怖と地面に衝突した後の激痛で苦しいまないようにサクッと自殺するための配慮ですかね?


 いやーお優しいですね。あまりの優しさに涙が出そうだ。けどですねそんな気遣いが出来るんならこの状況を何とかできるものくれよ。包丁じゃこの危機的状況を微塵も解決できないんだよ!


「空気移動《エアウォーク》!無重力!鉄人!ノーダメージ!壊れないトランポリン!パラシュート!スカイグライダー!翼が生える!」


 大河はやけになり思いつく救済方法を片っ端から唱えていくがことごとく不発していったが最後に発動させたスキルが奇跡的に発動した。が…


『ユニークスキル:ゆびをふる発動

 タイガは指を振って【翼が生える】を選択した

 発動成功:タイガの両腕からスズメの翼が生えた』


「おお成功した。確かに腕の真ん中辺りに翼ができたな。雀の翼なだけあって小さくて可愛らしいものだな…じゃなーい!」


 おい、ほんとにふざけんなよ!確かにただ翼が生えろと言った俺にも問題があるのかもしれないがこんな状況でそんなまるで役に立たない小さな翼なんか求めてねえよ。空気読め!


 それともあれですか?さっきの包丁みたいに神視点で面白くなるよう空気読んだから小枝みたいな翼なんですかね?だとしたら二度と空気なんて読むな!この状況でユーモアなんて求めてないんだよこっちは!


 それから再びスキルを使用し続けるがやはりハズレを引き続け、なかには電気ショックが体を流れたり、肩の関節が外れたり、腕にボールペンが刺さったりと罰ゲームにしても過激と思われるものをことごとく引き当ててしまい落下中に戦意喪失しかけていた。それでも一縷の望みにかけて願いを叫んだ。


「何でもいいからとにかく助けてくれ!」


 スキルが発動した瞬間にどこからともなく巨大なハンマーが表れて大河はそれに腹部を強打されて森の方へと吹き飛ばされた。木々の上に落ち枝がクッションとなったお陰で命は助かったものの当たった箇所の肋骨は殆ど砕けており、吹き飛ばされた衝撃含めて大河は瀕死に近かった。


 これはスキルが成功した…のか?今回はウィンドー見てなかったからわからないけど、もし成功してるならもう少しなんとからならなかったんですかね?


 確かに何でもいいと言ったし、流石に無傷で助けてほしいとまでは言わないけどハンマーの代わりに俺が落下する位置に木を生やしてくれるだけのやり方でももうちょっとマシになったんじゃないの?


 大河は異世界について早々に散々な目に合い、身体半分が半死状態で死線を彷徨うのであった。 







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